感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第19話「真実 Part1」

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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html
放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】
 
※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

第19話 真実 Part1 THE TRUTH

 

あらすじ

 お題は「政府の陰謀、異星人の地球侵略」。

 モルダーはとある情報を得るため、マウントウェザーに有る政府の秘密施設に潜入するが、発見されてノエル・ローラーに殺されそうになり、逆にノエルを突き落として殺してしまう。

 スカリーとスキナーは軍から知らせを受けて駆け付け、ようやくモルダーと再会した。モルダーは失踪していた間、ニューメキシコ州で調査をしていたと言い、その裏付けを得るため基地に侵入したと説明する。モルダーはノエルは無敵兵士なので死んだはずがないと言うが、軍は数十人の証人の証言をもとに、モルダーを殺人で告発していた。

 軍はFBIに圧力をかけ、FBIの人間だけで軍事裁判を開いてモルダーを裁かせ、有罪にさせようと企む。モルダーの弁護は、モルダーの指名でスキナーが当たることになった。スキナーは証人として、スカリー、ジェフリー・スペンダー、マリタ・コバルービアス、を次々と召喚し、政府と異星人の陰謀についての証言を引き出すが、異星人云々を全く信じない検事に対しては何の意味も無かった。 →第20話「真実 Part2」へ続く。



監督 キム・マナーズ
脚本 クリス・カーター


感想

 評価は○。

 最終回直前回。9シーズン10年間続いてきた番組の最終エピソードという事で、シーズン1から展開してきた「政府の陰謀&異星人の侵略」テーマ、いわゆる「神話」の総決算が開始され、わりと見ごたえがあった。


 今回一番嬉しいのは、なんといってもモルダー(デヴィッド・ドゥカヴニー)の一年ぶりの帰還である。ドゥカヴニーはシーズン8の最終回(第21話)「誕生 Part2」を最後に番組を完全降板してしまい、番組上では「自ら身を隠した」という設定で不在をごまかして(?)いたが、最終回になんとか帰ってきてくれた。ドゥカヴニーが、何故一度縁を切った番組に戻ってきたのかは不明で、スタッフと和解したのか、はたまた大枚のギャラを提示されたのか、そのあたりの事情は定かではないが、やはりモルダーがいると雰囲気が違い、モルダーがいてこそのX-ファイルだと改めて実感させられた。

 またモルダーの復活と合わせて、過去に登場した様々なキャラクターたちも続々と再登場してくれて、驚きと嬉しさでもう半笑い状態となってしまった。ジェフリー・スペンダーはついこの間の第16話「ウィリアム」以来だが、その他に、実験台にされててっきり死んだと思っていたマリタ・コバルービアスや、超能力少年ギブソンなど、長いストーリーの中でもはや忘れられていたキャラたちが次々と蘇ってきて、この番組の歴史の長さを実感させられた。

 しかも、さらなる豪華ゲストとして、既に死んでしまっているクライチェックやミスターXまでが(モルダーの幻覚的な形で)駆け付けてきてくれており、完全にX-ファイルのキャラの同窓会状態で、スタッフのサービス精神ここに極まれり、という感じだった。あとはモルダーと仲の良かったディープ・スロートが戻ってきてくれると嬉しかったのだが……


 しかし、さすがにこれだけのキャラを再登場させて、いつものように自然にストーリーを展開させるのは不可能と判断したのか、今回は「モルダーの裁判」という形を取り、各キャラが「証人」として各人が知っている政府の陰謀/宇宙人の情報をとうとうと述べ立てる、という形になっている。いくつかは過去のエピソードで明かされた物もあったが、逆に「そんな設定は聞いたことも無い」という初耳な物も結構あり、結構驚かされた。


 特に第一の証人スカリーの発言はそれが顕著で

・地球の生命は火星から飛来した隕石でもたらされた
・隕石に地球外ウイルスも含まれていた
・ウイルスは有史以前の原人にも感染し、その体を別の生物=異星人に変えた
・しかし35,000年前の氷河期に原人/異星人は滅びてウイルスは仮死状態になった
・その後ウイルスは地下のブラックオイルという石油層で繁殖した
・ウイルスは知能も知覚もあり、1947年にニューメキシコに墜落したUFOと連絡を取り合っていた
・1947年、政府は墜落したUFOから地球外テクノロジーと、異星人の地球「再入植」計画を知った
・政府は人と異星人の交配種を開発していた。目的は異星人の奴隷として働かせるため。

とまあ、どこから出てきたのか、という新情報のオンパレードである。

 ブラックオイルと石油の関係はシーズン8の第18話「到来」で唐突に持ち出された設定で、スタッフはオイル繋がりのシャレのつもりなのかと思っていたが、本気で「ブラックオイル=実は黒いのは石油だった」という設定に確定した模様である。まさかの展開としか言いようがなかった。


 さらに、懐かしのマリタ・コバルービアスも証言してくれたが、どうにも理解しがたい部分があって困惑してしまった。

・秘密組織「シンジケート」は地球外ウイルスのワクチンを異星人に隠して開発していた
・シンジケートは異星人は全てウイルスに感染していると信じていた
・しかし実は反乱軍と言われる勢力は別だった
・シンジケートは反乱軍のせいで幹部を殺されて壊滅した

という話だが、「異星人がウイルスに感染」というくだりが理解不可能である。ウイルスというかブラックオイルは、シーズン6の第11話「ファイト・ザ・フューチャー Part1」でカサンドラ・スペンダーが「異星人の生命の源」とか証言していたのだが……、まあ、その反面、エイリアン反乱軍はブラックオイルを恐れて顔の開口部を全てふさいでいるとかいう話も有り、ここに来ても「結局正解はどれなのか」感が払拭されていない。スタッフも色々設定を展開させすぎて、整合性が取れなくなっているのだろうか。それともこちらの理解力が足りないのだろうか。


 という事で、なんだかよく解らないまま、ついに次回の最終回を迎えることになってしまうのだが、ここに来ても「無敵兵士」の説明は無く、シーズン8で連呼していた「代替人間」という設定は出てこず、ウィリアムやモルダーが人類の救世主だとかいう話だとか、エイリアンが人類に聖書やコーランをもたらしたという話も未タッチである。次回で本当に全ての真相が解明されるのだろうか。


一言メモ

 最終回は、アメリカのテレビ放送では2時間スペシャルとして放送されたが、レンタル版では、1時間×2話の前後編となっている。単純に二つに分けただけではなく、レンタル版用に別カットが撮影された。

シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ