【経済】感想:NHK番組「シリーズ 欲望の経済史~ルールが変わる時~」第3回「勤勉という美徳 ~宗教改革の行方~」

経済史の理論 (講談社学術文庫)

シリーズ 欲望の経済史~ルールが変わる時~ http://www4.nhk.or.jp/P4384/
放送 NHK Eテレ。全6回。22:30~23:00。

【※以下ネタバレ】
 

第3回 勤勉という美徳 ~宗教改革の行方~ (2018年1月19日(金)放送)

 

内容

第3回「勤勉という美徳」


労働こそが「価値の源泉」であるー。宗教の論理と経済の論理が美しく親和性を持った時代、その背景にあったドラマとは?「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」が合致したとされてきた時代、そこで展開した欲望の論理とは?勤勉が美徳となり富が蓄積される。この時経済学の父アダム・スミスの果たした役割とは?カルヴァン派の目指した真の社会とは?時代のベースにあった精神を読み解き、もたらされた価値観を考える。


【出演】ロンドンスクールオブエコノミックス准教授…ジェイムス・モリソン,パリ経済学院経済学教授…ダニエル・コーエン,チェコ・CSOB銀行チーフストラテジスト…トーマス・セドラチェク,スイス・ジュネーブ大学神学部教授…フランソワ・デルマンジュ,【語り】首藤奈知子

 
 カトリックは秩序を重んじ社会が動かないことを望み、逆にプロテスタントは社会の発展を望む。

 宗教改革プロテスタントは「予定説」を説いた。これは誰が天国に行き誰が地獄に行くのか、は、生きているうちの行いで決まるのではなく、神が最初から決めてある、という考え。つまり善行を積んだ人が地獄に行くかもしれないし、逆に悪行三昧のクズ人間が天国に行くかもしれない。人間には自分の運命を知る手段はない。

 しかし仕事を、「天職」、つまり神から与えられた仕事と考え、それに励めるという事は、神に選ばれたという可能性を示しており、それが死後の不安を追い払うことになった。怠惰で働く意欲が無い、という事は、神の恩寵が失われていることを示している。

 真面目に働けばお金がたまる。カトリックは余分な富は協会に寄付しろと言っていたが、プロテスタントは自分のものにしていいと説いたので、労働者に熱烈歓迎された。またプロテスタントは金を自分のために使うのではなく、投資に使えと説いた。ここに「勤勉な労働→蓄財→投資」という近代資本主義が生まれた。財産が有るのは恥ではなく誇ることと認識が変わった。


 アメリカの建国の父ベンジャミン・フランクリンは、節制や規律といったルールを自分に課していたことで知られる。経済学者のウェーバーは、フランクリン的な生き方、つまり欲のままに生きるのではなく、規律を持ちかつ蓄財そのものを目的としたスタイルを「資本主義の精神」の始まりだと見た。


 イギリスのアダム・スミスは「国富論」という本を出した。自己利益の追求が「見えざる手」によって社会全体の利益になる、と説いた。またスミスは軍事力によって貿易で利益を上げる「重商主義」を批判した。重商主義は帝国同士の戦争を呼ぶことを危惧した。また植民地の反乱も警告した。スミスは富の収奪ではなく、労働によって富を増大させることを説いた。世の中を重商主義から自由主義へと移るきっかけとなった。


 しかしこれからのテクノロジー時代には「勤勉」の意味も変わってくる。人は自分がコンピューターに代替できないことを示すため、一つはコンピューターを使いこなす能力、もう一つは社交性、を発揮しなくてはならない。どちらも発揮せず「ただ勤勉に働くだけ」というのは一番必要とされない。

感想

 真面目に働く人間に価値が無い時代が来た……、地獄の始まりですか?
 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「シリーズ 欲望の経済史~ルールが変わる時~」内容・感想まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
経済史入門―経済学入門シリーズ (日経文庫)