感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン8」第19話「孤立」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン8 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/
放送 Dlife。全21話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン8の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン8」あらすじ・感想まとめ

第19話 孤立 ALONE

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/episode.html
EP19 孤立
バッファローの森で老人の遺体が発見され、その息子が失踪するという事件が起きた。車椅子の老人に外傷はなく、死体の遺棄場所のまわりには、人の足跡も残っていなかった。

 お題は「未知の生物」。

 スカリーは医師の指示で予定より早く産休を取る事になり、スカリーの代わりに元経理のレイラ・ハリスンが新課員としてX-ファイル課に着任してきた。ハリソンは現場経験は無いものの、以前からモルダーたちと親しく、X-ファイル系の事件には詳細な知識を持っていた。

 二人はニューヨーク州の森の中で老人の変死体が発見された事件の調査を始める。現場には粘液が落ちており、また死体の顔には何かの薬品がかけられていた。二人は現場近くの屋敷を調べるが、ハリスンが行方不明となり、ドゲットも地面に仕掛けられていた罠に転落し、地下道に転落してしまう。

 スカリーはドゲット失踪を知り、仕事に戻り、死体に浴びせられていたのは爬虫類が使う毒液だと突き止める。またモルダーは一般人にもなったにもかかわらず、勝手に事件に首を突っ込み、すぐに件の屋敷の近くでドゲットのメダルが落ちているのを見つける。屋敷の主はスタンツという生物学者だった。スカリーはスタンツの論文を調べ、新型爬虫類の研究をしていた事を知る。

 ドゲットとハリスンは謎の生物が徘徊する地下道を脱出しようと悪戦苦闘していた。またモルダーは謎の生物がスタンツの屋敷に入り込んだのを見て、強引に屋敷に押し入り、スタンツを脅して地下道を見つけドゲットたちと再会する。そこに謎の生物が現われるが、ドゲットが撃ち殺したところ、スタンツの姿に戻る。

 結局ハリスンはX-ファイル課を離れる事になり、ドゲットは一人でX-ファイル事件を担当する事になった。


監督 フランク・スポトニッツ
脚本 フランク・スポトニッツ


感想

 評価は○。


 冒頭スカリーが産休でX-ファイル課を離れる事になり、モルダーもスカリーもいないX-ファイル課が超常事件を担当する、という、初期から見ていたファンとしては感慨深い話となった。モルダー&スカリーコンビでは無く、ドゲットとハリスンという新顔が現場を調べているシーンを見ると、X-ファイルはシーズン1から随分遠いところに来たものだ、とちょっとしみじみしてしまった。


 モルダーは前回(第18話「到来」)のラストでFBIを辞めたため、このままシーズン前半の失踪中の時期同様にドラマからフェードアウトするのかと思っていたら、消えるどころか一般人になったにも関わらず、相変わらず事件にグイグイ鼻を突っ込んでくるので意表を付かれた。モルダーは自称無職なので、立ち位置的にはローン・ガンメンと同じところに転落したという感じだろうか。途中、スタンツに名前を聞かれたとき、嫌っていた元上司名を借りて「アルビン・カーシュです」とかしれっと名乗るシーンはいかにもモルダーらしくて笑ってしまった。それにしても、モルダーがFBI本部見学ツアーの一員として建物に入り込み、そのままスカリーに会いに来る、という展開には、FBI本部の警備体制が心配になってきた。過去にスモーキング・マンがひょいひょいX-ファイル課のオフィスに訪ねてこれたのもむべなるかな、である。

 今回登場した謎の爬虫類は、姿がさっぱり見えなかったので画面からは正体がつかめなかったが、「Salamander Man」という名前で、つまり「サンショウウオ男」である。それにしても、マッドサイエンティストが新種の生物を開発し、人里離れた屋敷に近づく人間はどんどん罠に落として可愛い子供のエサにしている、という展開なら、怪奇ホラーとしてありがちながらそれなりにまともなのだが、「実は巨大サンショウウオは学者自身でした」という展開には意表を付かれるというより笑ってしまった。実験助手を生贄にして改造人間にしてしまいました、というのならばまだ納得も出来るが、何が悲しくて学者自身が人外のサンショウウオにならなければいけないのか。知能が向上するとか超能力が身に付くとかならまだアリだが、「毒を吐くサンショウウオに化ける能力」を身に付けてもね、という気がする。

 序盤の思わせぶりな伏線と後半の真相が上手く結びつかないのはX-ファイルのシナリオの得意技だが、今回もそのまたまたパターンで、冒頭に襲われた老人が病気なのに管理人の仕事をやめない理由や、やたら鍵をかけていることにこだわる意味などが、「科学者がサンショウウオ人間だった」という真相と全く結びつかない。多分『老人は森の魔物が人間社会に出ないように監視しているのでは?』とかミスリードしたかったのだと思うが、終わってみるとわけが解らなかった。


 今回は長くX-ファイルを見ていたファン向けの細かいネタが満載で、ちょっと嬉しくなった。まず冒頭スカリーが私物を片付けるシーンで色々取り出すが、それぞれ


・十字に組み合わさった硬貨=シーズン6・第4話「ドリームランド Part2」で入手
・タグ=シーズン3・第4話「休息」でスカリーが飼う事になった犬「クイークェグ」のタグ。このあと第22話「ビッグ・ブルー」でお別れすることに
・ドゲットにあげたメダル=シーズン4・第17話「MAX Part1」でモルダーからもらったもの


である。また新人レイラ・ハリスンが色々と過去の事件について語るが、


・肝臓を食べる云々=シーズン1・第2話「スクィーズ
・脱皮する異星人=シーズン6・第1話「ビギニング」
・地底に引きずり込む云々=シーズン5・第4話「迂回」
・南極でモルダーとスカリーが云々=映画版「ファイト・ザ・フューチャー」


となっており、色々とマニアを喜ばせにきていた。


 タイトル「孤立/ALONE」は、ドゲットとレイラ・ハリスンが地下で孤立したという事を示しているのだろうが、

・冒頭スカリーがいなくなってドゲットがX-ファイル課のオフィスにぽつんとしているところ
・ラスト、ハリソンが速攻でX-ファイル課をやめてしまい、ドゲットがまた一人になってしまったところ
・モルダーとスカリーが南極の想い出話で盛り上がっているのに、ドゲットは話に入れず寂しそうなところ


の方の意味ではないのかと思ってしまった。実のところ、カーシュに意地を通して転属を拒んだものの、頼りのスカリーがいなくなって心もとない、というドゲットの心境を表したサブタイトルではないのだろうか。