感想:視聴者参加型推理ドラマ「綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状 安楽椅子探偵登場」(1999年)

綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状(1) 安楽椅子探偵登場 [DVD]

【※以下ネタバレ】

人気ミステリー作家の綾辻行人有栖川有栖の合作で贈る、初の“RPG推理ドラマ”が登場! 小さなテレビ製作会社の社長が殺された。犯人は……?

 朝日放送(ABC)で放送された、視聴者参加型推理ドラマの第一弾。

 まず約90分の「問題編」を放送し、視聴者に犯人当てをしてもらい、その一週間後に約60分の「解答編」を放送して答えを発表する、という形で放送されたドラマ。推理作家の綾辻行人有栖川有栖が原案を担当している。


あらすじ

『出題編』(1999年10月1日)

 テレビ番組制作会社の社長・小郡(おごうり)剛志が刺殺死体で見つかった。小郡の会社は不祥事でテレビ局に出入り禁止となり、それ以後小郡は有名人のスキャンダルを盗撮し、恐喝で金を得ていたらしい。

 部屋はメチャメチャに荒らされていたが、金庫の中には3本のビデオテープが残っていた。そのテープには、評論家の羽島進次郎、女子アナの高畠はるな、タレントのフレディ・ジョンソンの三人が映っており、その誰かが恐喝された恨みで殺した可能性があった。また、小郡に借金を立て替えてもらった愛人の白石くりこ、あるいは小郡の部下・那須輝弘が犯人かもしれない。さらに捜査を担当していた捜査一課課長・大宮も以前に小郡に脅されていたという。全員アリバイは無いが、直接的に事件に繋がる証拠も出てこなかった。

 刑事の水沢は、捜査が行き詰ったため、学生時代の友人で世界的推理作家であるカレン安城に知恵を借りようとする。カレンはかつてニューヨークの自宅にいながら、イギリスで起きた事件を解決した事のある、リアル安楽椅子探偵でもあった。しかしカレンは捜査資料を見た限りでは、データが不足しており犯人を特定できないという。

 やがて那須の部屋から凶器のナイフが発見された。那須は無実を訴えるが信じてもらえず、追い詰められた那須は「困ったときに一度だけ使える」という笛を吹き鳴らす。




『解決編』(1999年10月1日)

 笛を吹いた途端、謎を解くためだけに存在するという究極存在「安楽椅子探偵」が現われ、事件の関係者を全員特殊な空間に呼び集めて事件の説明を始める。


●推理1

 「実は金庫の中に4本目の恐喝テープがあったが犯人がそれを持ち去ったのでは?」というのはありえない。何故なら、金庫には隙間がないため、4本目が入っていたはずがない。つまりもう一人別に恐喝されていた人がいて、その人が犯人、という推理は成立しない。

大宮警部補は犯人ではない。



●推理2

 23:10にビデオのありかを示すFAXが届いた際に既に小郡は死んでいた。何故なら、もし小郡が生きていたなら、犯人はFAXを小郡に見せ、金庫を開けさせたはずだからである。という事はこの時点で店にいた白石くりこにはアリバイが有る。

白石くりこは犯人ではない。



●推理3

 恐喝テープが残っていたことから、犯人は金庫を開けられなかったと解る。つまり犯人はFAXの文面を読んだのに鍵を見つけられなかった。それは犯人が日本語を読めず、文面の中にあった僅かな英文字「FAX」「KEY」「V」という字しか理解できなかったためである。それを裏付ける証拠として、部屋の中でVで始まるもの(ビデオテープ、名刺、女神像、野菜の置物、ベスト、バイオリンの置物、など)が破壊されていた。

犯人は日本語を理解できない外人のフレディ……、と思わせて実は違う。フレディは犯行の数時間前にはアメリカのロスアンジェルスにいた。店内カレンダーとフレディの腕時計は、画面に表示されている時間と17時間ずれていた。画面に表示されているのは「日本の時間」であり、そのズレから考えてフレディは当時ロスアンジェルスにいたと解る。そのフレディが数時間後に殺人を犯すことは出来ない。

フレディは犯人ではない。また日本語が読める、那須輝弘、羽島進次郎、高畠はるな、も犯人ではない。

「問題編」に登場した人物で日本語が読めない人物がまだいる。推理作家のカレン安城である。カレン安城こそが真犯人。


 ビデオテープの映像を良く見ると、フレディのテープの背景で、カレンが深夜に通りの店のショーウィンドウに潜んでいる場面が映っている。このビデオが撮影された日、その店で殺人事件が発生していた。カレンはこの事件に関わっていると考えても間違いではないだろう。小郡はこのテープでカレンを脅迫した。カレンの登場したシーンで10/1 午後四時に映っているカフェはいかにもニューヨークっぽいが、表示されている時間をニューヨークに当てはめると深夜2時になってしまう。つまり映っているのはニューヨークでは無く日本だと解る。最後に那須の部屋に凶器が持ち込まれたのも、捜査資料で那須の住所を知りえたカレンなら可能。


結論
 犯人はカレン安城


 最後。安楽椅子探偵は消え、水沢が全ての事件を解決したことになっていた。唯一安楽椅子探偵の事を覚えていた那須は、子供に笛を渡して立ち去る。おしまい。


感想

 伝説の番組「安楽椅子探偵」シリーズの第一作です。


 過去にテレビ放送で2作品ほど見たことが有るのですが、不定期放送で予告なくいきなり深夜に放送される上、当時はネットで情報を手に入れるような時代でもなかったので、殆ど視聴できず悔しい思いをしていたのですが、ようやく借りが返せた(?)という感じです。


 1作目からいきなり謎の密度が物凄い。安楽椅子探偵に親切にガイドしてもらいつつ進めば、たしかに納得出来るのですが、何もない状態からこれを推理しろと言われたら絶対無理ですよね。しかしDVDのボーナス映像を見ると、当時の「KADOKAWAミステリ」の編集長の郡司聡氏(2016年時点ではKADOKAWA文芸・ノンフィクション局局長)がほぼ完璧に推理して犯人を言い当てているのでビックリしました。頭の良い人って本当にいるものなんですね。


 とにかく中身が濃くて大満足でした。

※「安楽椅子探偵」シリーズの他作品のあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ

perry-r.hatenablog.com

●放送日
出題編 1999年10月1日 (90分)
解決編 1999年10月8日 (66分)


●スタッフ
原作 綾辻行人 有栖川有栖
脚本 戸田山雅司


●キャスト
水沢克也 西川浩幸
大宮泰昭 俵木藤太
三条誠 稲葉暢貴
小郡剛志 茅野イサム
那須輝弘 山中崇史
羽島進次郎 宇納佑
高畠はるな 岩橋道子
フレディ・ジョンソン POP
白石くりこ 三鴨絵里子
カレン安城 長野里美

安楽椅子探偵 草野徹