感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第20話(シーズン1 第20話)「ナチ復活を阻止しろ」

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【※以下ネタバレ】
 

第20話 ナチ復活を阻止しろ The Legend

 

あらすじ

IMFチームは南アメリカで極秘に行われるナチの集会に潜入する。その集会の指導者は、なんと悪名高き戦争犯罪人マルチン・ボールマンだった。


ドイツを再び国家社会主義国にという号令のもと、ナチ信奉者たちの集会が南米で極秘裏に行われるという。その集会の指導者は、悪名高き戦争犯罪人マルチン・ボールマン。IMFチームは20年の刑期を終え出所となるレイノール博士にブリッグス(スティーブン・ヒル)、その娘フローランにシナモン(バーバラ・ベイン)が扮装、その集会に潜入し計画を阻止しようとするのだが…。

※DVD版のタイトルは「第四帝国を阻止せよ」。


【今回の指令】
 南米にいる謎の人物が旧ナチスの幹部たちを呼び集めており、その目的はナチスを復活させることにあるらしい。IMFはその企みを未然に防がねばならない。


【作戦参加メンバー】
 ブリッグス、ローラン、シナモン、バーニー。


【作戦】
 ブリッグスとシナモンは、旧ナチの幹部レイノールとその娘に変装して南米に向かうが、彼らを出迎えたのは旧ナチスの大物マルチン・ボールマンだった。しかしボールマンは飛行機事故で寝たきりになっており、回復するまでは秘書のルッドがすべてを取り仕切ることになっていた。ルッドは、ドイツの主要都市に幹部たちを派遣し、現地のファシスト組織と連携してドイツにナチスを再興するという計画を説明する。

 ブリッグスは隙を見てボールマンの部屋に忍び込むが、なんと「ボールマン」は人形で、彼の言葉は全てテープに録音されたものだった。ルッドは居もしないボールマンから命令されているふりをして、実質的に旧ナチの幹部たちを操ろうとしていた。

 IMFはそれを逆手に取り、ローランはボールマンに変装して幹部たちの前に現れる。ルッドはボールマンは偽者だと騒ぐが、ボールマン(ローラン)はルッドは過労で錯乱していると言って追い払ってしまう。ルッドとしては、ボールマンなど存在していない、という真実をばらせないので、従うほか無かった。

 そこにシナモンが現れ、ルッドを信じるふりをして銃を渡す。ルッドはボールマン(ローラン)を撃ち殺してしまい、レイノール(ブリッグス)とシナモンは死体を運び出すと言って屋敷を逃げ出す。ルッドは残った幹部たちに、ボールマンなど最初からいなかったが、総統になりたいので自分の計画に従ってくれと頼むが全く聞き入れられない。最後、屋敷からルッドの悲鳴が聞こえ、IMFメンバーが車で逃げ出す場面で〆。


監督: リチャード・ベネディクト
脚本: マン・ルービン


感想

 評価は◎。

 IMFが暴力を使わず、巧みな計画によってターゲットの目的を阻止する、という、「これこそスパイ大作戦」というノリのエピソードで大満足だった。

 今回はブリッグスがローランの助けを借りて老人に変装して敵地に乗り込む、という異例の展開で、指令を受領するシーン以外は全部老けメイクというのが斬新だった。吹き替えはいつもの通り若山弦蔵氏だったが、当然老人の声も問題なく演じてくれていた。

 前半は、老けメイクのブリッグスが銃を片手にボールマンの部屋に乗り込んでみると、なんと相手は人形でビックリ! といった、割と行き当たりばったり展開だが、後半はローランがボールマンに変装してナチ幹部たちの前に現れる展開が実に面白かった。ルッドにしてみれば、ボールマンは自分が作り出した架空の人物なので居るわけがないのだが、旧ナチ幹部や屋敷の兵士たちの前でそのことを告白する訳にはいかないので、あいまいに「こいつは偽者だ」と言うほかは無い。と、当人にとっては悪夢的だが、視聴者にとっては愉快すぎる展開で、楽しくて楽しくて仕方なかった。

 最後はシナモンがさりげなくルッドに銃(当然弾は空砲だろう)を渡し、ボールマンを撃つように追い込んで、ルッドの信用を失わせ、計画をご破算にする、という話が巧みに進められる。ルッドはもうどうなろうと計画を進めることはできず、その間にIMFは悠々と逃げ去る、という、のちのシリーズで何度も見られたパターンがここに現れている。きっと今回のエピソードの展開が視聴者に大ウケだったので、それがのちのシーズンに活かされたのに違いない。

 ところで今回登場したマルチン・ボールマンという人物は、架空の存在ではなく、実在の人物である。「マルチン・ボルマン」の方が通りが良いが、最終的にヒトラーの個人秘書にまで上り詰めた挙句に色々やった人物で、1945年のベルリン陥落の混乱の中で行方不明となり、その後は今回のエピソードのように「南米に潜んでナチス再興を目論んでいる」とか都市伝説的に語られていた。しかし1970年代になって遺骨が発見され、結局1945年に自殺していた、という事で決着している。今回のエピソードは1967年放送という事で、まだその「都市伝説」が有効だったころの話ということになる。大戦終結から(たったの)22年後という事で、ナチスの残党云々という設定が、今よりはるかにリアリティが有ったのだろう、と思わされる。


参考:今回の指令の入手方法

 ブリックスが点検中の札がかかったエレベーターに入り、階のボタンを3つ押すと操作盤が開きテープレコーダーと資料が現れる。テープを再生して指令を確認すると、テープは最後に「このテープは10秒後に消滅する」といって白煙が立ち昇る。


参考:指令内容

 おはようブリッグス君。写真の老人は、ヘルベルト・レイノール博士といって、ヒトラー国家社会主義政党の熱烈な党員だった人物だ。そのため彼は戦後20年間ベルリン郊外の刑務所に入っていたが、近く刑期を終えて出獄の運びとなった。そして出獄と同時に、博士は匿名のスポンサーから送られた往復切符により、娘といっしょに南米のポルタウベラに飛ぶことになっている。情報によれば、ポルタウベラにはレイノール博士のほか数名の旧ナチの幹部たちが向かっており、その匿名のスポンサーは、彼らを一堂に集めて、再びナチの芽を世界に植えつけようとしているらしい。

 そこでブリッグス君。君の使命は、これらナチの亡霊どもの企みを未然に粉砕することにある。例によって、君または君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、この録音テープはあと10秒で自動的に消滅する。成功を祈る。

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