感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン6」第12話「ファイト・ザ・フューチャー Part2」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン6 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン6の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン6」あらすじ・感想まとめ

第12話 ファイト・ザ・フューチャー Part2 ONE SON

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
EP12 ファイト・ザ・フューチャー Part2
カサンドラを殺せずにいるモルダーの部屋にファウリーたちが踏み込み、カサンドラを隔離する。モルダーはコバルービアスと出会って、2つの研究が進行していたことを聞く。

 お題は「エイリアンの地球侵略、政府の陰謀」。


 第11話「ファイト・ザ・フューチャー Part1」の続き。


 モルダーのアパートに、ダイアナ・ファウリーと伝染病対策チームが押し入り、カサンドラは未知の伝染病に感染しているといって、カサンドラとモルダー・スカリーを隔離施設に連行する。実はそれはジェフリー・スペンダーが、父スモーキング・マンから母カサンドラをかくまうために行った事だった。モルダーは施設で、行方不明だったマリタ・コバルービアスと再会するが、彼女は宇宙ウイルス・ブラックオイルのワクチンの実験台にされていた。

 やがてモルダーとスカリーは解放され、スカリーはローン・ガンメンの三人に頼んで、ダイアナが怪しい証拠を山ほど見つけ出す。さすがにモルダーもダイアナを疑い、彼女の部屋に忍び込むが、その後ジェフリーを探しに来たスモーキング・マンと鉢合わせする。

 ついにスモーキング・マンは秘密組織が行なっている計画についてモルダーに明かす。アメリカ政府は50年前(1947年)ロズウェルでエイリアンと初めて接触した。さらに1973年10月、国務省に勤めていたスモーキング・マンたちは、妻子をエイリアン「コロニスト」に人質として差し出す代わりに、彼らの胎児一体を受け取る事に成功する。計画では、エイリアン胎児から取り出したDNAを人間と組み合わせて「交配種・ハイブリッド」を作成し、ハイブリッドがコロニストの地球侵略を助ける事になっていた。そしてハイブリッド制作が成功するまで地球侵略は保留される取り決めだった。だが秘密組織の真の狙いは、胎児のDNAを元に、コロニストが地球侵略に使う宇宙ウイルス・ブラックオイルのワクチンを作り、彼らの侵略を失敗させる事だった。

 秘密組織の幹部の内、モルダーの父ビルだけは人質を出す事を拒否した。しかし結局拒否しきれなくなり、1973年11月、サマンサは人質としてコロニストに連れ去られたのだった。

 しかしエイリアン反乱軍の攻撃で秘密組織は大ダメージを受けたため、組織の幹部たちはハイブリッド第一号のカサンドラをコロニストに差し出す代わりに、自分と家族だけは地球侵略時にも生き延びる方向に切り替えていた。スモーキング・マンはモルダーに、生き延びたければ、エルリコ空軍基地に来るようにメモを残す。

 スモーキング・マンは隔離施設からカサンドラを連れ出し、空軍基地に運んだ。ジェフリーは父スモーキング・マンがカサンドラを連れ去った事を知る。またクライチェックは、施設に保存されていたエイリアンの胎児が反乱軍に持ち去られた事を知り、敗北を確信する。やがて空軍基地にUFOが現われるが、それはコロニストでは無くエイリアン反乱軍の物だった。スモーキング・マンとダイアナは慌てて逃げ出すが、残りの幹部や家族は反乱軍兵士に捕まりそのまま焼き殺された。

 最後、空軍基地での事件について、モルダー・スカリー・スペンダーはカーシュ副長官に詰問されるが、スペンダーはモルダーとスカリーをX-ファイル課の担当に戻さなければ、同じような惨劇がまた起こるという。スペンダーはそのあとオフィスに戻るが、待ち構えていたスモーキング・マンに射殺される。


監督 ロブ・ボウマン
脚本 クリス・カーター&フランク・スポトニッツ


感想

 評価は◎。


 シーズン2から陰謀を企て続けてきた秘密組織が事実上壊滅するという、ショッキングな結末のエピソード。今まで延々引っ張って来ていたエイリアンの地球侵略話に一つの区切りをつけた回で、数々の謎も解き明かされ満足度が高い話となった。

 今まで手がかりを小出しにするばかりで全体像が皆目見えなかった秘密組織の陰謀/エイリアンの地球侵略計画が、当事者のスモーキング・マンの親切丁寧な解説によって、ようやく数々の謎が解き明かされて、かなりすっきりとした。サマンサの誘拐の真相、秘密組織は何を企んでいたのか、ハイブリッドとは何か、ワクチンの開発とは何か、といった点が明白になり、後付けで設定をドンドン追加していったにしては、それなりに納得出来る真相だった。

 とは言え、つじつまの合わない点もやはりあるわけで、まずはスカリーたちの首に埋め込まれていたマイクロチップとは何だったのか説明が無かった。秘密組織の幹部が漏らしていたところによれば、チップを埋め込んだ人間は外部からコントロール可能で、時が来ればチップ保有者を遠隔操作して呼び集める計画だったらしいのだが、そのあたりは無かった事にされている。

 また今回侵略エイリアン「コロニスト」の姿が、「未知との遭遇」などでおなじみのグレイ型であることが描写されているが、すると以前に登場したバウンティ・ハンターやジェレマイア・スミスといった人間型宇宙人は一体何だったのか?という話になる。彼らの口調からして、どう考えても彼ら緑の血+首の後ろが弱点型宇宙人こそ「入植者(=コロニスト colonist)」だったはずなのだが……、あまつさえエイリアン反乱軍の兵士もやはり人間型なので、ますます話がおかしくなってくる。この辺りは強引に目をつぶるしかないのだろうか。

 隔離施設内で、カサンドラが元夫のスモーキング・マンと対面するシーンは、あのスモーキング・マンからそれなりに元妻に対する愛情らしいものが垣間見えて、興味深いシーンとなった。人の命をなんとも思わない人非人のスモーキング・マンも、実のところは人の子だったわけである。

 終盤の、秘密組織の幹部たちが反乱軍兵士に皆殺しにされるシーンは、自業自得感が炸裂する展開ではあったが、それにしてもショッキングでは有った。この修羅場からスモーキング・マンとダイアナだけが逃げ出すシーンを見てようやく気がついたが、前回「Part1」でスモーキング・マンがダイアナに事件の顛末を語っていたシーンは、この惨劇のあと、何もかも無くしたスモーキング・マンががっくり来ながら、今回の悲惨な事件を回想していた場面だったわけである。

 あれほど憎たらしかったジェフリー・スペンダーも最後には改心してモルダーを認めたわけだが、あまりにもあからさまに死亡フラグを立ててしまったために、父親に撃ち殺される羽目になってしまったのは残念ではあった。

 秘密組織は事実上潰れてしまったわけだが、スモーキング・マン、ダイアナ、クライチェック、マリタ、の四人はまだ生きているし、エイリアンの侵略計画は別に中止されたわけではない。今後この侵略話をどう続けていく気なのか興味津々である。