【コミック】死者が死を受け入れるまでの感動の物語「HOTEL R.I.P.」

HOTEL R.I.P. 1 (秋田レディースコミックスデラックス)

 8月16日にコミック1巻が発売された「HOTEL R.I.P.(ホテルレストインピース)」(西倉新久)は、地味なのだが、毎回ちょっと泣かせに来てくれる、結構お気に入りの漫画である。

 ちなみに、タイトルのR.I.P.とは「Rest In Peace」、安らかに眠れ、という意味である。

死者の心残りを解消するホテル

 「HOTEL R.I.P.(ホテルレストインピース)」は、一見ごく普通の豪華ホテルにしか見えないが、実は死後の世界、現世とあの世の途中に存在する。ここには「不慮の事故で死に、現世に心残りがある人間」が客としてやって来る。宿泊客たちは、このホテルで自分の未練を自覚し、それを解消することで、ホテルからチェックアウト、つまり成仏していく。

 しかし、話はそう簡単ではない。ホテルの宿泊客たちは、不慮の死(事故死など)ゆえにそもそも自分が死んだことがなかなか受け入れられない。しかも、ホテルの支配人・迎は「同じ日に死んだ者は、強引にでも相部屋にする」というルールを作っており、客は死を受け入れる間もなく、赤の他人と同居生活を余儀なくされてしまう。

 宿泊客は、死んだことのショックを消化しきれないうちに、赤の他人と顔を突き合わせることになり、どうしてもギスギスした関係になってしまう。しかし、やがてそんな生活の中で、両者は互いに心残りを解消しあい、最後はかき消すように消えて成仏する。その過程は結構泣かせるものがある。絵はイマイチなのだが、ストーリーがそれを補って余りある魅力的な漫画である。


始まりはレディスコミック

 コミック第1巻は「秋田レディースコミックスデラックス」から発売されている。これは何故かというと、この漫画はまず最初に秋田書店の『レディスコミック雑誌』のエレガンスイブ2016年6月号に掲載され、好評だったのか9月号~12月号に連載されたからである(最初に読んだ時には、この絵とこの内容で何故エレガンスイブに載っているのか?と仰天した)。

 その後、多分編集部の人が、「この漫画はレディコミ雑誌に載せるのはちょっと違うのでは……?」という正しい判断をしたのか、以後秋田書店WEBコミックサイト「Champion タップ!」での連載に移行している。

西倉新久 | HOTEL R.I.P. | Champion タップ!
http://tap.akitashoten.co.jp/comics/hotelrip

 WEBコミックと紙媒体とどちらが作品にとって得なのか、というところは気になるものの、少なくともこの作品はレディコミから移籍して女性以外の目にも触れたほうが良かったと思っているので、移籍賛成派である。


21世紀の「死神くん」みたいな

 この漫画を読んでいると、1980年代に連載されていた「死神くん」(えんどコイチ)を思い出してしまう。
 
死神くん 1 (ジャンプコミックス)
 
 「死神くん」は、死期が近づいた人間の前に死神が現れて死を予告し、昇天するまでを描くヒューマン物だった。この作品もまた、毎回死を告げられた人間たちが、それを受け入れていくまでの物語が結構感動的に描かれていた。(ちなみに話は泣けるが、絵はイマイチというところまで良く似ている)。

 ホテル「HOTEL R.I.P.」は21世紀に甦った「死神くん」という感じがする。

という事で地味に好き

 この漫画は、本格レディコミ雑誌のエレガンスイブではひたすら浮いていたが、変な連載の多いChampion タップ!では、しっくりと溶け込んでいる。コミックが出たのだから、それなりに人気があることも間違いない。地味なのだが、雰囲気が好きなので、末永く続いてほしい漫画ではある。
 
 
tap.akitashoten.co.jp