感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第14話「モンスター」

X-ファイル シーズン9 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html
放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】
 
※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

第14話 モンスター SCARY MONSTERS

 

あらすじ

 お題は「妄想の現実化」。

 スカリーの知人レイラ・ハリソンが、スカリーにX-ファイル関連だと言って、ある事件の調査を持ち掛けてきた。事件は、ある母親が自分の腹をめった刺しにして自殺したが、息子のトミー・コンロン少年は、母親は飼い猫共々「怪物」に殺されたと証言したという。ところが父親(ジェフリー)は否定し、以後息子を連れて山奥の一軒家には引きこもり、連絡もつかない状態だった。レイラは、知人であるトミーの祖母から様子を確かめて来るように依頼されていたが、スカリーはX-ファイルとは関係ないといってレイラを追い返す。

 しかしレイラは諦めず、ドゲットとレイエスを半分騙すような形でコンロン宅に乗り込む。トミーは無事に暮らしていたが、ドゲットは親子どちらの態度にも何か不審な物を感じ取り、確認が必要だと考える。直後車のエンジンの中に潜んでいた何かの生物が破裂して車が動かせなくなり、ドゲットたちはコンロン宅に足止めされてしまった。

 スカリーはレイラからコンロン家の死んだ猫の死体を無理やり送り付けられ、しぶしぶ解剖する。しかし猫は自分て自分の腹を食いちぎって死んでいたことが判明し、トミーの母親の「自殺」も、実は腹部に入り込んだ何かを取り出そうとして腹を刺したのではないかと推測する。

 コンロン宅では、トミーの部屋に全長数十センチの奇怪な虫のような生物が現れたり、地元の保安官そっくりの「何か」が襲い掛かってきたリ、と怪現象が続発する。さらにレイエスの腹部に何かが入り込み、レイエスは倒れてしまう。ドゲットはジェフリーを問い詰め、全てはトミーの想像が実体化したものだと聞き出す。子供の想像を止めることはできないので、ジェフリーは仕方なく周囲に危険の及ばないように、孤立した環境で暮らしていたのだった。

 ドゲットはトミーを止めようとして、逆に虫の大群に襲い掛かられるが、全ては非現実だと全く信じなかったため、無事で切り抜ける。ドゲットはトミーの前で家の床にガソリンをまき、火をつけて火事を起こす。トミーは恐怖のため失神し、怪現象は終息する。実はドゲットが撒いたのはただの水で、火事もまたトミーの妄想だった。

 結局トミーは精神科に収容され、想像力を押さえるために一度に十数台のテレビ画面の映像を見せられているシーンで〆。



監督 ドワイト・リトル
脚本 トーマス・シュノーズ


感想

 評価は○。

 幼い子供の妄想が実体化して周囲に恐怖現象を引き起こすという「恐るべき子供」たち系エピソード。雰囲気がなんとなく初期のX-ファイルを思い起こさせてくれて、実に懐かしい思いがした。シーズン9は品質が低い作品ばかりで辟易していたが、今回は久しぶりに出来のいい部類で、視聴しても失望せずに済んでほっとした。


 幼い子供の超能力が周囲の大人たちを恐怖に叩き込む、という設定は「トワイライトゾーン」の一エピソード(It's a Good Life(1961))を彷彿とさせたが、実際にスタッフはそのエピソードを意識して今回の話を作ったそうで、なるほどという感じである。元ネタではトワイライトゾーンおなじみのブラックオチだったが、本エピソードでは、ドゲットが超能力を持つ相手に「現実的なことしか信じない」頑固さと、相手の力を逆に利用した方法で対抗する、というクライマックスとなっており、納得できる展開だった。脚本のトーマス・シュノーズは、以前に第5話「蠅の王」という箸にも棒にもかからない不発エピソードを書いた人物だが、今回の話は出来が良く、ちょっと見直してしまった。

 今回は意外なゲストとして懐かしのレイラ・ハリソンが登場して驚かされた。レイラはシーズン8・第19話「孤立」で一回だけX-ファイル課で働いた超常現象マニアのFBI職員で、モルダーとスカリーを信奉し、二人が関わったあらゆるX-ファイル事件をすらすら引用できるという、ある意味ローン・ガンメン級の濃いキャラである。「孤立」でドゲットと事件を捜査した時は、やたらと過去のX-ファイル事件の話を持ち出してドゲットをいらつかせたが、今回もやたらと「今回はあのX-ファイル事件に似ている」云々と知識をひけらかすあたり、全くキャラが変わっていなかった。というか、恋人に猫の死体を掘り出させて、さらにスカリーの家に真夜中に届けさせて解剖を強要するあたり、前回よりも一般常識が欠落したダメ人間化している感もあった。

 劇中で、スカリーが真夜中に自宅の台所で、レイラに送り付けられた猫の死体を解剖する場面がちょっとユーモラスだったが、さらにスカリーが(おそらく)猫の腐臭に閉口しながら解剖しているのに、身につけているエプロンには「良い匂い」と書いてあるのが少し楽しかった。

 コンロン宅があるのはペンシルベニア州フェアホープで、劇中の描写からすると物凄い山の中だが、にも関わらず、ドゲットたちが「金曜日の夜を潰された」とか愚痴りながら仕事の後に車で乗り付けたり、ワシントンD.C.にいたはずのスカリーがあっという間に到着していたので、いったい場所はどこら辺りなのかと混乱させられた。地図で調べてみると、ワシントンD.C.から250Km離れており、車で2時間45分で到着できる距離、とはじき出された。アメリカ人は250キロ離れた場所まで夜中に平気で運転していくわけで、凄いガッツだと思わされたが、車社会のアメリカでは当たり前のことなのだろうか。

 今回はラストで、レイラが「今回の事件はモルダーよりもドゲット向きだった。ドゲットが超常現象をまるっきり信じないのが幸いした」と、本人は褒めているつもりだろうが、どう考えてもドゲットをバカにしているような称賛をするのが妙におかしかった。またレイラがX-ファイル課の部屋の壁に貼られた「I WANT TO BELIVE」ポスターを見て懐かしそうな顔をするが、視聴者的にも物凄く久しぶりに見た気がする。

 オチは、トミーの想像力の芽を摘むための治療として、何十台ものテレビ画面の前に座らせて別々の映像を一気に見せる、という事を行う。やはりアメリカでも日本同様に「読書は想像力を伸ばす/テレビばかり見ていると馬鹿になる」といったことが言われているのだろうか。


 今回のサブタイトルの原題「SCARY MONSTERS」とは「恐ろしい怪物」の意味である。視聴前は「スカリーの怪物」とかいう意味だと誤解して、スカリーが怪物を生み出す恐ろしい話かと妄想していたが、スカリーの綴りは「Dana Scully」であり、全く関係は無かった。英語がまるでできないと妙な想像を膨らませてしまうものだと自分に苦笑してしまった。

シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ