感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第18話「サンシャイン・デイズ」

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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html
放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】
 
※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

第18話 サンシャイン・デイズ SUNSHINE DAYS

 

あらすじ

 お題は「超能力者」。

 カリフォルニア。二人の若者が、ある住宅の中が、数十年前のヒットドラマ「ゆかいなブレディ家」の舞台そっくりだと知り、無断侵入して見物するが、一人は途中で退散する。そして家に残ったもう一人は、突然空から落ちてきて死ぬ。

 ドゲットとレイエスがこの事件の捜査に当たることになり、若者の証言で問題の家を訪ねるが、住人のオリバー・マーティンは何も知らないと言い、また家の中はブレディ家とは全く違っていた。しかしドゲットは家の屋根に修理した痕を見つけ、被害者は家の中から屋根を突き破って放り出されて死んだ、という突拍子もない結論に達する。またスカリーは検死で死体が電気を帯びていることから、超常現象が関係しているのではと指摘する。

 やがて二人目の若者がやはりオリバーの家を調べようとして墜落死する。スカリーたちは、超能力の研究者リーツ博士の証言で、オリバーはかつてアンソニー・フォゲルマンという名前で、32年前の1970年に、7歳で強力な念動力を使えたことを知る。リーツは半年同居して研究したものの、やがてアンソニーの能力が消えてしまったため、研究は中断したという。

 スカリーたちはオリバーの家に行き、オリバーの念動力が復活しているばかりか、周囲の空間を自由に作り替え、例えばテレビドラマの舞台を再現できる力まで身につけていることを知る。スカリーは、オリバーが超常現象の動かぬ証拠だと喜び、ワシントンD.C.へ連れて行き、スキナーや科学者の前で念動力を披露させる。

 ところが直後オリバーは倒れ、内臓が異常をきたしていることが判明する。オリバーは超能力を使うほど体が衰弱し、このまま力を使えば死ぬ運命だった。ドゲットは、オリバーの力は孤独が原因で発現すること、30年前にリーツ博士と出会って寂しさが無くなったために力も消えたこと、を見抜く。リーツはオリバーに、もう力は使わないように諭し、これからは一緒にいると語りかける。スカリーは超常現象の証明は諦め、しかし、この9年間で超常現象より大事なことを教わったとすっきりした顔で言う。


監督 ヴィンス・ギリガン
脚本 ヴィンス・ギリガン


感想

 評価は△。

 X-ファイルの通算200話目に当たる記念回だったが、おとぎ話系のファンタジー人情物だったため、心底がっかりさせられた。


 今回のエピソードは、番組のエグゼクティブプロデューサーで、シナリオライターとしても活躍しているヴィンス・ギリガンが監督・脚本の両方を担当している。ギリガン監督作品は、シーズン7・第21話「三つの願い」以来である。「三つの願い」は、当時X-ファイルがシーズン7で打ち切りという噂が流れていたため、ギリガンがシリーズ卒業記念として監督も担当したそうだが、今回は間違いなくシーズン9での番組打ち切りが決まっていたため、真のお別れ回として監督を務めたとのことである。


 「三つの願い」は、X-ファイル世界に何でも三つの願いを叶えてくれる精霊が現れて騒動を引き起こすという、おとぎ話系のコメディストーリーだったが、今回もほぼ同じノリだった。

 序盤は若者たちが正体の知れない変な家に入り込んだ報いで怪死する、という方向性の見えない展開でサイコホラー的な物かと予想したのだが、何故かドゲット&レイエスは「人が屋根を突き抜けて飛び出して墜落死するなんて、こりゃおかしい」とばかりに、妙にのびのびした明るい雰囲気で捜査を始め、このあたりで様子がおかしくなってくる。

 やがて怪異の正体は元超能力少年の住人だと判明するものの、今度はブレディ家の家が再現されたり、素敵な草原が周囲に広がったり、と、殺人事件の捜査のはずが深刻さが無くなって、どんどんおとぎ話化していってしまい、「あれ、人が二人も死んでいるのにそれはもう問題ないことに?」となって、見ているほうがどんどん不安になってきた。

 終盤になると、ワシントンD.C.に連れてこられたオリバーが、コミカルなBGMと共にスキナーを念力で空中に持ち上げて、スカリー&ドゲット&レイエスがそれを見て朗らかに笑っている、と、もうコメディドラマと化してしまい、このあたりでこの話は何のつもりなのかと失望甚だしかった。ドゲットたちは自分たちが二人が死んだ怪死事件の捜査をしていたことを完璧に失念しているとしか思えないのだが、それはFBI的にどうなのだろうか。

 ラストは元超能力少年とその恩師的キャラが親子的な愛情で結ばれて感動的に〆、と言いたいところだが、見ているこちらとしては、安くまとめたオチに全く不満足だった。結局のところ、最初から最後まで筋の通ったコメディとして仕上げていた「三つの願い」と比較すると、はるかに低い評価となってしまった。


 しかし、まあ、多少は面白く感じるところも無くもなく、例えば序盤にドゲット&レイエスがオリバーの家を訪問した際、

ドゲット:(まずゴミ箱を開けて)アッハーン? →(レイエスに物を渡し)これ持ってて。→(屋根を覗き見て)アハアハーン?
レイエス:なぁに? アハアハって?

とかいうコントみたいなやりとりは多少は楽しかった。。

 また終盤、スカリーたちがオリバーをFBI本部に連れて行き、スキナーを念動力で空中に釣り上げて宙返りさせてみせると、スキナーが喜色満面で「カーシュに見てもらう。長官を引っ張ってきてその目で見てもらう。やあ大変だ。これでXファイルは閉鎖できない。永遠に続けることになるな。」とか言い出して「X-ファイル課は永遠だ」とか宣言するので吹いてしまった。番組がもうすぐ打ち切りで終わることを知っていると、別の意味でも妙に笑えてしまった。


 劇中で何度も話題にされる「ゆかいなブレディ(ブレディー)家」とは、原題を「The Brady Bunch」という、1969年から1974年まで全5シーズン放送されたコメディドラマで、アメリカでは物凄い人気だったということである。このエピソードの放送が2002年5月だが、(ドゲット以外の)全キャラクター間で話題が共有できているところを見ると、アメリカ人にとっては常識レベルの番組なのかもしれない。


 今回はラストでドゲットとレイエスが指を絡めて手を握り合うのだが、どういう流れでこんなに仲睦まじいシーンを披露したのか、どうもよく解らなかった。お別れ記念だから、スタッフから視聴者への大盤振る舞いというかそういう意味だったのかもしれない。

一言メモ

 サブタイトルの原題「SUNSHINE DAYS」とは、ドラマ「ゆかいなブレディ家」の中で歌われた曲「It's a Sunshine Day」から来ているみたいです。
他に関連するものが見当たらないし。

シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ