2019年12月11日 11:32
電ファミニコゲーマー
『D.C.~ダ・カーポ~』制作者が語る“あのころ”──いいと思うものを認めてもらうために誰もが一所懸命で、何もないところから数年でアニメになる時代だった
https://news.denfaminicogamer.jp/interview/191211a
電ファミニコゲーマーでは、去年(2019年)夏頃からエロゲ関係者のインタビューを載せ始めたのですが、これが読者の食いつきが良いのか、どんどんどんどん続編企画が出てきます。
そして12月には、あの悪名高き「サーカス商法」で、ユーザーから金を搾り取りまくっているサーカスの偉い人が登場しました。
以下引用多めでお送りします。
当時から独特のアプローチで『D.C.~ダ・カーポ~』シリーズを、当時の美少女コンテンツを代表する1本へと成長させていったtororo団長に、そのアプローチ方法やプロデュース論などを語ってもらった。
●ダ・カーポ対ラブライブ
インディーズからメジャーになっていく過程でのポジティブな盛り上がりが生み出した熱のようなもの。それをリアルイベントを通じて作り上げていったのがサーカスという組織であり、その原動力になったのが『D.C.~ダ・カーポ~』だったと思います。
その後『ラブライブ』が登場し、ファンをごっそりと持っていかれるわけですが(笑)。
最後のコメントワロタ。こういうところにもエロゲの衰退が出ているんだなぁ。
●エロゲを売るための法則
サーカスを立ち上げたあとのあるとき、当時の美少女ゲームの「売れる法則」のようなものに気づいたんです。
──それは?
tororo:
たとえばリーフさんなら、『雫』、『痕』のあとに『To Heart』【※1】が大ヒットしました。KeyさんはTactics時代の『MOON』から『ONE』と続いた後に『Kanon』【※2】が大ヒットした。ちょっと後ですが、ねこねこソフトさんは『銀色』を出した後の『みずいろ』【※3】が大ヒット。
つまり、いい原画家を起用して「命」をテーマにした尖った作品の後に学園ものを出すと、ユーザーさんに届く。
これに気付いたのがサーカス3本目の『Infantaria』【※】のときで、そこで命をテーマにした『水夏』【※】に続け、学園ものの『D.C.~ダ・カーポ~』を出すことにしたんです。
ああ、意識的に真似してたのか。まあこの流れは「法則」というより単なる偶然というか、単に「ジンクス」みたいなものに過ぎないと思いますけど。「朝、出勤時に左足から靴を履くと、その日は契約が取れる」とかそういうレベルの。
●サーカス商法爆誕
平成10年代半ばは、周辺の大小さまざまなものを含めれば、1年間に700本や800本……もっとかな【※】、それだけの美少女ゲームが出ていたんです。その中で埋もれないようにするにはどうすればいいか。そのひとつとして、「店頭から商品を切らさない方法を考えよう」としたんですね。
初期ロットが店頭で品切れしたら二次ロット、三次ロットと間髪入れずに出していく。しかもパッケージデザインを変え、新たに特典を付けることで、店舗さんに「これならまだ売れる」と思ってもらうようにする。
その結果、「曲芸商法」なんて言われたりもしたんですけどね(笑)。でも出し続ければ、ショップはポスターなどを貼り続けてくれるんです。そして商品があれば、お客さんは「買うか買わないか」を決めることができる。もし商品が切れていたら、お客さんは選択すらできませんから。
出た!! 悪のサーカス商法爆誕秘話! なんか、いかにもユーザーのためにバリーエーションを(ほんの少しだけ)変えて商品を出し続けました、とか言っているけど……、どう考えても同じ人間から二度三度とお金を搾り取るための策略でしょ。
こんな風に。
↓
──話をPCゲームに戻しますと、『D.C.~ダ・カーポ~』を盛り上げるアプローチとして、積極的なファンディスク展開が始まります。本編発売からわずか半年後に、第1弾として『D.C. White Season ~ダ・カーポ ホワイトシーズン~』が発売されました。
その後も平成16(2004)年に『D.C. Summer Vacation ~ダ・カーポ サマーバケーション~』、平成17(2005)年には『D.C. Four Seasons ~ダ・カーポ~ フォーシーズンズ』と、ファンディスクをリリースされています。当時、美少女ゲームのファンディスクはほかにもありましたが、ここまで本数を出すような積極的な展開は珍しかったと思います。これにはどういう理由があったのでしょう?
tororo:
ゲームを作るとき、いちばん時間がかかるのが「世界を創ること」なんです。「せっかく創った世界だから、また利用したいな」という思いがまずありました。それと、当時とても印象に残っていたのが『とらいあんぐるハート』(JANIS)で、この作品はファンディスクがとても売れていました。しかも後にはファンディスクから『魔法少女リリカルなのは』【※】という大ヒットコンテンツまで生み出してしまうわけです。この展開を見て、「アナザーストーリー集は出していかなくては」と自然に思っていたのはあります。
ほうら、一つネタで何度でも稼ごうとしたことがうっかり漏れてしまってる。
●ダ・カーポ対シスター・プリンセス
このとき僕は、「美少女アニメには、いわゆる美少女ゲーム系のファンと、学園もの作品のファン、そして少女漫画ファンが集まってくるんだな」とその構造を理解したんです。男性向けや女性向けという区分けではない。
『D.C.~ダ・カーポ~』は、その3つのファン層を集めることができたんです。当時ブロッコリーの代表だった木谷高明さんに、「『シスター・プリンセス』【※】のファンが『D.C.~ダ・カーポ~』に民族大移動している」って言われたのを、いまだに覚えていますね。
シスプリからダ・カーポへ……? よくわからん移動だな。まあ女の子がいっぱいというあたりは共通してますが、それだけでいいんか?
●エロゲ発のテレビアニメ
──そうしてアニメが成功したことで、『D.C.~ダ・カーポ~』は大きくブレイクし、業界にも大きな影響を及ぼすことになります。若いクリエイターや声優などに話を聞くと、アニメ『D.C.~ダ・カーポ~』で美少女ものに目覚めたという人もとても多いんですよ。
tororo:
『同級生』【※】や『To Heart』もアニメ化されたとき、当時は「すごいな」と感じていたんですが、その一方で「メジャーのアニメレーベルではないんだな」と思っていたのも事実です。
そういう作品がアニメ化された時期を経てこそですが、『D.C.~ダ・カーポ~』など平成10年代半ばの作品が、メジャー会社のアニメの原作になるという扉を開いていったと思っています。
まあエロゲの「テレビ」アニメ化の先駆者だったのは認めるのにやぶさかではございません(同級生シリーズとかはピンクパイナップルのエロOVA枠だったしねぇ)
●学園物乱立の元凶……?
──とはいえ、『D.C.~ダ・カーポ~』や『D.C.II~ダ・カーポII~』は、大きなヒットとなった作品であることに間違いありません。この2作の発売が、美少女ゲーム業界、一般アニメやゲーム業界に与えた影響は少なくないと思います。
tororo:
「埼玉の僻地で、まったくお金がないところから数年でアニメになるようなものが出来る!」 そんな夢を後輩のクリエイターに示せたのかなと思います。そこからはインターネットの時代になり、よりその流れは加速していることでしょう。ただ、ネガティブな影響を与えてしまったとも感じています。というのも、『D.C.~ダ・カーポ~』のフォーマットはわりと真似やすいものだったので、その後の美少女ゲーム市場で「学園ものならなんでもいける!」というような風潮を作ってしまった印象があるんですよね。
それを感じたときに、「これはよくないな」と。「この流れが強くなりすぎると、結果的に自分たちの首を絞めるんじゃないかな」と感じていました。
まあ、2020年になっても未だ作られている学園物エロゲの走りだったのでしょう。あまりに成功しすぎて、誰もかれも真似するだけで、別の鉱脈を掘ろうともしなくなった……、業界の衰退はそういうところにも理由がありそうですな。