■豆知識
2001年にゲームボーイアドバンスで発売されたタイトル「逆転裁判」をニンテンドーDSに移植した作品。移植に際し、新シナリオ「第五話 蘇る逆転」が追加された。
■紹介
ゲームジャンルに「法廷バトル」と有りますが、正しくは推理物アドベンチャーに法廷闘争の要素をミックスしたゲームです。プレイヤーは新人弁護士「成歩堂 龍一(なるほどう・りゅういち)」をコントロールして事件を解決し、真犯人を見つけ出し、依頼人の無罪を勝ち取るのです。
エピソードは全部で5本有りますが、第1話は事実上システムに慣れる為の練習モードなので、全4話と考えても良いでしょう(以後特に断らない限り、”エピソード”は2〜5話を指します)。どのエピソードも、成歩堂が「依頼人の有罪間違いなし!」という絶望的な状況で依頼を引き受けるところから始まり、奇跡の逆転勝利で依頼人を無罪にするまでを描いています。
エピソードは3回の裁判=「法廷パート」と、裁判前に証拠を集める「探偵パート」から構成されています。1&2回目の裁判ではとにかく有罪にならないように凌ぎまくり、3回目の裁判で真犯人を見つけ出して勝利を掴むのです。
「探偵パート」は普通のアドベンチャーで、「移動する」「話す」「調べる」等のコマンドを駆使して証言や物的証拠を集めます。全てのフラグを立て終わると自動的に法廷パートに移行します。
法廷パートは裁判所を舞台にした推理合戦で、手持ちの証拠を元に証人の発言を切り崩していきます。例えば、(極端な例ですが)手元の証拠「検死報告書」の中で「被害者は心臓を一突きされて殺された」と書いてあるのに、証人が「被害者が撃ち殺されるところを見ました」と証言すれば、あからさまに矛盾が有ります。そこで、証拠「検死報告書」を証人の「撃ち殺され〜」という発言に「つきつける」コマンドで叩きつけるのです。
もし証拠と発言の組み合わせが正しければ、証人は狼狽して発言をし直します。しかし新証言にもやはり同じような矛盾が隠れていますので、またその矛盾を追求します。これを繰り返し、裁判で依頼人が負けないように切り抜けまくり、最終日の裁判で依頼人に奇跡の逆転無罪を勝ち取るのです。
■感想
ウリの法廷パートが鳥肌が立つかと思うほどに興奮させてくれます。というのも、プレイヤーの分身たる成歩堂ですら、裁判が始まった時点では事件の全貌は見切れておらず、故に、ただひたすら、「とにかく、証言の矛盾を見つけて、なんとか有罪にならないようにしよう」という、(言葉は悪いのですが)その場しのぎの行き当りばったりで裁判を進めていくのですから、証人から爆弾発言が飛び出したり予想もしない証拠が出てきたりして、崖っぷちに立たされたような状況が延々と続くのです。
しかし、証言の矛盾を暴いたり、なんでもない証拠から新しい事実を引き出したりするうちに、検事・裁判官はおろか、成歩堂自身(つまりプレイヤー)すら驚愕のあまりのけぞってしまうような真相が明らかになるのですから、もうたまりません。事件の真相を知りたくて、この架空の裁判にのめりこんでしまうこと請け合いです。
しかも、最後の最後には「証拠が無いだろう!」と勝ち誇る真犯人に対し、気合を込めて言い逃れの出来ない圧倒的な証拠を叩きつけ、奇跡の大逆転勝利を掴み取るのですから、法廷物のお約束とはいえ、カタルシスをたっぷり体験できます。犯人が証拠の前に叩き潰されてへこんでしまうシーンは本当に心の底から気持ちよくなれます。
キャラ名が「成歩堂」だの「糸鋸(いとのこぎり)」だの変な名前が多いですし、キャラクターも見た目や口調などがかなり特徴がつけられており、正直真面目なゲームには見えないのですが、エピソードの内容自体はやたらと重く、実はかなりシリアスなゲームで、推理物としても法廷物としても十分に堪能できました。
■まとめ
快作の一言。法廷パートの面白さはいくら言葉を尽くしても言い表せそうに有りません。裁判の途中で「もう負けだ!」と絶望しそうになったとき、横から奇跡的な乱入が有ってなんとか命脈を繋ぐ、等、真面目な裁判ではありえない展開に「おいおい」と思ったりもしますが、そういう点も含めて全く先が読めない波乱万丈疾風怒濤な展開がプレイヤーを引き込んで離しません。
推理物好きのゲーマーならば絶対遊ぶべき傑作です。逆転逆転また逆転の展開を楽しんでください。
■評価
★★★★★
5点評価で5点満点。大満足でした。