感想:NHK番組「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」第4回『人が悪魔に変わる時 史上最悪の心理学実験』

The Stanford Prison Experiment: Ein psychologisches Experiment zur Erforschung menschlichen Verhaltens unter den Bedingungen der Gefangenschaft

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 http://www4.nhk.or.jp/P3442/
放送 NHK BSプレミアム(毎月最終木曜日 21:00〜22:00 放送)。

【※以下ネタバレ】


※他の回の内容・感想はこちら→ 「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」内容・感想まとめ

第4回 『Case04 人が悪魔に変わる時 史上最悪の心理学実験』 (2016年7月28日(木)放送)

内容

フランケンシュタインの誘惑「人が悪魔に変わる時 史上最悪の心理学実験」

人類に功も罪ももたらす「科学」。その知られざる姿に迫る新番組。今回は、史上最も“残酷な心理学実験”と称される「スタンフォード監獄実験」に光を当てる。単なる「監獄ごっこ」が平凡な被験者を悪魔に変え、実験を指揮した心理学者自身も狂わされていった。非人道的な実験の倫理を巡る議論とその後、さらにアメリカ心理学会が「テロとの戦争」の中で犯した恐るべきスキャンダル!人間の心を科学する学問・心理学の闇に迫る―。


スタンフォード監獄実験

 1971年8月14日。アメリカ・スタンフォード大学で、学生を被験者に「スタンフォード監獄実験」と呼ばれる心理学の実験が開始された。それは模擬監獄を舞台に、学生が看守と囚人役に別れ、それぞれがどうふるまうかを調べるという物だった。

 実験を指揮したのは心理学者フィリップ・ジンバルドー。心理学では、最初は人間の行動は持って生まれた気質で決まると考えられていた。しかし、やがて人の振る舞いは与えられた状況で決まるという「状況論」が提唱され、ジンバルドーはそれを支持していた。この実験は状況論を確かめるために行なわれた。看守役は囚人役に暴力を振るう事は禁止されていたし、被験者はいつでも自分から実験を止める自由があることが決められていた。実験は二週間行なわれる予定となっていた。

 しかしいざ実験が始まると、たちまち模擬監獄は異常な状態に陥った。看守役は囚人役に暴力ではなく精神的な虐待を加えるようになり、罵倒・威嚇・心理的嫌がらせを繰り返し、それはエスカレートしていった。また囚人役は看守役に従順に従い始めた。ジンバルドーは実験を二週間続ける予定だったが、五日目に恋人の心理学者が実験の異常さに気が付いてジンバルドーを非難、結果的に六日目で実験は中止された。

 ジンバルドーは生徒を人体実験に使ったと大非難を浴びた。この直後アメリカ心理学会は、実験を行なう際には被験者の尊厳と福祉を保つ義務があると定めた。



アブグレイブ刑務所虐待事件

 2004年、イラクアブグレイブ刑務所で、アメリカ軍兵士が捕虜のイラク人に精神的虐待を加えていたことが明らかになった。状況的にはスタンフォード監獄実験と全く同じだった。軍は虐待に関わった兵士を有罪にしたが、軍上層部がスタンフォード監獄実験を知っていて、兵士たちが虐待に走るように仕向けたのではないか、という疑いがもたれている。



●アメリカ心理学会の闇

 2001年、アメリカは対テロ戦争を開始。アメリカ心理学会はCIAの求めに応じて、心理学を使った効率的な尋問のノウハウ「強化尋問技法」を開発した。その後、アメリカ心理学会は尋問に関与していると疑われたが、それを全面否定した。しかし2015年7月、心理学会が軍と繋がっていた事がばれ、幹部は軒並み辞任を余儀なくされ、心理学会は改めて尋問に関与することを禁止した。


感想

 今回は視聴するのにかなり抵抗がありました。実験自体(陰惨な経過も含めて)ムチャクチャ有名で、ドイツではこの実験をテーマにした映画「ES」が作られているくらいですし。


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 実際、実験経過を説明されるくだりは見ていて辛かったです。しかもそのあと続けてアブグレイブ監獄事件まで持ち出してくるし……、まあ、「科学の進歩は良い面ばかりじゃない」という番組テーマにはピッタリのエピソードだったといえましょう……