■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン7 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s7/
放送 Dlife。全22話。
【※以下ネタバレ】
※シーズン7の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン7」あらすじ・感想まとめ
第8話 偉大なるマリーニ THE AMAZING MALEENI
あらすじ
マジシャンのマリーニが首を360度回すマジックを成功させた直後に、その首が落ちて死亡する事件がおきた。スカリーは単なる殺人事件だと主張するが、モルダーは・・・。
お題は「コメディタッチの犯罪物語」(※超常現象要素は無し)。
場末の遊園地でマリーニというマジシャンが手品を披露していたが、客に野次られたため、とっておきのマジックを見せるといって首を360度回して見せる。ところがその後、首が切断されたマリーニの死体が発見される。
マリーニを野次っていたのはラバンジというマジシャンで、マリーニの芸のレベルが低いと馬鹿にしていたが、殺人は否定する。またマリーニの死体を検死解剖すると、首はのこぎりの様なもので切断されており、また一ヶ月前に心臓麻痺で死んでいて、そのあと冷凍されていた形跡が見つかる。
モルダーたちは、マリーニの双子の兄で銀行員のアルバート・ピンチベックの存在を知るが、すぐに自称アルバートが実は死んだはずのマリーニだと見抜く。マリーニは兄が心臓麻痺で死んだことを利用して、兄の死体を使って自分が死んだように見せかけ、兄アルバートの人生と入れ替わっていたのだった。
その後、マリーニとラバンジに共に因縁があるヤクザ者アルバレスが銀行強盗の罪で逮捕される。マリーニとラバンジは仲が悪いふりをしていたが実はグルで、二人で示し合わせてアルバレスをハメて刑務所送りにしたのだった。モルダーはそれを知りつつ二人を見逃すが、同時に二人の真意も見抜いていた。マリーニたちは銀行のEFT(電子資金トランスファー)を使って金を引き出す事を最終目的としており、そのためにはFBI職員の職員番号と指紋が必要なので、モルダーたちを利用したのだった。しかしモルダーはスカリーに、マリーニが手に入れた自分の指紋はニセモノだと示して、明るい感じで〆。
監督 トーマス・J・ライト
脚本 ヴィンス・ギリガン&ジョン・シバン&フランク・スポトニッツ
感想
評価は○。
超常現象やSFの要素が一切ないコメディ系エピソード。確かに面白くはあったのだが、これを「X-ファイル」という番組で放送する必然性が全くないのは困りものである。
過去にもシーズン3・第19話「賭博」などの様に超常現象要素が無いエピソードはいくつか存在していたが、それらは「人間の犯罪は時として超常現象よりよほど怖い」的な狂気を含んだエピソードのため、X-ファイルとして放送してもなんとか納得できた。
しかし今回のエピソードは超常要素がゼロで、さらに恐怖も一かけらもない。内容は、言うなれば『華麗なるペテン師たち』シリーズの様な、視聴者を騙して最後にあっと言わせる系の物語である。これはこれで結構面白かった事は認めるが、「X-ファイル」という番組で放送する内容ではなく、もっと別の普通の刑事ドラマで放送するほうが良い類のエピソードに思えた。最終的に何の超常要素も無いエピソードを解決してモルダーとスカリーが明るく笑っているオチを見ると、X-ファイルはスタート時点から本当に遠いところに来てしまったのだなぁと思わずにはいられない。ちなみに、今回のノリは、エグゼクティブプロデューサーのフランク・スポトニッツが、前々から超常要素のない「魔術とイリュージョン」系の話をやりたかったので実現したとの事だが、何を考えていたのだろうと思う。
今回マリーニ役を演じた俳優リッキー・ジェイは、役柄だけでなく本当にマジシャンでもあり、カードマジックの達人として有名。ちなみにカードを135フィート(約40メートル)投げてギネスブックに載った事もあるとか。
それにしても、冒頭にマリーニが見せた「首を360度回すマジック」も「スカリーやラバンジが見せた手首を360度回すマジック」も、ネタは明かされずに終わる。確かにマジックのネタばらしをするのは興醒めかもしれないが、謎を謎のまま放置されて実にモヤモヤしたものが残った回であった。
一言メモ
劇中でラバンジが「マリーニは過去の偉大な魔術師の名前をまねしただけ」とこき下ろしていましたが、その元となった人物は、架空の人物では無く、実在したマックス・マリーニ(1873〜1942年)という人です。