感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第6話(シーズン1 第6話)「武器弾薬を渡すな」

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放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 

第6話 武器弾薬を渡すな Odds on Evil

 

あらすじ

武器購入を企む小国の大公。用意した金額は150万ドル。ギャンブルで大公を確実に負かし、その金を奪わなければならない。

【今回の指令】
 世界有数のカジノで有名な某王国の支配者プリンス・アイベン・コスタスは、石油で潤っている隣国への戦争を計画中である。そのため、近々武器商人から150万ドル分の武器弾薬を購入することになっている。IMFはその武器弾薬の購入を阻止し、また財源を断たなければならない。


【作戦】
 IMFメンバーはカジノがあるホテルに宿泊。特にシナモンとアンドレ(ゲストメンバー)は、莫大な遺産を相続した妻と、妻に頭の上がらない情けない夫、を演じてコスタスに接近する。アンドレは、IMFが開発したルーレットの目を予測する装置を駆使してルーレットで勝ちまくり約20万ドルを手にする。

 アンドレは続いてバカラに挑戦するが、同じテーブルに居たローランに完敗し無一文になって引き下がる。それを見たコスタスはローラン(手持ち25万ドル)に勝負を挑む。カジノのカードは裏に特殊な数字がつけてあり、特製のコンタクトレンズをはめていれば数字を読むことが出来るが、実はローランも同じものを装着していた。コスタスは二連敗し100万ドル負けてしまったため、頭に血が上って武器購入代金の150万ドルを持ってこさせ、最後の勝負に出る。最後の勝負はコスタスの勝ちのはずだったが、ローランがカードをすりかえたためコスタスは負けてしまう。しかもローランのイカサマを指摘すれば、自分たちもカードに細工していたことがばれるので、何もいう事が出来ない。コスタスは部下に命じて力づくで金を取り返そうとするが、ローランたちは見張りを倒して逃げ去っていた。

 最後、IMFメンバーが150万ドルと共に国境を強引に突破して〆。


監督: チャールズ・R・ロンドウ
脚本:ウィリアム・リード・ウッドフィールド&アラン・バルター

感想

 評価は◎。

 カジノの勝負で相手の大金を奪い取る、という筋書きは「007 カジノ・ロワイヤル」を多少連想させるが、こちらはハイテク機器やイカサマカードを使って巧みに奪い取ってしまうところが大きく違う。元々スパイ大作戦は、暴力では無く相手を騙してミッションを成功させるという詐欺師モノ「コンゲーム」の雰囲気が強いが、「ギャンブルで相手から大金を巻き上げる」という今回のエピソードは特にその印象が強かった。

 驚くべきことに、今回リーダーのブリッグスは「指令を聞く」「メンバーを集める」を行なっただけで、以後の実際の作戦には参加しないままに終わる。つまり現場指揮官では無く、プロジェクトマネージャー的な仕事しかしないままで終わってしまい、出番は殆ど無かった。IMFは全員参加がモットー(?)だと思っていたので、これには意表をつかれてしまった。

 代わりに活躍するのが、ゲストメンバーのアンドレ(ニコ・ミナルドス)で、シナモンの情けない夫役を見事に演じる。まあ、IMFは固定されたチームでは無く、毎回その任務に適したスペシャリストを集めているはずなので、「ゲスト」という言い方もおかしいかもしれない。

 今回活躍するのがIMFの科学力を結集して作った(かもしれない)ルーレットの出目予測装置である。特製ベストに縫いこんだコンピューター(40Kg)、ルーレットの回転や玉の軌道を検知するセンサー、結果を表示する腕時計型端末、からなる。シナモンがセンサーの入ったハンドバッグをルーレットの側に置くと、そのデータをウイリーが運んでいるコンピューターに送って出目を予測し、その結果をアンドレの腕時計の「日付表示欄」に二桁の数字として示す、という訳である。すると、あら不思議、毎回必ず予測結果が的中してしまうのだ。

 こんな凄いことは2016年のコンピューターにも不可能だと思うが、さらにこれが1966年の話だと思うと余計に感慨深い。当時スマホも、ノートパソコンも、それどころかパソコンという物も無く、コンピューターといえば最小でも冷蔵庫くらいのサイズだった時代である。40kgとはいえ、ベストに縫いこんで持ち運べるコンピューターとはもう夢の機械に見えたことと思う。

 今回のミッションのクライマックスを飾るのがカードゲームのバカラで、ルールは有名なブラックジャックになんとなく似ていて、カードを引いて合計数が9に近いほうが勝ち、である(絵札は0点。合計数が10を超えると、10の位はカウントしない)。最後の勝負の際に本当なら負けていたはずのローランが、一服するふりをしてカードをすり変えるのが、彼の奇術師スキルの見せ所だった。そしてコスタスはローランがすりかえたことを解っているものの、それを指摘すれば「カードの裏に印をつけていた」事もばらさないといけないので、絶対に口に出来ない。この辺りの展開が実に面白かった。

 今回ブリッグスが指令を受け取る手段が実に奇妙なものだった。物凄くクラシックな外見の覗き穴のついている機械で、これにヘッドホンを差し込み、続いて覗き穴を眺めつつ右手でクランクを回すと、映像と音声が再生される、というものである。ブリッグスが懐かしいといっていたので、おそらく1940~50年代の機械ではないかと思われる。「トーキーせき」という様に聞こえたが、正確なところはなんというのだろうか。実に気になる。それにしても最後に「あと5秒でこの伝達素材は変質する」と言って、いきなりフィルムが燃え出すのは危ないと思う。


参考:今回の指令の入手方法

 ブリックスがピンボールなどのあるゲームセンターに出かけ、店番の親父に「トーキーせき?のこれこれの映画はあるか?」と尋ねると、親父がカーテンの向こうの機械に案内する。ブリッグスがそれを覗き込みながらクランクを回すと、古い映画の様に指令が再生される。最後は「伝送素材」(フィルムのことらしい)がいきなり燃え上がって消滅する。

参考:指令内容

 こんばんは、ブリッグス君。これは、プリンス・アイベン・コスタス。世界的に有名な賭博場を経営し、そこから財源を得ている、ささやかな王国の絶対支配者だ。コスタスは現在、石油で潤っている隣国に戦いを挑もうとしている。そして、そのため150万ドルで、このボーグマンという男から武器弾薬を購入しようとしており、その船はすでに彼の国に向かっている。

 ブリッグス君、君の使命は、この武器弾薬の購入をくい止め、かつまた、そのための財源を断つことにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。あと5秒でこの伝達素材は変質する。


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