感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第51話(シーズン2 第23話)「不死鳥を葬れ!」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン2(29~53話(全25話))の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ
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第51話 不死鳥を葬れ! The Phoenix (シーズン2・第23話)

 

あらすじ

国外に売り飛ばすため特殊合金のサンプルを盗み出した美術館の館長。サンプルを奪回すべくIMFがとった作戦は館長の暗殺未遂だった。


冷戦下の東側陣営某国。警察長官として絶大な権力を握り民衆に憎まれながら、何度も生命の危機を切り抜けてきた男。しかし今は美術館の館長という閉職に追いやられていた。だが彼は再び権力を取り戻そうと、西側から特殊合金を盗み出し復活のチャンスを狙っていた。そんな彼に特殊合金を取り戻すためIMFがとった作戦とは、館長暗殺事件の騒ぎの中、合金を盗み返すというものだった…。


【今回の指令】
 某東側衛星国で警察長官だったステファン・プロホシュは、先日、党委員長によって美術館の館長という閑職に左遷されてしまった。しかしプロホシュは、かつての地位へ返り咲くため、西側が開発した特殊合金のサンプルを盗み出し、それを東側大国に献上して支持を得ようと企んでいる。IMFはサンプルを奪回し、プロホシュの企みを阻止しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、シナモン、バーニー、ウィリー
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 某東側衛星国


【作戦】
 特殊合金のサンプルは、アブストラクト(金属製のサンゴ的な美術品)に偽装されて美術館に運び込まれる。IMFは、美術館の窓に小型火薬を仕掛けて爆発させ、外からプロホシュを狙撃したように偽装して、犯人としてわざとローランが捕まる。直後、警官役でフェルプス、バーニー、ウィリーが到着するが、フェルプスは数時間後に党委員長が美術品を見るためにやってくるので、共犯がいないか徹底した捜査が必要だと言う。

 そしてフェルプスたちが、ローランの共犯者役のシナモンを捕まえたりしている間に、バーニーとウィリーはアブストラクトから特殊合金サンプルを取り外し、代わりにリモコン爆弾(爆発の見た目は派手だが危険はない)を取り付ける。

 やがて党委員長が到着し、IMFはプロホシュに対し電話をかける必要があるといってその場から引き離す。フェルプスは党委員長がアブストラクトを見ているタイミングで、リモコン爆弾を爆発させ、すぐに現場検証し、リモコン式だから犯人は起爆スイッチを持っているはずだと言う。

 党委員長は一緒にいなかったプロホシュを疑い、身体検査させると、プロホシュのポケットから(フェルプスが忍び込ませておいた)爆弾のスイッチが見つかる。プロホシュは狼狽し、罠だと弁解するものの、党委員長は「君は死ななければ解らないようだな」と言い放ち、兵士に連行させる。その間に、IMFは警官が犯人を連行しているふりをして車で逃走する。


監督: ロバート・トッテン
原案(Story): エドワード・デブラシオ&ジョン・D・F・ブラック
脚本(Teleplay): ジョン・D・F・ブラック


感想

 評価は○。

 IMFが計略でターゲットを破滅させてしまう系の王道展開エピソード。途中の展開はだるいところもあったが、オチの痛快さでまずまず満足できた回だった。


 冒頭、指令の中でいきなり「アブストラクト」という言葉が使われ、何の説明も無いので結構混乱させられる。写真から、巨大な金属のサンゴというかなんというかの美術品だと解るが、釈然としないものがある。調べてみると、アブストラクトとは「抽象芸術」という意味で、それを知るとまあこの言葉もなんとなく解らなくもない。

 ところが、英語ではテープの該当部の台詞は「アブストラクト」ではなく『massive modern sculpture』(大規模な近代彫刻)と言っており、日本語翻訳スタッフが勝手に(?)変えたことが解る。まあ、いちいち目標の金属サンゴを説明するのに、「大規模な近代彫刻」とか抽象的なことをいうわけにもいかないので、円滑にドラマを進めるための苦肉の策と思われ、日本語スタッフの苦労がしのばれる。


 サブタイトルに「不死鳥」という格好良い言葉が使われているので、そのような暗号名のスパイを相手にミッションを展開するのかと思っていたが、視聴してみると、単にプロホシュが今まで何度も暗殺されかけたのに生き延びたことに自信をもっていて「俺は不死鳥だ」とぽろっというくらいで、ちょっとタイトル詐欺的な感じのエピソードであった。もっともこれは日本語サブタイトルが勝手につけたのではなく、英語サブタイトルからして「The Phoenix」なので、原語版の時点でちょっと盛ったサブタイトルだったと言える。


 今回のエピソードはIMFが最終的に目指すところが明示されておらず、視聴者にはフェルプスたちが何を狙って活動しているのか見えてこず、途中はちょっと退屈である。しかし、最後に党委員長暗殺未遂シーンになってようやく、

・バーニーたちがアブストラクトに仕込んでいたのはリモコン式爆弾だった
フェルプスがプロホシュの上着のポケットに忍び込ませたのは爆弾のスイッチだった
・プロホシュに暑がらせて上着を脱がせるため、シナモンは美術館のエアコンの温度を高めに設定した

 という事が芋づる式に理解できて、途端に面白さが一気に伝わってきた。これでこそスパイ大作戦である。


 最後、全く無実のプロホシュが「これは罠だ! 私は何もしていない!」と叫びながら兵士に連行されていくシーンは、あまりのヒドさについ笑いが笑いが込み上げてしまった。IMFのミッションは、時としてえげつないくらいに容赦が無い。しかし、プロホシュは今回の無実の暗殺未遂の罪で死刑確実なわけであるが、劇中の台詞を聞いてみると、どうもプロホシュは警察長官時代に無実の国民相手に大虐殺とかを平気でやらかしていたようなので、まあ因果応報というところだろう。


 ところで、冒頭にIMFメンバーが一堂に会して打ち合わせするシーンで、シナモンが口紅に偽装したピストルを試射するシーンがある。ところが結局この銃はミッションでは使わなかった。いったい何だったのだろうか。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが製材所の作業場所のような場所に入り、置いてあったボストンバッグからオープンリールテープ式レコーダーと大きめの封筒を取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なおこのテープは自動的に消滅する」といい、次の瞬間テープが煙を噴き上げる。(※第38話(シーズン2の第10話)「仮面夫婦の本性」のシーンの使いまわし)


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。ある東側衛星国で、かつて警察長官として権力を欲しいままにしていたその男ステファン・プロホシュは、最近その国の党委員長により警察長官の要職から人民美術館の館長へ左遷されてしまった。西側陣営において発明され、極秘とされている特殊合金のサンプルを秘かに盗み出し、それをこのアブストラクトに隠し、それが明日美術館に到着する。プロホシュは、そのサンプルを東側大国に進呈し、その支持を得て昔の権力を挽回しようという腹である。

 そこで君の使命だが、特殊合金のサンプルを奪回し、プロホシュの意図を粉砕するにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。


シーズン2(29~53話)の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ

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