【ゲームブック】「ティーンズ・パンタクル」(東京創元社:1990年):立ち昇る1980年代学園バトル物テイスト

パンタクル1 メスロンサーガ (幻想迷宮ゲームブック)

ティーンズ・パンタクル (創元推理文庫) 単行本 1990/3
鈴木 直人 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4488909035
あたしの名は大島いずみ、半年前にこの全寮制の学校、洋貝台学園に転校してきた。実はあたしには霊媒の血が流れていて、念力で人を気絶させるぐらいのことはできてしまう。でも、そんな力があることは隠して、みんなと仲よくやっている。これでけっこう人気者なのだ。でも、楽しく平和な学園生活も、氷室京子という、美しい転校生が来てからというもの、暗い影がさし始めた。学園になにやら異様な雰囲気が標いだしたのだ…。スーパーアドベンチャーゲーム


単行本: 332ページ
出版社: 東京創元社 (1990/03)

 鈴木直人氏の伝説の(?)ゲームブック「ティーンズ・パンタクル」をついに入手しました。この本は中古は探せばそれなりにあるのですが、ゲームブックブーム末期の1990年発売で発行部数が少なかったのか、とにかく高い! 一冊5000円とか平気でするので、今まで躊躇していたのですが、ついに意を決して購入してしまいました。



鈴木直人氏とは

 本書の作者・鈴木直人氏は、デビュー作「『ドルアーガの塔』三部作」(1986年)がいきなり日本のゲームブック史上に残る傑作だったという伝説的ゲームブック作家。その鈴木氏がブーム末期に発売したのが、現代(1980年~1990年初頭というところ)を舞台にしたこの「ティーンズ・パンタクル」です。



●お話

 主人公の女子高生「大島いずみ」は、霊媒の血を引くため常人の目には見えない怪異を見る力があり、念力でそういったものと戦うことができます。また幼いころから修行してきた剣道も相当の腕前で、段位は初段ですが、秘めたる実力は五段はあるという、つまり妖魔とか悪霊とかと戦うために生まれてきたような戦士キャラという設定です。

 そんないずみの周りでは、友人がいきなり失踪したり、妖怪がいきなり襲撃してきたリ、と次々と怪事件が発生するのでした……



●1980年テイスト

 このいずみの設定、いかにも1980年代だなぁという感じがします(発売は1990年ですが、執筆したのは1980年代でしょう。以下その想定で書いてます)。どこが80年代テイストか、という具体的な箇所が指摘できないのですが、2010年代のラノベヒロインにこんなキャラいませんよね。名門霊媒一族出身というところはともかく、剣道が得意なヒロインというのはいないよなぁ、という感じ。しかしこの古い感じがなんともたまらないというか、やる気をそそられます。



●ゲームシステムは鈴木風

 スペックは「全332ページ。パラグラフ数400。戦闘あり。フラグチェック有り」という本格派。開始早々バトルに突入するなど、流したパラグラフが無く、パラグラフごとにみっちりストーリーが詰め込まれています。舞台は基本的に学校の中ですが、選択肢が「図書館に行くか? 友人に会いに行くか? 食堂に行くか?」とか「本はどれを読む? 以下の8冊の中から2冊選べ」とかとにかく迷う選択が多い。またフラグチェックが何個もあるし、軽く読んだ限りでも、どのフラグを立てたかでストーリーが4パターンくらいあるらしい。とにかく濃いです。さすが鈴木直人作品。



●先が楽しみではある

 こういう学園バトル物ってゲームブックでは意外と無いような気がします。現在のラノベで学園バトル物が山ほどあるのと同様、読者に親近感を持たせやすいから、もっとあっても良いような気がするのですけどね。なんとなく1980年代OVAって感じの作品ですが(多分、最後には学校の地下に魔界に通じる魔方陣が隠されていて、大魔王を召喚して世界を滅ぼすのだ、とか言い出す予感)、早く先に進めたくてワクワクが止まりませんよ。


※姉妹作
パンタクル2 メスロンサーガ (幻想迷宮ゲームブック)