フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 NHK https://www.nhk.jp/p/ts/11Q1LRN1R3/
放送 NHK BS。
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【※以下ネタバレ】
科学は、誘惑する。
「ウィローブルック 世界を救った非人道的医学研究」(2024年12月2日(月)放送)
内容
フランケンシュタインの誘惑 ウィローブルック 世界を救った非人道的医学研究
[BS] 2024年12月02日 午後10:45 ~ 午後11:30 (45分)
世界で初めてA型肝炎とB型肝炎の区別に成功し肝炎医療を劇的に前進させた医師。だが、その研究は「研究における倫理はいかにあるべきか」という重大な議論を巻き起こす―
1960年代、肝炎の病理がまだ解明されていなかった時代に、世界で初めてA型肝炎とB型肝炎の区別に成功し、肝炎医療を劇的に前進させ医学の歴史にその名を刻んだ医師がいた。アメリカの小児科医ソ―ル・クルーグマン。その成果は、重度の知的障害児を人為的に肝炎ウイルスに感染させ、観察することで得られたものだった。クルーグマンの研究は「医学研究における倫理はいかにあるべきか」という重大な議論を巻き起こしていく―
【語り】吉川晃司
肝炎は重症化すると肝硬変や肝臓がんに進展する病だが、1960年代までは、治療法はおろか、何故発生するのかも良く分かっていなかった。肝炎研究に重要な役割を果たしたのがアメリカの小児科医ソ―ル・クルーグマン Saul Krugman だったが、彼の研究はやがて医療の倫理について大論争を引き起こした。
肝炎は長い間正体不明で「不潔な環境で発生する」「血液を媒介に伝染する」くらいしかわかっていなかった。ニューヨークにあるウィローブルック州立学校(知的障害児の施設)では、障害児の大半が自力でトイレに行けず、不衛生な環境で肝炎が蔓延していた。
クルーグマンはこの施設を舞台に肝炎の研究にとりかかり、新しく入ってくる子供(まだ肝炎に感染していない)をわざと肝炎に感染させたりしたりした。またこの施設に子供を入れたい親に対し、さりげなく実験への同意を取り付け、のちには「実験に同意した場合にだけ子供を引き取る」という事をやった。
クルーグマンの研究は、肝炎が二種類存在する(A型・B型)など目覚ましい成果を上げ、1967年に成果が発表されると高い評価を受けた。
しかし1970年代に入ると、クルーグマンの研究に対し医療倫理の面で批判が出始めた。クルーグマンは「人為的に感染させなくても、どうせ自然に感染したからどっちでも同じ」といった反論をしたが、弱者である障害児を実験台にしたこと、親に施設に入れることと引き換えに実験に同意させたこと、などが猛烈な批判を浴びた。
アメリカ政府も倫理問題に乗り出し、1979年には「ベルモント・リボード」がまとめられ、被験者の人格がなにより尊重されるべきであること、不当な影響をもって実験の同意を迫ってはならないこと、などが謳われた。
クルーグマンは1982年には医学界最高の栄誉ラスカー賞を受賞した。ウィローブルック州立学校はあまりにひどい環境がマスコミに暴露され1987年に閉鎖された。
しかし医療倫理問題は現在でもなくなったわけではない。医療倫理がクルーグマンの時代とは比較にならないほどになったはずの2021年に、イギリスで、新型コロナウイルスの研究のため、治療用のワクチンが無いのに、人為的に人間に感染させるという実験が行われたことが明らかになった。
感想
この番組が大得意な「胸糞系エピソード」がまた出てしまいました、世界はどうしてこんなひどい事件で満ち溢れているのか……
他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ
科学は、人間に夢を見せる一方で、ときに残酷な結果をつきつける。
理想の人間を作ろうとした青年フランケンシュタインが、怪物を生み出してしまったように―
輝かしい科学の歴史の陰には、残酷な実験や非人道的な研究、不正が数多くあった。
そんな闇に埋もれた事件に光を当て、「科学」「歴史」「倫理」に迫るシリーズ。
出演者・キャストほか
オープニングテーマ/ナレーション
吉川 晃司
ミュージシャン