雑談:ウォーゲーム雑誌「シミュレイター(1982〜1984年版)」感想(3,4,6,9,10,11号)


 超古い雑誌ですが、1982〜1984年に発行されたウォーゲーム雑誌「シミュレイター」を何冊か入手できたので感想など。

 このシミュレイターは同名雑誌が二種類あって、1982〜1984年に発行された版(全14号)と、1985〜1991年に翔企画から発売された版(全31号)が存在します。私は後者は全部持っているのですが、前者はさらに最近まで存在を知らなくて・・・、先日突発的に前者も欲しくなったので苦労して数冊見つけました。ああ、業界黎明期の香りがプンプンしますよ。


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・3号(1983年3月15日発行)


 特集は無し。

 翔企画版のシミュレイターと違って、左側が綴じてあることに驚きました(まあタクテクスと同じだと言われればそれまでですが)。

 最初のページに編集長からの挨拶が載っているのですが、そのフォントが物凄いクラシカルというか、昭和20〜30年代頃の本を思わせる書体で、もうなんともいえない気分に・・・、1983年の雑誌であることを考慮しても全体に「古臭い」感じが漂います。

 「ゲーム・レヴュー」は、当時の大学のゲームサークルのメンバーらしき人たちが行なっているのですが、ある意味自由奔放、悪く言えば2chのスレのノリで言いたい放題。イマイチ乗り切れない。

 海外のニュースで「SPIが昨年倒産した」と書いているところに時代を感じさせます・・・、あと鈴木銀一朗氏が大佐なのは有名ですが、黒田氏も大佐だったんですね。そっちは初耳。


見どころ
・スペース・コブラバンダイ)のリプレイ。馬鹿馬鹿しくてよかった。
・バーバリアン・プリンス(ヘリテージ)の紹介。このゲームの情報って少ないから貴重です。
・クイズ。答えにもう爆笑。

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・4号「特集 北アフリカの嵐」(1983年5月25日発行)


 特集といっても内容は「砂漠のロンメル」(アバロンヒル)のリプレイくらい。

 その他は海外ニュースで「ヴィクトリーゲーム誕生」という話と、「新作」の「戦国大名」の紹介が時代を感じさせます。ゲーム評価「クロス・レヴュー」の言いたい放題ぶりは相変らず。


見どころ
・スペース・コブラバンダイ)のリプレイの続き。相変らずアホみたいな展開でした。


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・6号「特集 マルチプレイヤーズ・ゲーム」(1983年9月30日発行)


 フォントが少し変って「古臭い感」がやや薄れてきました。

 特集は
マキャベリ」(アバロンヒル)
「バラ戦争/キングメーカー」(アバロンヒル)
「サムライ」(アバロンヒル)
戦国大名」(エポック)
第三帝国」(アバロンヒル)

の紹介で、特集の名に相応しい内容でした。


 ツクダホビーのインタビューでは、当時黎明期だったRPGについて聞いています(ちなみにこの当時はまだHJ/GDWの「トラベラー」も未発売)。「RPGってどんなものなのですか?」とか聞いているのが時代を感じさせてくれます。この5年後にTRPGによってウォーゲームが駆逐されるとは、当時のゲーマーは思いもしなかったでありましょう。


 ニュースでは「朝日出版社からアドテクノスという会社が本形式でゲームを出す」というお知らせが・・・


 新企画「新作ゲーム徹底ガイド」では、今までの「クロス・レヴュー」が「単なる中傷じゃないか!」と突っ込まれたらしく、普通のきちんとした形のゲーム紹介になっています。まあ当然だと思いますよ、ええ。関連して、後に伝説と化した(?)「タイガーI論争」が載ってました。おおう、これが噂のアレか。


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・9号「特集 WEST FRONT 西部戦線★戦術研究」(1984年3月25日発行)


 すっかりフォントも奇麗になり、普通の雑誌になりました。

 特集は西部戦線の戦史、戦術についての説明、「装甲擲弾兵」(エポック)分析などで、すっかりキッチリしたウォーゲーム雑誌の形になっています。この頃になると完全にタクテクスよりよっぽどとっつきやすい内容になってます。それでいて新作ゲームの紹介もきっちりやってますしね。


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・10号「特集 無し」(1984年5月25日発行)


 なんと巻頭は読者投稿の「第二次欧州大戦」リプレイで12ページ使っています。大英断ですねぇ。高校生がサークル仲間とプレイした記録だそうです。あと「持ち主のXX君はこのゲームを売る気は無いといっています」という注意書きが笑わせてくれます。まあ当時、このゲームの持ち主は雑誌で「対戦しましょう」と表明すると「売ってくれ、売れ!」とせがまれたり脅されたり、が常だったそうですから。


 インタビューは鈴木&黒田の御大コンビにレックカンパニーについて聞いています。レックて「有限会社」だったのか。たんなるグループというかそんなもんだと思ってました。


 読者欄には、現コマンドマガジン編集長の中黒氏のイラストが載っていたりして時代を感じます。あとまた「タイガーI」がどうこう書いてある・・・


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・11号「特集 激突!!日米機動部隊」(1984年7月25日発行)


 特集は「太平洋艦隊」(ホビージャパン)のリプレイと、「フラットトップ」(アバロンヒル)・「航空母艦」(ツクダ)の比較。まあそこそこ。


 アドテクノスのインタビュー。朝日出版社から独立したタイミングでの記事。アドテクノスが「元々は広告関係の会社だった!!」なんて初めて知りました。「アド」って広告の「AD」だったのか! バンダイの社長に頼まれて無理やりゲームのデザインをやらされたのが業界と関わったきっかけとのこと。この時点ではSGBシリーズの続きを作るとかなんとかの段階で、「ビッグゲームは作る予定はありません」とか書いています・・・、そりゃまあ未来の事は誰にもわかりませんし、後にあの「レッドサン・ブラッククロス」とか作るとは思ってなかっただろうなぁ。


 読者コーナーの殺伐ぶりが凄い。ツクダホビーのデザイナーが「悪いとかつまらないとかいうのは簡単。改良してみろ」と半分読者に喧嘩を売っていると思えば、「同人誌のXXを注文したのに届きません、金返せ!」とか「同人誌のXXを買ったら中身がメチャクチャだった、どういうつもりなんだ」とか「私の家にカミソリ入りの郵便が届きましたが、投稿はやめません。自宅に放火するというがやれるものならやってみろ」とか、もう凄いの。

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 最初は内容がアレで、最近読んだ同人誌にも負けるような感じでしたが、数をこなすにつれてどんどん良くなってきましたね。それにしても約25年前の雑誌か・・・、なかなか手に入らないのも当然か、というか今手に入ったのが奇跡の様な気がしてきました・・・