【イベントレポート】美内すずえ、「ガラスの仮面」にケータイが登場した理由や好きな喫茶店の条件語る - コミックナタリー
2018年12月8日 9:30
https://natalie.mu/comic/news/311331
完結していないのに、既に誰もが「演劇漫画の最高峰」と認める、と思われる「ガラスの仮面」。こちら、30年以上前から読み続けている熱心なファンですが、いつの間にか連載が花ゆめ本誌から消え去り、移籍した別冊花ゆめは今年休刊(まあそれ以前にもうここ数年連載もしてなかったけど)、とファンとしては「この先どうなるのか?」とヤキモキ状態。
そんな中、最近何をしているのかと気が気じゃなかった美内すずえ先生がトークショーに参加されたとのこと。内容は以下のようなものだったようです。
●挨拶
「美内すずえトークショー」が、去る12月7日に東京・吉祥寺シアターにて開催された。
美内は「『ガラスの仮面』の連載を始めて42年。ところどころ休ませていただいているので実質的にはそれほどではないんですけど、長い年月でいろんな方がそれぞれの読み方をしてくださっている。『早く続きが読みたい』というお声が多くて、作者冥利につきるというかありがたいことだと思っています」と挨拶した。
●ファンは怒っている
しかし連載が長期になっていることで、美内にはファンからさまざまなメッセージが届くという。「(翻訳版が刊行されている)イタリアの70代の方から『早くマヤと真澄を幸せにしてくれ』『私が生きてるうちに終わらせてくれ』というメールが来ていたんですが、この頃届かなくてドキドキしていて……。
日本人のファンからも『私は怒ってる。もっと早く描け』とも。というのも、その方の叔母が『ガラかめ』の大ファンだそうなんですが、危篤だと。『こういうファンがいることも知ってください』とメールがありました。こちらもプロなので文面を読むとそこに真実がこもってるかはわかります。遅れているお詫びに色紙を描いてプレゼントしました。亡くなる寸前に間に合ったそうです。
40数年の間に、亡くなられた読者の方がいっぱいいることは知っています。本当に申し訳ないと思っていて」と複雑な心境を明かした。
●携帯電話登場
来場者からの質問コーナーでは、「ガラスの仮面」42巻で突如登場した携帯電話の話題に。「ケータイが登場したとき、批判は予想していました。最初は黒電話で、途中から白っぽい電話になり。外でかける電話も最初は10円玉を入れて、テレカを入れて、そのうちケータイが流行り始めて、困ったなと。テレカを使ったりしているのを、若い子が理解できなくなる時代が来る。だからどうしてもケータイを出さなきゃいかん、と。いろんなご意見をもらったんですが、ただ『この批判は一時的なもの。あと10年も経ったらケータイも古くなる』と思って、開き直って出しました」
●話が先に進まない訳
ファンが待ち望んでいる、「ガラスの仮面」の続きについても語った。
「どう表現したらいいのかと思ってる部分があって。単行本を読んでくれた方はご存知だと思いますが、作中で紅天女が災害について語るところがあるんです。日照りが続いたり、悪いことが起こったりするのは、人間の悪しき想念が引き出していると。これ以上人間をのさばらせたくない、山から火を噴き、大地を揺らし、大津波を持って人を滅ぼす、という意味のセリフを書いたんです。その後に阪神・淡路大震災が起きてびっくりして、それから地震が何度もあり、マンガで描いた紅天女のセリフが現実化しているような印象を受けたんです。
東日本大震災があったときは、この作品をこのまま出していいんだろうかと思って。実は、これからもっと激しいセリフが出てくる。マンガにはまだ描いてないんですが、セリフはできてるんです。それが描けなくてですね……」
「私の親戚や知人も被災してます。(紅天女のセリフで)震災で家族を失った人たちが傷つけるんじゃないかと、このまま描いていいのかと悩んで。セリフを直しちゃおうかと思ったときもありました。ただつらいですが書かなければならないセリフなので、それをマンガ上でどう表現するのか、ずいぶん思案しています」