感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第9話(シーズン1 第9話)「録音ワイヤーはどこだ!」

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放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 

第9話 録音ワイヤーはどこだ! A Spool There Was

 

あらすじ

美人スパイ、シナモン(バーバラ・ベイン)がカメラマンになりすまし、湖畔に面したリゾート地に潜入。ローランと合流し、その地で殺害されたスパイが死ぬ直前に隠したワイヤーを捜し出す。

※DVD版のタイトルは「録音ワイヤーは何処だ」。


【今回の指令】
 敵対陣営の秘密兵器の情報を手に入れた諜報員が、詳細を録音ワイヤーに記録したが、それを国外に持ち出す寸前に射殺された。彼は死の直前ワイヤーをどこかに隠したが、それは秘密警察の捜索にもかかわらず未だ見つかっていない。IMFはワイヤーを発見し回収しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:ローラン、シナモン(ブリッグスは指令の受領とメンバーの選定のみ)
 ゲスト:貸しボート屋の主人(氏名不詳)


【作戦】
 ローランとシナモンが二人だけで目的の国に潜入し、ローランはワイヤーが花壇の周囲の杭に巻き付きけられていることを発見する。しかし、そのワイヤーは何も知らない少年に持っていかれてしまった。ローランたちはそれをこっそり回収し、秘密警察には風船に結び付けて空に飛ばしたように思わせて、風船を追わせている隙にボートで逃げ出した。


監督: バーナード・L・コワルスキー
脚本: エリス・マーカス


感想

 評価は△。

 正直に言ってイマイチに尽きるエピソード。

 ミッションにローランとシナモンしか参加しない(!)という驚きのエピソードで、おかげで話の密度が薄く、物足りなくて仕方なかった。バーニーとウイリーは全く登場せず、またリーダーのブリックスも謎の上司から指令を受けたあと、ローラン&シナモンに任務を丸投げするだけで、現地に赴くのはローランとシナモンの二人だけ。一応現場で支援要員のボート屋のおやじが出てくるが、別に大活躍をするわけでもないので、「これのどこがスパイ大作戦なのか」という雰囲気だった。

 当然ながら秘密兵器を使った緻密な作戦などは実行されず、ローラン&シナモンが、秘密警察の目をかいくぐり、別の国のスパイに邪魔されながらそのあたりを嗅ぎまわってワイヤー探しをするだけ、という、「スパイ大作戦」のイメージからはかけ離れた展開のエピソードで、最初期のシーズン1の頃は、こういう話も有ったのかと驚かされてしまった。あまりうれしい驚きでもなかった訳だが……

 ちなみに、二人は恋人という設定で任務を実施するのだが、ローラン役マーティン・ランドーとシナモン役バーバラ・ベインは放送時の1966年には本物の夫婦だった。それを知っていると、夫婦で恋人役を演じているさまは、なんとなく妙な感じである。

 さて、タイトルにもなっている「録音ワイヤー」だが、何のことだがさっぱりわからなかったので調べてみたところ、(昭和世代にはおなじみの)オープンリールテープよりさらに前に使用されていた録音媒体だそうである。文字通り、細い針金に音を録音する物だったとのこと。このワイヤーの耐久性がいまいち見当がつかないが、花壇の周りの針金代わりにして風雨にさらされたり、子供が無造作に棒に巻き付けたり、と荒っぽい扱いをされていたのだが、録音内容は消えたりしなかったのだろうか。というか、そもそも秘密兵器の詳細を録音テープに収められるものなのだろうか。

 今回の話は「目当てのものが隠さずに目の前に堂々とさらされているので警察が気が付かない」という、推理小説によくあるトリックのような話だったが、秘密警察はいくらなんでも間抜けすぎではなかろうか。ちなみに標識に「OPRITA」と書かれているので、舞台の国はどうやらルーマニアのつもりだと思われる。(OPRITA=ルーマニア語で「停止」)。

 今回のブリックスの指令の受領方法はレコードで、平成世代は見たこともないメディアだと思われるが、さらに今回は指令の伝達手段がいつもより無駄に凝っていて「トレーの中の現像液に浸した写真」を見るシーンがある。おそらくデジタルカメラ世代には、部屋を赤いランプに切り替えた理由も、トレーの中に写真が浸されている訳も、理解不能だと思われる。この回の放送は1966年であり50年間のテクノロジーの進歩をまざまざと見せつけられた思いではあった。


参考:今回の指令の入手方法

 ブリックスが何かの建物に入り、中にいた女性に部屋を見学させてほしいと頼むと、荷物を渡されてとある部屋に通される。荷物は封印されたレコードで、それを再生しつつ、部屋を赤いランプに切り替え、現像液に浸されていた写真を見て指令を確認する。最後、レコードの録音部分は自動的に消去されて煙が立ち昇る。


参考:指令内容

 おはようブリッグス君。まず赤い電気をつけて、それから現像皿のカバーを取ってくれたまえ。

 さて、我々自由陣営に対する新兵器が開発され、その詳細を吹き込んだ録音ワイヤーを手に入れた我が国の諜報員が、君が今見ているその湖まで来たと思いたまえ。おそらく彼はそこから、ボートで中立国側へ逃れようとしたに違いない。ところがそこを、秘密警察に咎められ、一時身を隠した。が、結局まもなく発見され、逃げようとして射殺されてしまった。さて彼は、隠れているわずかな間に録音ワイヤーをどこかに隠したのだが、よほど巧みに隠したらしく、秘密警察が全力を挙げて捜しているにも関わらず、未だに発見されるに至っていない。また他の国もその録音ワイヤーを狙ってスパイを送り込んでいるらしい。

 そこで君の使命だが、その録音ワイヤーを見つけてその国から持ち出すことにある。例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このレコードの録音部分はただちに変質する。成功を祈る。


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