感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン7」第18話「ブランドX」

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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン7 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s7/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン7の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン7」あらすじ・感想まとめ

第18話 ブランドX BRAND X

あらすじ

モーリータバコ社の元社員で、タバコの研究開発に従事していたスコピー博士が会社を訴えた。そして、会社にとって致命的な証言をしようとする直前に、奇妙な死に方をする。

 お題は「殺人タバコ」。


 大手タバコ会社モーリー社の元社員スコビー博士が会社を告発するというので、スキナーたちが護衛に当たっていたが、証言当日スコビーは自宅で変死してしまう。スコビーの口の周りは溶けてなくなり、解剖すると肺にも異常があったが、毒物などは見つからなかった。スキナーたちは、モーリー社がスコビーの口封じのため殺したと考えるが証拠が無い。

 やがてモーリー社と全く関係ない男がスコビーそっくりの変死を遂げ、体にはタバコの寄生虫「タバコ虫」の成虫がたかり、さらに肺には多数の幼虫が巣くっていた。調査の結果、このタバコ虫は未知の新種であることが判明する。さらに直後モルダーが倒れ、肺の中からはやはりタバコ虫の幼虫が発見された。病院では幼虫を吸い出す治療が行なわれるが、肺の中の卵を根絶しなければモルダーはいずれ死んでしまう。

 スキナーは捜査令状を取ってモーリー社に乗り込み、開発責任者のボス博士から事情を聞きだす。モーリー社は遺伝子操作した新種の葉タバコを開発したが、その影響で寄生虫のタバコ虫も突然変異を起こしてしまった。そしてタバコの葉に付着していたタバコ虫の卵は、製品のタバコの煙に混じって胞子の様に飛散し、それを吸い込んだ人間の体内で繁殖してその人間を殺してしまうという。

 既に新型タバコのテスター四人の内三人が死んでいたが、ただ一人ダリル・ウィーバーという男だけは未だに元気で生きているという。ウィーバーは第二の犠牲者の隣の部屋に住んでおり、モルダーはウィーバーと出合った際にタバコの煙を吸ってしまっていた。

 ウィーバーは自分を殺しに来たモーリー社の社員を縛り付けて、そのまま姿を消していた。スキナーはモーリー社に新型タバコを取りに来たウィーバーを捕まえる。スカリーはウィーバーが無事な理由が、ヘビースモーカー、つまり重度のニコチン中毒であると直感し、モルダーにニコチンを投与すると、虫はニコチンに耐えられず死滅した。

 最後。回復したモルダーがスカリーに買って来たタバコの箱を見せて自分も喫煙者になったとアピール。スカリーはすぐにしかりつけてタバコの箱を捨てさせるが、スカリーが立ち去った後、モルダーがゴミ箱の中のタバコの箱を恨めしそうに見ているシーンで〆。


監督 キム・マナーズ
脚本 スティーブン・マエダ&グレッグ・ウォーカー


感想

 評価は○。

 冒頭の常識外の怪死事件から始まり、様々な謎が次々と提示されるが、最後にキチンとした解決が行なわれる、X-ファイルにしては珍しいほどすっきりとした筋立てのエピソード。話の組み立てが実にしっかりとしており、シーズン7の中では上位に来る面白さだった。


 今回のテーマは殺人タバコ。タバコ会社が開発した新型タバコには突然変異した昆虫の卵が付着しており、そのタバコの煙を吸った人間は肺の中で虫が孵化して死んでしまう、というえげつない物。スカリーが変死した男を解剖すると、肺の中にウジ虫的なモノがうようよしていたり、医者がモルダーの口に掃除機の吸い込み口みたいなものを差し込むと、透明なパイプの中を虫が吸い込まれていくのが見える、とか、結構気持ち悪かった。


 今回の話は、構成が実に上手く、

・冒頭スコビー博士が怪死する→モーリー社がスコビーの飲んでいたコップの水に何か細工をして殺したのでは?

・謎の男ウィーバーがボス博士の自宅を訪問してくる→ウィーバーはモーリー社の雇っている殺し屋?

ウィーバーのアパートの隣室の男が怪死→ウィーバーは実は周囲の人間を自在に殺す超能力者?

・タバコ虫は未知の新種と判明→モーリー社はタバコ虫を遺伝子改造した?


 と、様々な事件と手がかりが次から次へと提示され、視聴者をなかなか真相にたどり着かせてくれない。それでいて終盤のボス博士の告白で、全ての伏線がきちんと一つにまとまってすっきりと謎が解明されるのは気持ちよかった。X-ファイルのシナリオはえてして、前半に撒き散らした謎と後半の謎解きがかみ合っていないことが多々あるので、「手がかりと謎解きが連動している」というごく当たり前の事に軽く感動してしまった。

 ラスト、モルダーが自分も喫煙者になってしまったアピールをするシーンは、モルダーの買って来た銘柄が、(実の父親の)スモーキング・マンが愛用している物と同じだったため、「やっぱり血の繋がった親子だな」とか考えてしまったが、深読みしすぎかもしれない。


 今回の話は、モルダーたちが出てくるべきところをスキナーが代わりに活躍したり、また、モルダーとスカリーがセットで行動するような場面(例:序盤にモーリー社に乗り込むところ)とかでもモルダーとスキナーのコンビだったりして、ちょっと違和感があった。これは、モルダー役デイビッド・ドゥカブニーとスカリー役ジリアン・アンダーソンが、それぞれ自分の監督するエピソードの仕事で忙しく(※スカリーが監督したのは既に放送済の第17話「宿縁」)、撮影時間が限られていたため、こうなったとのことである。また後半モルダーが虫に取り付かれたという理由で寝てばかりなのも、また同じ理由だとのこと。そのような制約がありながら、きっちり高品質のエピソードを書き上げた今回のシナリオライターコンビ(初登場)の力量はなかなかのものと言えよう。

 とはいえ、今回のエピソードは、シナリオライターコンビが、1999年公開のタバコ業界の内部告発映画「インサイダー」を見て、それに影響されて書いたとのことである(※今回の話の放送は2000年)。X-ファイルは世間の流行り物をすぐ取り入れてしまうなど、結構ミーハーなところがある模様である。


 ところでタイトルの「ブランドX」の意味が最後まで全く不明だったが、本当になんなのだろうか。Xは未知を示すから、『(タバコの)未発売の新種のブランド』くらいの意味合いなのだろうか?


 ダリル・ウィーバーの吹き替えは、ベテラン声優秋元羊介氏でした。