【映画】感想:映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」(2023年:日本)

岸辺露伴 ルーヴルへ行く

映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」 NHK https://www.nhk.jp/p/ts/8L75G2JGY3/
放送 NHK総合。2024年5月6日(月)

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

荒木飛呂彦・原作×高橋一生・主演の人気ドラマシリーズ劇場版第1弾。漫画家の岸辺露伴が、編集者の泉京香とともに美の殿堂ルーヴル美術館を舞台に「黒い絵」の謎に迫る!


露伴は、青年時代に淡い思いを抱いた女性から、この世で最も「黒い絵」の話を聞く。時は経ち、その絵がルーヴル美術館に所蔵されていることを知った露伴は、取材とかつての慕情のためフランスを訪れる。しかし美術館の職員すら「黒い絵」の存在を知らなかったが、データベースでヒットした保管場所は、今はもう使われていないはずの地下倉庫だった。そこで露伴は「黒い絵」が引き起こす恐ろしい出来事に対峙することとなる…

 

あらすじ

 岸辺露伴は新作のための取材中に、オークションにフランスの画家「モリス・ルグラン」作の真っ黒な絵が出品されることを知る。露伴は「黒い絵」にある思い出があり、編集者の泉京香に手配させてオークションに参加すると、その絵を落札した。

 ところがオークションで露伴と絵の落札を競って負けた男たちが、突然露伴の自宅に押し入り絵を奪って逃走した。強奪犯の一人は人気のないところで絵の裏側を探すが何も見つからず、次の瞬間見えない何かに襲われて死んでしまった。絵は露伴の元に戻るが、その裏側にはフランス語で「これはルーヴルで見た黒。後悔」と書かれていた。


 過去。露伴がまだ漫画家としてデビュー前の時期、執筆に集中しようと都会から離れた祖母の家で漫画を描いていた。祖母は下宿を営んでおり、ただ一人の下宿人は奈々瀬という美女だった。奈々瀬は露伴に「この世で最も黒く邪悪な絵」について語り、それは日本の画家・山村仁左右衛門(やまむら・にざえもん)の作品でルーヴル美術館にあることを示唆する。その後、奈々瀬は突然姿を消してましい、やがて露伴も祖母の家を離れた。


 露伴は仁左右衛門の絵を見るため、泉京香と共にパリ・ルーヴル美術館へと向かった。通訳のエマ野口からはルーヴルには日本人の絵は無いはずといわれる。やがて露伴たちの目の前で、エマから仁左右衛門の絵について調査を頼まれていた同僚が、見えない何かにおびえた挙句高所から転落する。

 エマはその同僚の調査から、今は閉鎖され何も収納されていないはずの地下倉庫「Z-13」に仁左衛門の絵があると知り、露伴・京香、さらに案内の消防士二人と共にZ-13へ向かった。その途中、露伴のファンだという日本人キュレーター・辰巳隆之介が現れ、彼らに同行することになった。

 Z-13の中で伝説の画家フェルメールの未発見作品と思しきものが見つかるが、辰巳は一目で偽物だと断言し処分させようとする。しかし露伴は絵は本物だと言い切り、ある仮説を披露する。それはルーヴルに絵を偽造する犯罪者グループがあり、まずモリス・ルグランが誰も来ないZ-13で絵を模写し、模写を本物としてルーヴル美術館に渡し、本物はモリスの絵の裏側に隠して運び出し、オークションでモリスの絵を落札して手に入れる、というシステムがある。そしてこの犯罪には、ルーヴル内を自由に行き来できる消防士やキュレーターが加わっているはずだと。

 やがてZ-13の中で仁左衛門の絵が見つかるが、消防士の一人がいきなり銃に撃たれたような姿で死に、もう一人は焼死した。また辰巳はいきなり現れたモリス・ルグランに殺されてしまう。そしてエマも様子がおかしくなり、露伴は京香にエマを倉庫の外に連れ出させ、自分は絵と対峙する。

 仁左衛門の絵を見たものは、おそらく自分の過去の後悔や、あるいは先祖の犯した罪の報いによってむごたらしい死を遂げる。そして露伴仁左衛門に襲われるが、露伴はとっさに自分自身にヘブンズ・ドアーの能力で「記憶を失う」と書き込みZ-13から逃れる。そして倉庫の外で記憶を失った状態で手に書いてあった「顔の文字を消す」という指示で書き込みを消して記憶を取り戻す。

 結局Z-13倉庫の異常事態は、人間に有毒なガスがたまっていて、入った人間が幻覚を見てしまい、それで殺し合ってしまった、という事で決着した。ルグランはZ-13倉庫であの仁左衛門の絵を見て、それを元に黒い絵を描いたのだと思われた。


 露伴は帰国すると、忘れられていた仁左衛門の墓を見つけるが、そこに奈々瀬が現れる。露伴ヘブンズ・ドアーで奈々瀬の記憶を読む。その昔、奈々瀬は代々絵師の一家の跡取り山村仁左衛門に嫁入りした。しかし仁左衛門は新しい表現を求めて西洋の作風を取り入れようとしたため、親から破門され奈々瀬と共に家を追い出される。やがて奈々瀬が病気となったため、仁左衛門は父親に許しを請い、父親からは彼の絵を超える作品を描くように命じられる。

 仁左衛門は奈々瀬の黒髪を表現する黒い画材を求めており、奈々瀬が見つけた神木の黒い樹液こそ理想の画材だと喜ぶ。しかし、跡取りの地位を奪われそうになった弟から神木を傷つけたという偽りの告発を受けて役人にとがめられ、奈々瀬を殺されたため逆上して役人たちを殺す。そして神木を斧で傷つけ、そこから噴き出した樹液ですべてが黒い絵を描いて死ぬ。その絵は見たものに後悔と罪を与える邪悪な絵と化し、奈々瀬もその絵に囚われていた。

 奈々瀬は露伴を巻き込んだことを詫びて消える。実は奈々瀬は露伴の遠い先祖だった。そして露伴はいつもの日常へと戻った。


感想

 評価は○(まあまあ)

 NHKが2020~22年と三年連続で年末に放送していたドラマ「岸辺露伴は動かない 」の映画版。まあまあの面白さでした。

 原作は、かの荒木飛呂彦先生が、天下のルーヴル美術館から「うちに飾りたいので新作お願いします!」と頼まれて描き下ろしたフルカラー漫画。という出自があるからか、この作品の映像化にあたっても適当に日本国内のそれらしい美術館でお茶を濁したりせず、フランスまで行って本物のルーヴルで撮影したという豪華スペシャル版です。そらNHKも映画館で公開してお金貰いたくなるよな(下世話な感想)

 高橋一生演じる岸部露伴も4年目ということですっかりおなじみに。原作漫画のキャラデザとは全く似ているとは思わないのですが、これはこれで有りだ、という魅力があります。特に泉京香のすることにいちいち突っ込みを入れるところとかいい味出してましたね。

 ストーリーは基本的には原作漫画と同じ流れですが、ルーヴルに巣くう犯罪者グループというオリジナル要素が追加されていました……、が、あんまり印象に残らなかったので「この設定必要だった?」という感も無きにしも非ず。

 お話のクライマックスとなるZ-13倉庫内の異変ですが、ちょっと物足りなかったかな、という感じでした。原作のあの情景を再現するにはCGを駆使した派手な映像にすればいいのでしょうけど、それはこの高橋一生露伴のシリーズの進む方向ではないという判断でしょうか。舞台劇でもやれそうなくらいの地味な映像でしたが、そこは製作者のポリシーでしょうか。


 まあ話としては面白かったので、まずまずの評価というところでした。
 
 

映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」
[総合] 2024年05月06日 午後3:55 ~ 午後5:54 (1時間59分)


【出演】高橋一生,飯豊まりえ,長尾謙杜,安藤政信,美波,木村文乃,【原作】荒木飛呂彦,【脚本】小林靖子,【音楽】菊地成孔/新音楽制作工房,【監督】渡辺一貴


“この世で最も黒く、邪悪な絵”の謎を追い、美の殿堂ルーヴルへ


特殊な能力を持つ漫画家の岸辺露伴は、青年時代に淡い思いを抱いた女性からこの世で「最も黒い絵」の 話を聞く。それは、最も黒く、そしてこの世で最も邪悪な絵だった。時は経ち、新作執筆の過程で、その絵がルーヴル美術館に所蔵されていることを知った露伴は、取材とかつての慕情のためにフランスを訪れる。しかし、不思議なことに美術館の職員すら「黒い絵」の存在を知らなかったが、データベースでヒットした保管場所は、今はもう使われていないはずの地下にある「Z-13 倉庫」だった。 そこで露伴は「黒い絵」が引き起こす恐ろしい出来事に対峙することとなる...


出演者・キャストほか
岸辺露伴 高橋 一生
泉京香 飯豊まりえ
岸辺露伴(青年時代) 長尾謙杜
辰巳隆之介 安藤政信
エマ・野口 美波
奈々瀬 木村文乃

 

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