感想:NHK番組「ザ・プレミアム」「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー SPECIAL(File-13)『神々の遺産?謎の超古代文明を徹底解明!』」(2015年6月13日(土)放送)


 NHK番組「ザ・プレミアム」の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ザ・プレミアム|NHK BSオンライン
http://www.nhk.or.jp/bs/thepremium/

■幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー - NHK
http://www4.nhk.or.jp/darkside/

 NHK BSプレミアムでの視聴です(放送日:2015年6月13日(土) 21:00〜22:30)。


■番組概要

http://www4.nhk.or.jp/darkside/26/
>UFO、ネッシー、雪男、予言&占い、心霊現象、超古代文明、妖怪、吸血鬼、魔女…。闇の魅力がもつ妖しげな幻に対して、「今、何がどこまでわかっているのか?」を徹底検証!そこから浮かぶのは、自然の神秘、私たちの脳や心の不思議なメカニズム、社会のからくり、昔の人の驚くべき技術と想像力…。ダークサイドの向こうの“本物の不思議”をワクワクしながら楽しんでいただく、NHKならではの超常現象ガチンコ検証番組!


出演者 栗山千明 (くりやまちあき)

テーマ曲: 志方あきこ
オープニング曲“Arcadiaアルカディア)”
エンディング曲“Leyre(レイレ)”
アルバム名/ “Turaida(トゥライダ)”

語り: 中田譲治(声優、俳優、ナレーター)
代表作 『巌窟王』(モンテ・クリスト伯爵)、『ケロロ軍曹』(ギロロ伍長)、『HELLSING』(アーカード)、『Fate/Zero』(言峰綺礼)、『劇場版 空の境界』(荒耶宗蓮)など

※他の回の感想→ 「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」内容・感想まとめ

『File-13 神々の遺産?謎の超古代文明を徹底解明!』


■番組内容

http://www.nhk.or.jp/bs/thepremium/
超常現象の闇の魅力を検証し、“本物の不思議”を楽しむ「幻解!超常ファイル」、シリーズ第14弾!今回は、「超古代文明」に迫る90分スペシャル版!超古代文明…しばしば「1万年以上昔、現代を超える高度文明が存在したが、天変地異や核戦争で滅亡した」という説として語られる。例えば、エジプト・クフ王のピラミッドの設計には円周率や黄金比などの高度な数学がきわめて複雑に使われていたはず、ナスカの地上絵は上空しか判別できないのだから空を飛ぶ技術があったはず、といった類のものだ。「機械や高度な技術がなければ不可能」「偶然の一致ではありえない」いうが、それは本当にそうなのだろうか?古くは、理想郷アトランティスの存在を書き残した古代ギリシャの哲学者プラトン。そして19世紀にはアメリカの作家ドネリーがアトランティスの仮説を唱え、さらにナチスドイツがアトランティスの証拠を探し求めて各地を捜索するなど、人々はずっと超古代文明に惹かれてきた。いったいなぜ、そうした幻想に惹かれ伝説が拡散していってしまうのか?それらを詳細に分析すると、さまざまな背景が浮かび上がってくる…。ピラミッドとアトランティス伝説を中心に、あらゆる時代に人々の心をかき立ててきた超古代文明の真偽とその闇に迫っていく。


【ゲスト】河江肖剰、原田実、【司会】栗山千明、【語り】中田譲治

http://www4.nhk.or.jp/darkside/
エジプトのピラミッド、ナスカの地上絵、アトランティス大陸、古代核戦争説…。あなたの常識をくつがえす「超古代文明」は実在したのか?謎とロマンを専門家と徹底検証!

あなたの常識がひっくり返る!?謎とロマンの古代遺跡、衝撃の真実!エジプトのピラミッド、ナスカの地上絵、イースター島のモアイ、マヤやインカの巨石建築…。どうやって造られたかご存知ですか?もしや、高度な文明人が存在したのでは!?幻の大陸アトランティスが秘めたヒトラーの影?古代に核戦争があった証拠?ロケットを描いたレリーフクリスタルスカルの正体?怪しい説の真相を、考古学の専門家たちと徹底ガチンコ検証!

 現代の文明の前に、遥かに進んだ文明「超古代文明」が有ったといわれるが本当だろうか? その真偽を検証する。


1 エジプトのピラミッド

 エジプトの「クフ王のピラミッド」は、明らかに超古代文明が作ったとしか考えられないような、様々な証拠がある。

1)ピラミッドはきっちり東西南北をむいている。そのズレはわずか0.057度。
2)2.5トンもある石を高さ137メートルの高さにまで運んでいる。
3)壁画の中に、ヘリコプターや飛行船にしか見えない絵が有る。
4)ピラミッドの長さ・高さの中に、様々な数値が潜んでいる。円周率、地球と太陽の距離、地球の大きさ、など。


 ところが全ては合理的な説明がつく。

1)ピラミッドの東西南北

 当時から星を観測して正確な北を割り出す技術があった。


2)2.5トンの石を高さ137メートルの高さへ

 仮説では有るが、まずピラミッドの外に傾斜路を作ってある程度の高さまで積み上げ、それ以降はピラミッドの内部に作られた傾斜路を通って石を運び上げていた、と考えれば、当時の技術でも十分可能。


3)壁画の中に、ヘリコプターや飛行船にしか見えない絵が有る。

 二つの王の名前が重なった結果たまたまそう見えただけ。まず石に一人目の王の名前を彫った後、以後石膏でその名前を埋め、第二の王の名前を彫った。しかし長い間に石膏が剥がれ落ち、二つの名前が重なってしまった。


4)ピラミッドの長さ・高さの中に、様々な数値が潜んでいる。

説1:(ピラミッドの周囲の長さ×2)÷高さ=3.1415...、つまり円周率が隠されている
説2:ピラミッドの高さを10億倍すると、地球・太陽間の距離と同じ
説3:ピラミッドの周囲の長さと高さの比率は、地球の半球と同じ


 ここで数学者のピーター・フランクル先生登場。

・東京タワーの高さ333メートルを港区の郵便番号106で割ると、答えは3.1415...、なんと円周率が!!
・トイレットペーパーのロールの各部の数値をあれこれ足し引きとかすると、なんと地球・太陽間の距離が!!

 とかの実例をあげ、「数字を適当に足したり引いたり掛けたり割ったりすれば、どんな物からでもそれらしい数字をひねり出せる」が、それは数学では無く単に数字のマジックだと教えてくれました。

 そもそも、クフ王以外のピラミッドには「3.14」という数値が出てこない。カフラー王のものでは「2.98」、メンカウラー王のものでは「3.20」、つまりクフ王のピラミッドの数値3.14は単なる偶然だと考えるほうが自然です。


栗山千明と考古学者の対談)
 ピラミッドって遠くから見ると凄く正確そうに見えますが、内部を見てみると、結構ぐじゃぐじゃ。超古代文明とか宇宙人が作ったなら、レーザーとかで綺麗に石を掘り出すはずで、こんな風にごちゃごちゃにはならないでしょう。みんな、実情を知らないから超文明とかを持ち出すのでしょうね。云々。




2.南米の超古代文明

 大航海時代、新大陸アメリカにやって来たヨーロッパ人たちは、マヤ・アステカ・インカなどの巨石文明を見て驚愕した。金属製の道具を知らない現地の人間にこれらの建物などを作れたはずが無い。超古代文明が存在したのか?!


・インカ文明

 インカ文明の石積みの建物の石は剃刀の刃も入らないほどキッチリ摘まれている。つまり超文明の証拠だ!? ところが学者は「ハンマーストーン」を使えば可能と解説。ハンマーストーンとは何のことは無い、ただの大小さまざま材質も様々の石。それらを巨石に叩きつけ根気良く削っていけば、最終的には驚くほど平らな面が作れる。


マヤ文明(1) バレンケ遺跡

 パレンケ遺跡の棺の蓋には、ロケットのようなものにまたがった人の姿が描かれている。古代にロケットが有った!? これは見る向きが間違い。ロケットのようなものは木で、天国と地獄を描いたマヤ文明の死生観を描いた絵と解釈するのが正解。


マヤ文明(2) クリスタルスカル

 マヤ文明の遺跡から発掘されたクリスタルで出来たドクロ。これを古代マヤ人が作れたはずが無い! しかし現在では19世紀のフランス人がドイツの職人に依頼して作った、という説が有力。つまり遺跡から出たというのは大ウソ。


ナスカの地上絵

 ナスカには地上からでは全体が見えない、巨大な地上絵が存在する。彼らは空を飛行する技術を持っていた証拠だ!! ところが、最初に小さな絵を描き、次に基準点を作り、そこから各点にひもで線を引いて「相似」の考えで拡大すれば、超巨大な絵でも描ける。これで描いたかどうかは不明だが、別に超文明は持ち出さなくても問題なし。


(学者のコメント)
 この超古代文明説は、19世紀頃の欧米人が、社会の底辺に居た現地人を見下して、「現地の人間の技術でこんなものが作れたはずが無い」という差別意識が生み出した考え方、とみるべきでしょう。云々。




3.モヘンジョダロ

 パキスタンにあるモヘンジョダロは、インダス文明の遺跡で紀元前1800年頃に滅亡した。ところが世間では「モヘンジョダロは核戦争で滅びた」というのが半ば常識である(グーグルの検索窓でモヘンジョダロと入力すると、次に「核」と出てくる)。これは本当なのか?


 モヘンジョダロが核戦争で滅びた説を唱えたのは、1970年代の学者のイギリス人デヴィット・W・ダヴェンポートとイタリア人エットーレ・ヴィンセンティ。二人は現地の人が秘密にしている「ガラスで覆われた町」を調べたところ、高熱で溶けた砂が固まった「トリニタイト」を発見した。これは核爆発の跡に見つかるものだった。またインドの神話「マハーバーラタ」には核戦争を思わせる記述がある。二人はこの説を本にまとめて1979年に発売した。


 ところが、二人に連絡を取ろうとしたら行方知れず。また著書も古すぎて出版社でも図書館でも見つからない。マニアの間でも幻の本扱い。それに現地を良く知る考古学者に聞いてみると、「ガラスの町なんて聞いたことも無い」「隠しているとかもまずありえない」との事。


 学者にしてみれば、モヘンジョダロが滅びた理由は複合的なものだと考えているが、「そんなまどろっこしいのはいやだ、もっとすぱっとした理由が欲しい」という素人が、核戦争という根拠もない説に飛びついている状況らしい。



4 本物のオーパーツ

1)ネブラ・ディスク

 円盤に月や星が描かれている。今から3600年前の史上初の天体観測の記録。これはそれまで知られていた記録より1000年も古い。


2)アンティキティラ島の機械

 2100年前の機械。分析の結果、天文の運行を計算する機械だと解った。


 これらは「超古代文明」とかに逃げずに、きちんと科学的に調べたからこそ正体が解った物たちです。



5 アトランティス

 紀元前4世紀の哲学者プラトンは、紀元前10,000年に大西洋上に存在した「アトランティス」について書き残した。この国は神々の子孫が暮らす、優れた人たちが住む理想郷だった。しかしやがて堕落し他国に攻め入るようになったため、怒ったゼウス神によって天変地異で海底に沈められた。プラトンはこれはエジプト神官から聞いた「本当のこと」だと書いている。


 しかし、この「本当」とは「アトランティスが実在した」にかかるのではなく、「人が堕落すると国が滅びてしまうぞ、これ本当」というプラトンの思想の中において本当、という意味と解釈すべきである。当時プラトンの祖国アテナイは戦争に走り国民は法を守らなくなり、という状態になりつつあった。プラトンはそれに対する警告の意味で書いたと思われる。


 1882年、アメリカ人ドネリーは、アトランティス本を書いて大ヒットを飛ばす。彼の考えでは、エジプトと南米の文明が両方ピラミッドを作りミイラを作り太陽を崇め、と似すぎているのは偶然ではありえないとした。そして全文明の起源にアトランティスがあり、その子孫たちがエジプトや南米に拡散したのだ、と考えた。


 19世紀末、ヘレナ・プラヴァッキーは「神智学」という学問を作り出した。人間は最初は肉体を持たない霊的存在で、転生すると肉体を持つようになり、その中で優れた存在がアトランティス人であり、彼らが一般人の指導者だった。その子孫が「アーリア人」である。最後に人間はまた肉体を持たない神のような存在に進化する、と解いた。この「アトランティス」やら「進化論」やらを組み合わせた考えは当時大受け。


 20世紀。ナチスドイツの指導者層は自分たちが「アーリア人」の子孫で、つまり優れているとして、長身金髪碧眼の人間をアーリア人の見本だとした。逆に自分たちが劣ったと見なしたものたちは「雑草」と見なして差別し殺した。



6 まとめ(栗山千明と学者の対談)

 大阪城の石垣には100トンを超える石が使われている。建設当時クレーンなどの機械は無かったわけだが、だからと言って「大阪城超古代文明が作った!!」などと主張する人は居ない。何故なら、どういう人たちが作ったかイメージとして解るから。ところが、ピラミッドとかも同様なのに、そっちは作ったイメージがわかないので、「当時の人間に作れたはずが無い→超古代文明だ!」とか言ってしまう。


 「自分たちの文明はこんなもんじゃない、本当はもっと凄いはずなんだ」という願望が、「超古代文明」というウソ歴史を作り上げてしまう。しかしこの手のウソ歴史は、他者を差別するための道具とかになりやすい。そういう毒に飲み込まれないようにしないといけない。



■感想

 今回はテーマ的には地味で、UFO特番とかと比べるとやはりパンチ力が弱めでしたが、モヘンジョダロ核戦争話を完全否定するなど、オッと思わせるところもありましたのでまあまあでしょうかね。