【ゲームブック】「デッドライン」(JICC出版局:1987年)プレイ開始。子供向けでないハードボイルド風味が新鮮

デッドライン (アドベンチャーノベルス)

https://www.amazon.co.jp/dp/4880632449/
デッドライン (アドベンチャーノベルス) 新書 1987/5
北 鏡太 (著), INFOCOM


本書は、アメリカのインフォコム社より製作・発売された、パソコン用ゲームソフト『デッドライン』を基にしたアドベンチャーノベルスです。パソコンゲームの楽しさに読み物の面白さをプラスした、新しい形のエンターテイメントです。


『デッドライン』は、インフォコム社のパソコンゲーム・ミステリーシリーズの1作に当ります。原作のゲームでは、大富豪ロブナー氏が自室にて死体で発見されたことに端を発した、ロブナー邸での事件を解決してゆく探偵小説だてになっています。本書では、その原作での事件と、時を同じくして発生した連続殺人事件とを主人公のロス市警警部補ケニーが追い、両方の事件を解決してゆくという内容で、その趣も警察小説風となっています。

 このゲームブックは、ゲームブックのリプレイやレビューでお世話になっている「冒険記録日誌」http://www.enpitu.ne.jp/usr7/79672/ の管理者「山口プリン」さんが、最近のプレイ記録で絶賛していたため、いてもたってもいられなくなり購入しました。確かになかかなの優れものでしたねぇ。



●デッドラインとは

 JICC出版局(現:宝島社)は、1980年代後半のゲームブックブームの際には「アドベンチャーノベルス・シリーズ」というブランドでゲームブックに参入していましたが、そのラインナップが渋く、当時の「アメリカ製」の「パソコンゲーム」をゲームブック化するという冒険ぶり。ラインナップには「ゾーク」や「ウルティマ」といった、1980年代にパソコンゲームをプレイしていた層なら聞いたことのあるような作品がずらりと並んでいます。

 この「デッドライン」もその一つで、「インフォコム社」(!)の「テキストアドベンチャー」(!!)をゲームブック化したもの。テキストアドベンチャーとは、画面に文字しか出てこない、まさにパソコンで読むゲームブックといった類のジャンル。

 原作はこんな感じだったようです。

The Infocom Gallery: Deadline
http://gallery.guetech.org/deadline_grey/deadline.html

謎を解決するために十二時間。1つの偽の動き、そしてキラーは再び立ち往生する。


これは、「ホーム・コンピューティングにおける最新の熱狂の一部」(TIME誌)、「プログラミングの驚異的な偉業」(ニューヨークタイムズ)、「1983年のベストアドベンチャー」(電子ゲーム)と呼ばれています。
※上記内容は機械翻訳

 相当評価は高かったようですね。


 JICCのゲームブックは内容が評価されているのか、中古でも5,000円台が当たり前という高値で取引されていて、今まではとても手を出す気になれなかったのですが、今回は思い切って購入した次第です。



●本書のスペック

 「全260ページ。パラグラフ数214。サイコロ振りなどは無し。フラグチェック有り」というところ。パラグラフを通るたびに、「アルファベットの■にチェックを入れること」と指示され、時折「アルファベットの■を既にチェックしていれば**番へ、そうでなければ**番へ」と指示される形式です。メモ必須型という事ですね。

 作品の雰囲気ですが……、これが渋いというかハードボイルドというか大人向けというか。主人公はロスアンゼルス警察に勤務する41歳の警部補。一人称は「俺」で、現場叩き上げで礼儀とかいう概念とは縁の遠い、いかにもの「デカ」という感じのキャラクター。エリートで年下の上司とはそりが合わず、独り言で「あん畜生」とか「くたばりやがったら」とか毒づく、というのが日常の姿で、警察小説とかではともかく、ゲームブックの主人公としてはかなり少数派でしょう。

 またゲームの雰囲気がこれまた結構大人で、しょっぱなから「街娼」が登場したり、「被害者の体内に残された精液」とかいう言葉が出てきたり、イラストに裸の女性がバーンと登場したり、と、少なくとも小学生読者あたりは全く想定してないっぽいですね。まさに大人の娯楽。

 内容は意外に一本道で、選択をしないまま「次に進む」だけというパラグラフが結構あります。何度も何度も分岐させて話のバリエーションを作るタイプではなく、読み物であることを重視している様子がうかがえます。



●ファーストプレイは

 主人公ケニー警部補は、大富豪の自殺事件の調査にビバリーヒルズに乗り込んだ。事件現場をざっと見る限り自殺としか思えないが、屋敷の中で何かしら怪しげな手掛かりも発見した。ところが捜査途中で全く別の事件も発生し、それはケニーが過去に関わった事件に関係しているようだった。途中色々あったものの、ケニーは容疑者を一人一人当たっていくことにした。しかし、選択肢をミスった結果、ケニーは捜査途中で無念の死を遂げることになってしまった……



●手ごたえは結構良い

 探偵小説タッチの文章、結構すれた感じの主人公、と雰囲気は十分。また「XXを調べる」といった細かい選択肢が無く、ストーリーを進めていると自然に(?)手掛かりが集まってくる、という感じ。悪くありません。ファーストプレイに限れば、評価は「〇」です。もう少しやりこんで早く事件の全貌をつかみたいところですね。