雑談:新作ゲームブック『魔女館からの脱出 キャット&チョコレート』第一印象

■アマゾン
http://www.amazon.co.jp/dp/4775310690/
魔女館からの脱出: キャット&チョコレート ゲームノベル (NEO GAME BUNKO) [文庫]
秋口 ぎぐる (著)
文庫: 256ページ
出版社: 新紀元社 (2012/9/8)
言語 日本語
ISBN-10: 4775310690
ISBN-13: 978-4775310694
発売日: 2012/9/8

 9月8日に発売されたゲームブックの新刊を本日入手して15分ほど読んでみましたので、簡単にレビュー(という程大げさなものではありませんが)を書いてみます。

 ところでこれ「文庫」だったんですねぇ。いやまぁ、アマゾンの情報とかに「ネオゲーム文庫」と書いてあるので当然といえば当然なのですが、目に入っていなくて…、最近発売された「人狼村からの脱出」や迷宮キングダムゲームブック「虹川の大冒険」みたいな、文庫より少し大きめの本かと思い込んでいました。テヘッ。


■あらすじ

 幽霊屋敷に迷い込んだ中学生男女が脱出を目指す、という、まあありがちなもの。内容的にはライトノベルというより、小学生向けのジュブナイルという感じ。


■ゲームシステム

 全256ページですが、総パラグラフ数は77と少な目。必然的に一つのパラグラフのボリュームが4〜8ページ程もあります。

 さて、私はこの本をケームブック扱いしていますが、作者によればゲームブックではなく「ゲームノベル」だそうです。何故かと言うと「謎解き」というかパズルというかが有るから、だそうです。つまり「パズル仕立ての本」という扱いです。


 本の構造は基本的には正統派ゲームブックそのものです。つまり、「物語が複数のパラグラフに分割されていて、各パラグラフには番号が振られており、末尾に『X番へ進め』と書いてある」というおなじみのあの形です。

 ただし、この本のパラグラフにはゲームブックのキモとも言える「行動の選択」の自由は有りません。「XXするなら**番へ」という選択肢は無く、末尾に次に進むパラグラフ番号1つが提示されているだけ。つまりこの本は「ストーリー選択小説」ではなく、普通の小説をパラグラフに分割して、あっちこっちに移動させて読ませているだけです。


 しかし、この本はお馴染みのストーリー選択の自由が無い代わりに、途中で謎解き/パズルが用意されています。それは以下の様な感じです。


1)例えば「パラグラフ10」で、「君は落とし穴に落ちた。手元には以下の道具がある」云々という「問題」が示されます。道具には「1番XX、2番 XX、3番 XX〜」と番号が付けられています。

2)道具を使う順番を考えます。例えば、まず5番を使い、次に次に1番を使う、という場合は「51」となりますので、「パラグラフ51」へと進みます。

3)もしこの選択が正しいならば、飛び先の「パラグラフ51」の冒頭には「パラグラフ10から来た人は正解」と書かれています。間違っていれば、飛び先のパラグラフは意味が通じませんので、やり直しとなります。


 このように「謎を解いてパラグラフの飛び先を見つけさせる」のがこの本のウリとなります。ざっと見る限り謎解きは10個ほど有るようです。


■第一印象

 「謎解き」でパラグラフ番号を導き出すシステムは少々面白くはありますが、本全体としてあまり高い評価はつけられません。というのも、前述の通り、大半のパラグラフには選択が無く、「パラグラフをただひたすらたらいまわしにされている」というやらされ感が強いためです。そして、そのような「作業」を暫く続けると、ようやく謎解きに入りますが、それが「組み合わせを考えて、二桁の数字をひねり出す」だけ。これでは、あまり知的興奮を呼び起こすとは言えませんよねぇ。これならば、小学生向けの「バニラのお菓子配達便!」(藤浪智之)の色々な謎解きの方がまだ面白かったような。

 という事で、天下のグループSNEが造ったにしてはお粗末な感じがいたします。ゲームブックという商品(あ、ゲームノベルか、とにかくゲームブック的な商品)が2012年に発売される事自体は歓迎しますが、質的には「イマイチ」のように思えますねぇ。安田均先生はロール&ロール誌で「昔のゲームブックとは違う」云々とかかれていましたが、その成果がこれですか? うーんうーん。


★おまけ

●参考1 internet - OnlineGameMarket/商品詳細 キャット&チョコレート・ゲームノベル 魔女館からの脱出
http://saitohobbygames.jp/products/detail.php?product_id=12710

>日本ボードゲーム大賞2010を受賞したカードゲーム「キャット&チョコレート」を元にしたゲームブックです。

>最近怪しいことが起こると噂の古い洋館。黒猫にいざなわれるように、踏み入ってしまったまゆと圭司。その途端、気を失ってしまい……気づけば館から1歩も出られない状況に!

>2人を襲う数々の怪奇現象! そこへ「私どうやら死んじゃったみたいです」と幽霊を名乗る女の子が現れて……。

●参考2 Group SNE | 最新情報 | 新刊案内
http://www.groupsne.co.jp/news/book.html
>2012年09月01日
>キャット&チョコレート・ゲームノベル
>このゲームブック、いわゆる「○○の場合は××番へ行け」といった指示が続くタイプのゲームブックとは少し趣が異なります。要所要所にアクシデント―すなわち「問題」があり、それを解決するためには「どのアイテムとどのアイテムを、どの順番で使えばいいか」を考える必要があります。この部分はまさに『キャット&チョコレート』そのまま!