感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第10話「神託 Part2」

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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html
放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】
 
※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

第10話 神託 Part2 PROVIDENCE

 

あらすじ

 お題は「異星人の宇宙船」。

 第9話「神託 Part1」の続編。


 過去、1991年の湾岸戦争イラクの戦場で、アメリカ軍の四人の不死身の兵士がイラク軍を蹴散らす。

 現在。ウィリアムは謎の女に誘拐され、車にはねられたドゲットは意識不明の重体となっていた。FBIではフォーマー副長官の指揮の元、ウィリアム捜索チームが編成されたが、スカリーはフォーマーはカーシュの手下なのでまともに捜査をするはずがないと決めつける。

 スカリーはコーマー捜査官が崖から落ちたのに無事だったのは、彼が服に入れていた「遺物」(宇宙船の破片)の力で傷が治ったからだと思い込み、レイエスと共に病院に向かい、病室でコーマーに破片を触らせると、コーマーは一瞬にして回復する。

 コーマーによれば、UFOカルト集団のリーダーはジョセフォという男で、「神」からの声を聴き、「神殿」すなわちエイリアン宇宙船を発見したのだと言う。さらに神の声によれば、ウィリアムは父親のモルダーが生きていれば人類の救世主となるが、モルダーが死ねば反対に宇宙人側を導く存在となると言う。コーマーはUFOカルト教団がモルダーを殺したと聞き、このままではウィリアムのせいで人類が滅亡してしまうと恐れ、殺しに来たのだった。

 直後病室にFBIの職員が現れ、スカリーとレイエスは追い出されるが、その間にコーマーは死んでしまい、持っていたはずの遺物は無くなっていた。レイエスは誰かがコーマーを殺し遺物を持ち去ったと疑うが、周囲からは白い目で見られる。

 やがてスカリーはジョセフォに呼び出され、二人きりで対面する。ジョセフォによれば、実はまだモルダーが生きていてウィリアムは(宇宙人を導くという)本来の任務を果たせないので、スカリーにモルダーを殺せと命令する。そのあとジョセフォはエイリアン宇宙船の元に戻るが、ウィリアムが泣き出した途端宇宙船が起動し、ジョセフォたち全員を焼き殺して飛び去る。スカリーたちはジョセフォを尾行して、宇宙船の発掘場所にたどり着くと、焼死体だらけのなかに泣いているウィリアムが見つかる。

 その後。ドゲットは起きられるまでに回復した。カーシュ長官代理は謎の男(役名:the Toothpick Man)に、今回の事件の関係者は死んだので安心だと話していた。謎の男の首の後ろにはこぶがあった。


監督 キム・マナーズ
脚本 クリス・カーター & フランク・スポトニッツ


感想

 評価は△。

 ごたごたした展開でまとまりがなく面白みに欠けるエピソード。今までは「X-ファイルの宇宙人関係エピソードに外れ無し」という信頼が有ったのだが、今回でそれが崩壊してしまった感が有った。


 今回は宇宙人の侵略云々のSF話を離れ、「人類の救世主」とかいう宗教要素を盛り込んできてしまったため、視聴していてみるみる興味が薄れてしまった。SFとかオカルト話は大好きだが、救世主とか守護霊とかそういった宗教系の話は正直全く興味が持てない。

 病室でコーマーが説明したUFOカルト集団の教義というか考え方というかは難解でややこしく、意味を理解するのに三度以上聞き直す羽目になってしまったが、整理してみると、どうやら「神の預言」によれば

1)ウィリアムとモルダーの親子が二人揃っていた場合、二人は異星人と戦い人類を救う救世主である
2)モルダーが死んでウィリアムだけとなった場合、ウィリアムは異星人を導いて人類を滅ぼす

だそうである。そして、モルダーは既にカルト教団に殺されたので、ウィリアムは異星人側だから、コーマーは人類が滅亡を回避するためウィリアムを殺しに来た、という事情だったらしい。モルダーもしばらく姿を見せない間に、一介の超常現象大好き男から人類を救う救世主へとランクアップしていたとは、ずいぶんな出世ぶりである。

 しかし、そもそもコーマーは真面目な顔でこんな話をスカリーに語っていたが、こんな考えを信じる時点でコーマー自身が(自覚は無いようだが)完璧にカルト教団の教義に洗脳されてしまっている。ミイラ取りがミイラとはまさしくこの事だろう。

 今回はスカリーのキャラクターがかなりひどくて、目を覆わんばかりだった。幼い息子を誘拐されてまともな精神状態で居られないのは理解できなくもないが、根拠もなくFBIの上層部は陰謀を企んでいると叫び、あのレイエスからさえ「あなたはどうかしている」とたしなめられる始末である。また、突如「遺物には人を治す力がある」とか言い出して遺物を持って病院に駆け込むなど、正直言って、今回のスカリーの言動は痛々しくて見ていられなかった。あの理性的なスカリーはどこへ行ってしまったのだろうか。


 そして今回の話は、オチもあまりにもあんまりである。まあ、「ぼんやりと話は解決したものの、謎は山のように残される」というのは神話エピソードの定番の締め方だが、ウィリアムが泣いたら宇宙船が勝手に飛んで行ってしまってUFOカルト教団は全滅、などという結末はあまりにもどうかと思わざるを得ない。また、冒頭でジョセフォが1991年に出会った四人の天使(まあ明らかに無敵兵士だが)の件も投げっぱなしで、宇宙人と何の関係があるのかすら解らないままというのも酷い。


 最後、カーシュの部屋に、往年のスモーキング・マン的立場で謎の男が座っていて、その男の首にこぶがある(=無敵兵士である)というラストには、もう「無敵兵士とか宇宙人とか、思わせぶりな設定を振りかざして、あいまいなまま話を進めるのはいい加減にしてほしい」と言いたくなった。正直言って、あと10回で全ての伏線が回収されるのか、大いに疑問である。


一言メモ

 サブタイトルの「PROVIDENCE」とは、「神」や「神意」といった意味。

もう一言

 今回オープニングで流れるテーマ曲が、シーズン9で使用され始めた新バージョンではなく、以前の古いほうのバージョンに戻っている気がするのですが……

シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ