【歴史】感想:歴史番組「ダークサイドミステリー」シーズン4(2022年版)「「フランケンシュタイン」誕生 “19歳の母”が生んだ無限の魅力」(2022年4月21日(木)放送)

Frankenstein (Penguin Classics)

ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

本当の謎は、人間の闇


シーズン4スタートしました!
今年度はなんと、地上波・Eテレで毎週(火)夜10:45放送の、名作の数々のコンパクト29分版と同時期放送です!
背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。世間を揺るがした未解決の事件、常識を越えた自然の脅威、いにしえの不思議な伝説、怪しい歴史の記録、作家の驚異の創造力…。
人智を超えた謎に迫る「幻解!超常ファイル」のスピンオフ!
栗山千明中田譲治志方あきこのダークなトライアングルに加え、伊藤海彦アナウンサーも参加!

 

フランケンシュタイン」誕生 “19歳の母”が生んだ無限の魅力 (2022年4月21日(木)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー▽「フランケンシュタイン」誕生 “19歳の母”と無限魅力
[BSプレミアム] 2022年04月21日 午後9:00 ~ 午後10:00 (60分)


誕生から200年近く大人気の小説「フランケンシュタイン」。原作者19歳のメアリーはなぜ恐怖と悲しみと感動の名作を描けたのか?あなたの知らない闇のモンスター秘話。


親子の愛と憎しみ、壮大な追跡サスペンス、命の輝きと死の涙、そして感動のラスト。ホラーの古典が最新研究で再評価、小説「フランケンシュタイン」がいま熱い!実は人造人間(モンスター)は美形の超人?モンスター誕生の秘密は、19歳・女性原作者の波乱の恋にあり?母と子死別の悲劇。孤独な怪物に彼女が!?育児放棄からAI技術まで現代の問題も?意外な魅力が詰まった原作小説を深読みしながら、感動ラストまで一気に紹介!


【出演】栗山千明,【ゲスト】風間賢二,木村晶子,【語り】中田譲治,【司会】伊藤海彦

 
 今回のテーマは「小説「フランケンシュタイン」」。


フランケンシュタインは科学者の名前

 「フランケンシュタイン」と聞くと、我々は大男で不気味な顔をして首にボルトを埋め込まれたモンスターを連想する。しかし、「フランケンシュタイン」とはこのモンスターを創造した科学者の名前で、モンスターの方の名前は「フランケンシュタインの(作った)怪物」である。また原作版の「怪物」は優れた肉体と高い知性を併せ持つロン毛の超人的存在で、我々が漠然と連想するキャラクターとは全く違う。



●メアリー・シェリーの物語1

 原作小説「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」が出版されたのは1818年。作者はメアリー・シェリーで、なんと当時19歳だった。

 メアリーは1797年イギリス・ロンドン生まれ。父親は小説家・政治評論家ウィリアム・ゴドウィン、母親はフェミニズムの先駆者メアリー・ウルストンクラフト。両親から優れた知性を受け継いだメアリーは高い教育を受け、フランス語・古典ラテン語ギリシャ語・イタリア語を使い、原語で小説を読むほど。またメアリーは当時流行のゴシック小説にハマっていた。

 メアリーは、当時死体に電気を流すと肉体が動いたという実験の話にヒントを得て「フランケンシュタイン」を書き上げたという。



●原作小説の内容1

 若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、ドイツ・インゴルシュタットで生命を創造する研究を行っていた。そして死体を繋ぎ合わせた体に操作を施し、遂に新しい命を生み出すことに成功する。ところが、フランケンシュタインは、自分が作ったものが動き出したのを見て、あまりの醜さに嫌悪感を覚え、そのまま逃げ出してしまう。

 残された「怪物」は、フランケンシュタインの日記を読み、自らの素性を知る。しかし醜い姿故に、人間からは全く受け入れられず、ひたすらに迫害を受ける。怪物は様々な文学作品を読み、人間の美しさを知るが、自分がその人間たちに全く受け入れられない現実に、人間に対する怒りを募らせる。



●メアリー・シェリーの物語2

 メアリーは、1814年、16歳の時、詩人パーシー・ビッシュ・シェリーと恋に落ちるが、パーシーは妻子持ちで、メアリーはいきなり不倫関係に陥ってしまう。メアリーとパーシーは駆け落ちし、1815年に第一子が生まれるが、生後11日目に原因不明のまま死んでしまう。メアリーの母メアリー・ウルストンクラフトも出産で亡くなっており、メアリーにとって出産は死と密接につながる事だった。

 10ヶ月後、メアリーは第二子を出産し、1816年6月に「フランケンシュタイン」の執筆を開始した。



●原作小説の内容2

 怪物はヴィクターのいるスイス・ジュネーブに向かい、そこで偶然ヴィクターの幼い弟に出合って殺してしまう。さらにヴィクターに会い、自分を差別しない伴侶となる女の人造人間を作ってくれたら、そのまま人間社会から姿を消す、と約束する。

 ヴィクターは人造人間作りに取り掛かるものの、やがて怪物の子供が生まれて怪物一族になってしまっては困る、と思い直し、女の人造人間を破壊する。それを知った「怪物」は、怒り狂いヴィクターの婚約者を殺害すると逃走した。



●物語の解釈

 イギリスで上演されたフランケンシュタインの劇では、二人の役者がヴィクター役と怪物役を交互に入れ替わりながら演じた。ヴィクターと怪物は表裏一体の存在、という解釈。



●原作小説の内容3

 復讐に燃えるヴィクターは、怪物を追跡して、地中海、黒海中央アジア、ロシア、とひたすらに旅を続けた。衰弱して倒れそうになると、何者かが食料を届けたり怪物の手掛かりを残したりする。それは怪物自身の仕業で、自分を追ってくるように挑発しているのだった。

 やがて両者は北極に向かい、ヴィクターは北極探検船と遭遇するが、船内で息絶えた。それを知った怪物は自分も北の果てで薪で肉体を燃やし尽くして死ぬと言い残して姿を消した。<完>



●メアリー・シェリーの物語3

 1818年に原作小説は発売され、批評家から大絶賛されるが、「女性の作者と解っては売れ行きに影響が出る」として作者名無しで発売された。5年後、1823年発売の第二版でようやく作者名が明らかにされ、1831年には第三版が発売され、メアリーの書いた序文が追加された。

 1851年メアリー死去。



●「フランケンシュタイン」の解釈

 小説「フランケンシュタイン」は時代により様々な解釈が行われてきた。

 1800年代後半にイギリスが衰退を開始すると、怪物は「独立を目論むアイルランド勢力」」に例えられた。20世紀前半には怪物は「怖れられながらも、差別され憐れみをかきたてるキャラクター」として扱われた。1970年代にフェミニズム運動が盛んになると、原作は女性だからこそ書けた作品としてメアリーの研究が進んだ。

 そして1990年代の生命工学の発展、現代のAI技術、等、科学が生命を生み出す警鐘として語られ続けている。

感想

 怪物の名前は超有名ですが、作者名も原作の内容もほとんど知られていない「フランケンシュタイン」の解説回。殆ど「100分de名著」のフォーマットで作ったような回でしたが、面白かったので良しとします。
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ
司会 伊藤海彦 (アナウンサー)

 
 

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フランケンシュタイン 痛快世界の冒険文学 (3)
 
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