感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン7」第6話「ゴールドバーグ」


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放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン7の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン7」あらすじ・感想まとめ

第6話 ゴールドバーグ THE GOLDBERG VARIATION

あらすじ

ギャングにビルから突き落とされても死ななかった不死身の男、ヘンリー・ウィームズ。彼に興味を持ったモルダーが会いに行くと、やはり普通の男ではなかったことがわかる。


 お題は「幸運」。

 ある男がマフィアのカトローナ相手にポーカーで大勝ちするものの、負けたカトローナは金を払わず相手を30階のビルの屋上から突き落とす。ところが男は無傷でそのまま立ち去る。この一件はカトローナを挙げようと見張っていたFBIに目撃されており、モルダーとスカリーが乗り出すことになった。モルダーたちは現場に落ちていた義眼から、ヘンリー・ウィームズという男にたどり着く。

 ウィームズはアパートの管理人としてひっそり暮しており、カトローナに対する証言はしたく無いという。ウィームズは1989年(このエピソードの放送は1999年)に飛行機事故でただ一人助かった後、世捨て人の様な暮らしをしていた。カトローナはウィームズを殺そうと殺し屋を二人も差し向けるが、二人とも勝手に不運な事故で返り討ちに会って撃退される。

 モルダーはウィームズが、飛行機事故の後、幸運に取り付かれたのだと推測する。ウィームズによれば、自分はなにをしても成功するが、その代わり回りの人物に不幸が及ぶため、世間から身を隠しているのだという。ところが、アパートに住むリッチー少年が重度の肝臓病で、移植に必要な肝臓はほぼ見つかる可能性は無く、最新の治療に10万ドルが必要なため、あえて自分の力を利用して金を稼ごうとしたのだった。

 カトローナは自らウィームズの口を塞ごうとするが、例によってカトローナもまた不運で返り討ちにあい死んでしまう。しかも彼の血液型はリッチーとピッタリ適合しており、彼の肝臓を移植することでリッチーは助かることになった、という良い感じで〆。


監督 トーマス・J・ライト
脚本 ジェフリー・ベル


感想

 評価は○。


 宇宙一幸運な男が登場するエピソード。恐怖や怪異といったX-ファイル的要素はほぼ皆無だが、露骨にコメディやおとぎ話路線に走っておらず、「奇妙な話」程度に留めていたため、そこそこ楽しめる話に収まっていた。


 今回のテーマは幸運に守られた男。ウィームズはギャンブルは必ず勝ち、30階のビルの屋上から突き落とされてもかすり傷で済み、命を狙われても相手が勝手に自滅してしまう、という、殆ど冗談の様なキャラクターである。自分が幸運になる代わりに回りに不幸をもたらす、という風に語っていたが、不幸面はあまり深刻に描写されていなかったので単にラッキーな男にしか見えなかった。(ウイームズの捨てた当たりくじを拾った男が車にはねられたりもしたが、結局死ななかったわけだし)。

 サブタイトルの原題「THE GOLDBERG VARIATION」には二つの意味があり、直訳すればヨハン・セバスチャン・バッハが作曲した「ゴルトベルク変奏曲」の事だが、これはしゃれの様なもので今回の話とは何の関係もなく、真の意味は『ルーブ・ゴールドバーグ・マシン(Rube Goldberg machine)』である。「ルーブ〜」とは、劇中でヘンリー・ウィームズが作っていたような、ムダに複雑な動きをする機械のことで、日本人には『ピタゴラ装置』(※NHKの番組『ピタゴラスイッチ』に出てくる仕掛け)と表現した方が遥かに解りやすい筈である。なお「ルーブ・ゴールドバーグ」というのは、1910年代にこの手の機械のアイデアを考案した漫画家の名前である。

 このエピソードは1999年12月放送だが、内容的には2000年に公開されたホラー映画「ファイナル・デスティネーション」を連想させる。今回のエピソードではマフィアのメンバーたちが、ウィームズを殺そうとする度に、リアル版「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」に巻き込まれて勝手に死んでいくが、「ファイナル〜」でも、登場人物たちが些細な物事の連鎖により最終的にむごたらしい死に方をする、というところがそっくりである。公開時期が近いので、どちらがどちらの真似をしたというものでも無いと思うが、実は「ファイナル〜」のスタッフはかつてX-ファイルの制作に関わっており、そもそも「ファイナル〜」のアイデアX-ファイルの一エピソードとして用意されていたものを映画にした、という裏話がある。スタッフの間ではこの手の人死にのアイデアがある程度共有されていたのかもしれない。

 全体にゆるいコメディ調ではあったものの「最後にどんなオチにたどり着くのか?」という点で視聴者を引っ張ったので、それなりには評価できるエピソードではあった。