ゲーム感想「逆転裁判4」

■タイトル等

・タイトル =逆転裁判
・メーカー =CAPCOM
・機種   =ニンテンドーDS
・ジャンル =アドベンチャー
・発売日  =2007年 4月12日
・プレイ時間=25時間30分


■簡単紹介

 「逆転裁判」新シリーズ突入! 法廷に渦巻く偽りを看破せよ! 主人公を一新しつつ持ち味の法廷バトルのキレはそのままの人気推理アドベンチャー第4弾。


■ゲーム豆知識

・2004年1月にゲームボーイアドバンスで発売された「3」以来3年ぶりの新作。


■粗筋

 前作(逆転裁判3)から7年後。若手弁護士「王泥喜法介(おどろき・ほうすけ)」は法廷デビューでとある殺人事件を担当することになるが、その事件の被告人とは・・・

 シナリオは全4話。世界観を前シリーズから引き継ぎつつも、主役陣を一新し新しい息吹を吹き込んでいます。


■登場キャラ

 主要キャラだけピックアップします。ちなみにキャラの年齢・状況等は開始時点のものです。


王泥喜法介(おどろき・ほうすけ)(22才)

 主人公。第一話で法廷デビューを果たす新米弁護士。声がでかい。通称オドロキくん

◆みぬき(15才)

 ある理由で法介と行動を共にする少女。マジシャン。年齢不相応にしっかり者。


■紹介

 推理アドベンチャーゲーム。特に「法廷で絶対的に不利な状況から依頼人の無実を証明し、さらに真犯人を暴き出して大逆転勝利を収める」という法廷物特有のスリリングさ・爽快感を味あわせることに特化した作品です。

 プレイヤーは弁護士となって、毎回毎回殆ど勝ち目のない裁判の依頼を受けます。その後、裁判の前に、関係者に会って物的証拠や証言を集め、事件の状況を確認します(探偵パート)。続いて、本番の「法廷パート」では、証人の証言を綿密にチェックし、手元の手がかりと比較し、矛盾する個所を見つけては「異議有り!」と叫びながらその個所を指摘するのです。

 その矛盾の理由は、証人の思い違い・悪意の嘘・その他様々ですが、とにかく何らかの理由で真実が覆い隠されています。主人公(プレイヤー)は、先も見通しもないままに、とにかくその場しのぎで「異議有り!」を連発しながらも霧を払って真実を少しずつ見つけ出し、最終的に隠されていた事件の全容や真犯人を明らかにするのです。

 前述の通り、法廷パートで、テンポの良い曲と共に『これこれの証拠は矛盾しているから、依頼人に犯行が出来たはずはありません!』『ああっ!?』というノリのやり取りが連発され、事件の様相が二転三転する有様は、たまらない物があります。しかも、その矛盾点はプレイヤー自身が頭を絞って見つけ出したのですから、気持ちよさは格別です。

 かなりデフォルメした設定になっており、「ライバル検事は日本屈指のロックバンドのリーダー」等、ムチャクチャな点も有りますが、そういう荒唐無稽な部分を差し引いても推理物とは根本はしっかりしており、本格推理好きの方でも十分堪能できる作品です。


■ゲーム感想

(1)良いところ

 ゲームシステムは基本的な部分は1〜3作目から変化は有りませんので、操作性は相変わらず良好でした。

 また、主人公を含めてキャラクターを一新してはいますが、ゲームの雰囲気は前と全く同じで、法廷でのクライマックスでの『ノリの良い曲をバックに「異議あり!」を連発し相手を一気に追い込むシーン』など、逆転裁判らしさは全て健在でした。


(2)悪いところ

・パート1 ゲームシステム

 新要素「見抜くコマンド」がいただけません。これは法廷パートで使用するコマンドで、証言の矛盾の指摘の代わりに、グラフィックを拡大表示して「証人がウソをついて緊張しているときのしぐさ(例:目が泳ぐ、等)」を見つけ、このコマンドを使うことで相手を動揺させ、新たな証言を引き出す、という風に使います。

 しかしこれは「論理的な矛盾」探しではなく、単なる「絵の間違い探し」ですから推理物としてどうかと思いますし、また「証人が緊張しているところを指摘」したところでどうなるんだ、という違和感が拭えません(証人が「裁判だから緊張しますよ」と言い逃れたらそれでアウトでは?)。証拠と証言の食い違いを見つけることこそが売りと考える「逆転裁判」には余分な要素だったと感じます。


・パート2 シナリオ/ストーリー

・主人公のキャラ立てが弱い

 サブキャラクターの「助手のみぬき」「牙琉検事」等はなかなか魅力的ですが、主人公の法介が前シリーズの主人公「成歩堂 龍一」の縮小コピーでしかないように思えます。しかも、終盤はある理由からさらに存在感が弱弱しくなってしまい、結局主役としては独り立ちできなかったと言わざるを得ません。


成歩堂龍一の扱い

 前作の主人公である成歩堂龍一は、本シリーズでもサブキャラクターとして登場するのですが・・・、正直前シリーズのファンとしてはこんな形での登場では不満が一杯です。スタッフは会社の上層部に言われて無理やり登場させるしかなかったそうなのですが、それでもこの出し方は・・・、と文句の一つも言いたくなります。また物語における活躍ぶりも何かヘンなところが多く、納得のいかないキャラクターになっています。


・「丁丁発止」感が弱い

 主人公の弁護士と相手検事の猛烈な言葉のバトルが「逆転裁判」シリーズの売りですが、本作のライバルキャラ牙琉検事は、難しい局面では「厳しい敵」というより「初心者の法介を導く先輩」の様に振舞うため、法廷での追い込まれ感が弱く、また勝利の際の感激もちょっと減点、という印象を受けました。


・幕引きの失敗

 最終話の4話は色々な意味で仰天のストーリーで、ある単純そうな事件が予想もつかない物凄い広がりを見せ、さらに1話から仕込まれていた要素がここぞとばかりに伏線として浮上し、結果仕掛けの大きさに驚かされるばかり、なのですが、「物語」としては面白くても「逆転裁判」シリーズ特有の、荒唐無稽さを織り交ぜた胸のすくような一大逆転劇の要素は弱くなってしまい、いささか疑問の残る最終話でした。また、広げた風呂敷を畳むことに失敗しており、「あれだけ大げさに騒いでオチはこれ?!」とガッカリする最後でありました。


(3)あわせてみると

 雰囲気としては十分「逆転裁判」ですし、大逆転を堪能させてくれるシナリオも有りますが、終盤が「逆転裁判」の世界からいささか離れてしまったように感じました。この作品は「その後の逆転裁判」等のタイトルなら良いと思うのですが、新生逆転裁判の立ち上がりとしては問題ありだったのではないでしょうか。


■まとめ

 評価=(10点評価で)7点。

 アドベンチャーゲームとしてのレベルは高く、20時間超の時間を退屈させずに楽しませてくれる好作品です。ただ、1〜3作目のレベルを知っている人からするとちょっと厳しい評価になってしまうでしょう。私としては1作目の身震いするような面白さを知っているだけに、やはり辛口評価にしてしまいした。

 せっかくキャラクターの一新が出来たのですから、下手な大作指向の大仕掛けに向かうのではなく、新主人公たちによる小ぶりなシリーズでも十分楽しめたと思うのですけどね。そういう意味では残念な作品でした。