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新装版 機動戦士ガンダム0079 灼熱の追撃 (角川コミックス・エース) コミック 2025/3/25
山口 宏 (著), 矢立肇・富野由悠季 (原著)
出版社:KADOKAWA (2025/3/25)
発売日:2025/3/25
★★【以下ネタバレ】★★
宇宙世紀0079、一年戦争のアフリカ戦線終結間際。
ジオン軍第18補給基地は、味方の特別攻撃隊“鉄のサソリ”の襲撃を受け全滅した!
生き残ったキミはその身を復讐心で燃やし、モビルスーツに乗り、立ち上がる――。
キミの選択によって物語展開と結末が変化する!
膨大なENDルートを回避し、エンディングを目指そう。
キミは生き延びることができるか!?
概要
アニメ「機動戦士ガンダム」の世界観を使った外伝ゲームブック。作者の山口宏氏はアニメのシナリオライターとして有名な人物で、山口氏がシナリオライターとしてデビューする前の若手時代に書いたゲームブック。過去、1986年に勁文社、1989年にバンダイ出版、からそれぞれ刊行されており、今回三回目の刊行。表紙絵や中のイラストは新規に描き直されている。
あらすじ
宇宙歴0079・12月。ジオン公国は地球連邦との戦争に敗れつつあり、地球に降下した軍隊は次々と宇宙へと撤退を余儀なくされていた。そんな中、アフリカ戦線でジオン軍の精鋭部隊「鉄のサソリ」が味方の補給基地を襲撃・壊滅させ、機密データの入ったコンテナを奪って逃走した。おそらく鉄のサソリは敗戦を見越してジオンを裏切り、機密データを地球連邦へと売り渡すつもりに違いない。奇跡的に生き残ったキミ、すなわち少年整備兵ジョン・クエストは、瀕死の司令官からコンテナを奪還するという命令を受け、モビルスーツに搭乗し鉄のサソリの追跡を開始したが……
ゲームシステムなど
パラグラフ数380。
パラメータは、主人公キャラクターではなく登場するモビルスーツに「熟練ポイント」「機動ポイント」「装甲レベル」「兵器レベル」あり。サイコロ振り(戦闘時)あり、持ち物管理あり。
ゲームブックのシステムは、各パラグラフ毎に2~3個の選択肢から選んで行くだけの簡単なものだが、戦闘ルールは極めて複雑で戦闘シミュレーションゲーム並みのボリュームのかなり難解なルール。
感想
評価は○(まあまあの面白さ)
機動戦士ガンダムの一年戦争を舞台にした外伝ゲームブック。クオリティとしてはまずまずでした。
本作はアニメのシナリオライターとして有名な山口宏氏が、シナリオライターデビューする前の若手時代に執筆した作品という事で、今となっては「あの大物が駆け出し時代はこんな仕事をしていたのか」という意味で貴重な一作と言えるかもしれません。
内容は初代ガンダムの世界を舞台に、ホワイトベースの戦いとは別の場所で別の物語が展開されていた、という外伝物。こういう話は現在(2025年)にはアニメ・ゲーム・漫画などで掃いて捨てるほど存在し特に珍しくもありませんが、オリジナル版が発売されたのは「ガンダムZZ」が放送されていた1986年で、現在の様に一年戦争を舞台にした外伝とかは全く存在もしない時代。
そのころに無名の登場人物と、アフリカ戦線という当時全く扱われていなかった場所、を組み合わせて話を進めているのは、39年前としてはすごく先進的な着想ですよね。おかげで今プレイしても全く古さは有りませんでした。
本作は、ゲームブックの構成としては、実のところ「王道型剣と魔法系ファンタジー冒険物」とほぼ同じ作りでした。
・主人公がたった一人で困難な任務に旅立つ
・目的地までにはいくつかのルートが有り選択させられる
・途中で敵が襲い掛かってきて死ねばゲームオーバー
・途中で色々な人に出会い、アイテムや情報を手に入れる必要がある
・途中で体力回復などの救済が用意されていることも
・もし必要な物を入手しそこなうと、たとえ途中の敵を全て倒していてもハッピーエンドにはならない
・クライマックスは強大なラスボスとの決戦。それまでに強くなっていなければならない
等々。
つまり、ファンタジーの設定が
・主人公の武器「剣 → モビルスーツ(MS)」
・襲ってくる敵「モンスター → MSや戦車」
・救済措置「魔法の泉や薬 → 補給物資や修理部品」
等々、という風に変換されガンダム世界のお話になっています。しかしそれが悪いという事ではなく、ファンタジー物の構成をガンダム世界にうまく換骨奪胎しているという印象でした。
さて、本作ではストーリーを進める中で、主人公が乗り込むモビルスーツと敵との戦闘が何度も発生しますが、戦闘の処理はかなり問題のある代物でした。サイコロを数回ふって解決、というものではなく、ちょっとしたボードウォーシミュレーションゲーム並みの複雑さで、非常に手間がかかり、はっきり言って邪魔でした。
本の冒頭のルール説明ページに「この本はゲームブックに戦闘シミュレーションゲームを合体させました」云々と書いてあるのですが、戦闘はあくまでストーリーを進める際の味付けですから、ここまで凝りまくる必要があったとは思えません。このルールを発売前に誰か止める人はいなかったのでしょうか。そもそもテストプレイしたのか?
と、戦闘はひたすら辛いのですが、ストーリーはまずまず面白かったです。荒野を旅して戦闘を繰り返すだけではなく、途中で美少女が手助けしてくれたり、わざと連邦軍の基地に連れていかれて連邦軍のMSを強奪したり、とそれなりに波乱のある展開。あと黒髪美少女が現れたのでMSから降りて助けに行ったらゲリラの罠だった、というヒドイ展開も印象的でした(笑)
そして何よりクライマックスが衝撃的すぎた。あちこちで味方を殺しまくり悪辣な裏切り者だと思っていた鉄のサソリのボス・クランベリー大佐が、実は愛国者でジオンの勝利のためにあえて裏切り者の汚名を着ていた、という展開にはウォォォっとなりましたね。単純な復讐劇が、クライマックスで一転、戦争の理不尽さを強調する物語へと姿を変えてしまう展開にはしびれました。この結末には心底感服しましたね。
とはいえ、現実の延長戦上にあるガンダムの世界が舞台なので、魔法で何でもありに出来るファンタジー世界物ゲームブックと比べるとストーリーの印象が薄かった感は否めません。またパラグラフ数が380もあるのに3時間程度であっさり完全クリアできてしまい、物足りなさも残りました。
総合的に見て、ストーリーは軽めなのに戦闘ルールは超ヘビー級、と、アンバランスさを抱えていて手放しで称賛できる作品ではありませんでしたが、プレイしている間はそれなりに楽しめたので、まあ悪くない一作ではありました。
