感想:NHK番組「シリーズ・江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎 」第1話「D坂の殺人事件」

D坂の殺人事件 (江戸川乱歩文庫)
関連サイト→シリーズ・江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎 http://www4.nhk.or.jp/P3860/
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【※以下ネタバレ】


※第1シリーズ「1925年の明智小五郎」の他のエピソードはこちら→第2話 心理試験 | 第3話 屋根裏の散歩者

ミステリーの父ともいわれる江戸川乱歩。日本ならではの独特な世界を描き出し、後のミステリー作家たちに大きな影響を与えた。今回、乱歩の黄金時代ともいわれる1925年の短編の傑作3作品を、一流のクリエーターたちが斬新な演出で映像化する。


第1回は、鍵のかからない日本家屋で起きた密室殺人を描いた「D坂の殺人事件」、名探偵・明智小五郎の初登場作品。第2回は、練りに練った完全犯罪が明智の見事な推理によって暴かれる心理ミステリーの傑作「心理試験」。そして、第3回は犯人の視点で殺人事件が語られていく“倒叙ミステリー”の傑作「屋根裏の散歩者」。3回に渡って、名探偵・明智小五郎満島ひかりが熱演する。

第1話 D坂の殺人事件

■あらすじ

「D坂の殺人事件」  1月11日(月・祝)午後10時30分〜11時


江戸川乱歩の短編小説を気鋭のクリエーターたちが映像化するシリーズ。演出は宇野丈良。私(松永天馬)は東京D坂にある喫茶店で向かいの古本屋を眺めていた。そこへ友人・明智小五郎満島ひかり)がやってくる。店に人影がないことを不審に思って訪ねてみると、そこには女房の絞殺死体があった。古本屋は長屋の造りで、表も裏口も二階も誰かに見られていた。密室殺人だ。女房と幼なじみだという明智が疑われるが、その真相は?

【出演】満島ひかり,松永天馬,中村中,山中崇,津田寛治,末吉くん

 主人公「私」は知人の「明智小五郎」と共に、D坂の喫茶店の向かいの古本屋の様子がおかしい事に気がつく。店に乗り込んでみると、古本屋の細君が首を絞められて死んでいた。しかし店の表側は「私」と明智が見ていたし、裏側の路地の出口にはアイスクリーム屋が店を出しており、誰も出てこなかったという。さらに古本屋の両側の店の住民も怪しいものは誰もいない。つまり密室状態から犯人は消えてしまったのだった。

 10日後。「私」は明智のいる宿を訪ね、明智こそ事件の犯人だと告発する。明智は喫茶店に来る前に、古本屋と同じ通りにある蕎麦屋に入り、トイレを借りるといって裏口から出て、やはり古本屋の裏口から入り、そして細君を絞め殺した。しかしその際に電燈に指紋を残してしまったので、「私」と共に再度店に乗り込み、事件の発見者のふりをして、電燈にスイッチを入れた。これで明智の指紋がついていても怪しまれないという訳だった。

 ところが明智は「私」の推理を笑い飛ばし、蕎麦屋の主人こそ犯人だと言いだす。実は古本屋の細君は蕎麦屋の主人と浮気をしていた。蕎麦屋の主人は裏口から出て裏の路地をとおり古本屋に入った。蕎麦屋はSで古本屋の細君はMだったため、首絞めプレイをしていたところ、力が入りすぎて殺してしまったのだという。そして明智は部屋に置いてあった新聞に、蕎麦屋の主人が罪悪感に耐えかねて自首した、という記事を見つけ出す。


■感想

 三部作の第一話。非常に雰囲気が良くて大当たり。明智小五郎役を女優(満島ひかり)が演じる、という奇抜さはどうかと思ったが、ストーリーが面白く、女性が男言葉で喋るのもそのうち気にならなくなった。また建物をあえて見え見えのミニチュアで作り、俳優をそこにわざと稚拙な重ね合わせをして違和感をかもし出したり、メインキャラ以外の人物(学生の証人とかアイスクリーム屋)を「人形」で代用してアテレコしてみたり、と奇抜な演出をしており、斬新に思える。

 終盤、「私」と明智が、ミニチュアの家を取り囲んで会話したりするシーンも、シュールながら印象的。


 これは残り二本「心理試験」と「屋根裏の散歩者」にも期待できる。


※第1シリーズ「1925年の明智小五郎」の他のエピソードはこちら→第2話 心理試験 | 第3話 屋根裏の散歩者
  
※全エピソードの一覧はこちら→ 「シリーズ江戸川乱歩短編集」あらすじ・感想まとめ