感想:アニメ「ナイツ&マジック」第13話(最終回)「Heaven & Earth」


TVアニメ『ナイツ&マジック』OP主題歌「Hello!My World!!」(アニメ盤)

ナイツ&マジック│TVアニメ公式サイト http://knights-magic.com/
放送 BS11。全13話。

【※以下ネタバレ】
 

第13話(最終回) 『終章 Heaven & Earth』

 

あらすじ

 エルは飛竜戦艦ヴィーヴィルをおびき出すと、油を浴びせて点火し火だるまにしてしまう。予想外の事態に狼狽したヴィーヴィル側は、ついに奥の手「マキシマイズ」を発動し、あふれ出るマナがバリア状になってヴィーヴィルを覆いつくした。しかしエルはイカルガでバリアを突破して攻撃を加え、その内にヴィーヴィルは負荷に耐え切れず自壊を始めてしまう。

 ヴィーヴィルの指揮官ドロテオは、せめてエレオノーラを道連れに死のうと突撃するが、エルたちに阻まれて果たせず、ヴィーヴィルは墜落爆発した。旧クシュベルカ側はジャロウデク軍に完勝して首都を奪回し、戦いは終わった。エレオノーラは正式に戴冠し、新生クシュベルカ王国の女王となった。

 エルたちはフレメヴィーラ王国に帰還し、王から褒美として専用のラボをもらう。そしてエルがこれからもっとすごいシルエットナイトを作るぞ! とか燃えているシーンで〆。


脚本:横手美智子/絵コンテ:河本昇悟山本裕介/演出:重原克也/作画監督:入江 篤、小島 彰、酒井秀基、柴田篤史、谷川政輝、米澤優


感想

 このアニメ最高の出来の回。今までは巨大ロボット物のくせにロボのバトルシーンがまるで迫力がなく、「もうロボットバトルの演出をできる人間は絶滅したのか……」と嘆いていたのですが、今回は何故か気合が入りまくりで、特にエドガー対グスターボの橋の上の戦いは、何故今までこれくらいやらなかったのかと言いたくなったレベル。まあラストに魅せてくれたから良しとするか。

 エルが墜落するヴィーヴィルをイカルガで下から支えるシーンは、「逆襲のシャア」のパロディですかな。


 まあ、予想外にレベルが高い回で、最後にグッと印象が良くなりました。


総括

 評価は○(まずまず面白かった)。

 昭和アニメでは当たり前に存在していた「巨大ロボット物」も、21世紀にはもはや希少な存在と化していますが、そのジャンルの新作がネット発の「なろう」小説を原作にして登場。巨大ロボにはうるさい昭和オタク的には、「なろう」小説発と聞いてこれはどうかなぁと思ったのですが……、ふうん、まあ、最終的には悪くなかったかな。

凄腕プログラマーにして重度のロボットヲタク、倉田翼。
異世界でエルネスティ(エル)として転生した彼は、運命を揺るがす事態に遭遇する。
「ロ、ロボットだぁ!」目の前に現れたシルエットナイトに心を奪われた彼は、
ナイトランナーを目指して騎操士学園に入学。
持ち前の知識とプログラマーの才能を活かし、学園中にその名を響かせていく。
平和な学園生活を送るエルだったが、恐るべき魔獣の脅威が静かに迫りつつあった。

●始まりは異世界転生

 現代日本。有能なプログラマー倉田翼は巨大ロボに目が無く、趣味でロボのプラモデルを山ほど作っていた。しかし交通事故により、若くして亡くなってしまう。

 異世界。幼いエルネスティ・エチェバルリア(エル)少年は、この世界最強の兵器が「シルエットナイト」と呼ばれる人型の巨大メカであることを知って狂喜し、自分もシルエットナイト乗り「騎操士/ナイトランナー」を目指すことを決意する。そしてエルは成長して騎操士学園に入学すると、自ら理想のシルエットナイトを求めて開発にも着手していく……

 といった感じで、無理なく21世紀に巨大ロボ話を復活させています。


 この作品は、異世界転生物のお約束(?)の、主人公の転生時ボーナスというものは特に無く、主人公が並外れた超人だとか、前世の知識をひけらかして優位に立つとか、そういう描写が無いので、まずそこが取っつきやすくて良かったですね。まあエルが頻繁に「ロボット」という単語を口にしたり、異様にプログミング的なことに強い、というシーンは有りますが、特に前世を強調したりはしないので、転生設定なしでも成立しそうな雰囲気でした。



●開発、開発、また開発!

 面白いというか、特殊というかは、この作品は巨大ロボが出て来るのに、ロボットバトルに主眼を置かず、「新型機の開発」がメインテーマだったこと。エルが「こういうアイデアはどうでしょう」と提案して、技術者がそれを実現して、今までにないコンセプトの機体がどんどん生まれて、王様たちがひたすら感心する、というのが基本の流れ。

 正直、「手をもう二本増やす」とか「人馬型にする」とか、そういうことを過去何百年もの間、技術者たちは誰も考えつかなかったのか?と突っ込みたくなりますが、エルを持ち上げる話なんだから仕方ないか……(※ちなみに、このあたりの新型機は「それはアシュラテンプルやん」とか「プロマキス懐かしい!」とか突っ込まれるのを待っているとしか思えない……)



●ひたすら薄いキャラ描写

 さて、このアニメ、新型メカの開発には時間がかかるため、さらっと「あれから○か月が過ぎた……」と流す無造作なストーリー展開がウリ(?)で、メカが次々と開発されるのは良いのですが、その分人間の描写が弱かった……

 主役のエル以外はレギュラーキャラと言えども「幼なじみ/騎士/技術者」という典型的な役目しか振られておらず、個々のキャラクターを印象付けるようなセリフもエピソードも何もなし。最初から最後まで各自の役割のテンプレ的な言動に終始していたため、最終回までロクに名前も覚えられやしませんでした。ホント、最初から最後まで、ただひたすら「エルと巨大ロボの物語」でしかないという……



パイロットと博士役とヒロインを兼務

 しかしまあ、その分、主役のエルのキャラクターが濃いのなんの。売れっ子高橋李依が声を担当する、女の子と見まがうばかりの美形キャラで、ひたすらより強いロボットを開発するのが生きがいというマッドサイエンティスト気質。

 戦場でも発言を聞いていると「侵略者が許せない」とかいうノリではなく、単に自分のメカか活躍できるのがうれしくてしょうがないとしか聞こえない。始終ニコニコして人当たりは良いのですが、多分頭の中では他の人間の事など(生き死にも含めて)どうでも良いと思っているに違いないタイプです。

 でもまあ、見た目可愛いし、高橋李依声だし、前述のとおりエル以外のキャラはいてもいなくてもどうでも良いような影の薄さでヒロイン達も何の存在感も無いので、いつの間にか「エル君が居れば幸せ」的な状態になっていました。そら、ヒロインを差し置いて、エル君抱きまくらが発売されるのも解るわぁ。


ナイツ&マジック エルネスティ・エチェバルリア ピーチスキン 抱き枕カバー 160cm50cm
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●だるい展開、しかし……

 そんなわけで、1~8話までは「エル君の新型機開発物語」に終始し、特に面白みも無いまま展開。9話目から国家間の戦争にエル君たちが関わる話になっていくのですが、これも話の起伏に乏しく、昭和の戦争ロボアニメを見慣れていた世代からすると、物足りなさが凄くて評価は低めでした……

 「うう、このままラストまで《エル君かわいい》だけのアニメで終わりか……」とか諦めていましたが、最終回13話は唐突にスパートがかかり、敵の巨大メカと一大バトルをするという昔のロボアニメみたいなノリが結構勢いが有り、ラストでいくらか挽回しました。


●最終評価

 まあ、結局「巨大ロボアニメ好き熱狂の作品」とまでは行きませんでしたが、そこそこ頑張ったんじゃないでしょうか。第二期が有ったら見てあげても良いくらい、には評価できましたよ。
 
 

ナイツ&マジック


銀の騎操士(きそうし)、異世界に舞い降りる。

凄腕プログラマーにして重度のロボットヲタクの青年が転生したのは、巨大ロボット「幻晶騎士=シルエットナイト」が大地を揺るがす騎士と魔法の異世界だった!?

エルネスティ・エチェバルリアとして生まれ変わった彼は、豊富なメカ知識とプログラマーとしての才能を活かして、理想のロボット作りをスタート。だが、その行動が予期せぬ事態に発展して……!?

ロボットヲタクの野望が、異世界を変える!!




制作会社
エイトビット



スタッフ情報
【原作】天酒之瓢ナイツ&マジック」(ヒーロー文庫主婦の友社刊)
【原作イラスト】黒銀
【監督】山本裕介
【シリーズ構成】横手美智子
【脚本】横手美智子、木村暢
【キャラクターデザイン】桂憲一郎
【メカデザイン】黒銀
総作画監督】桂 憲一郎、福永智子、山田裕子
【エフェクト作画監督】梅田貴嗣
【シルエットナイトデザイン】黒銀
メカニックデザイン天神英貴
【コンセプトデザイン】宮武一貴、岸田隆宏
【プロップデザイン】入江篤
美術監督】益田健太
色彩設計】藤木由香里
【2Dデザイン】荒木宏文
【CGディレクター】井野元英二
【3DCG】オレンジ
【撮影監督】佐藤洋
【編集】内田恵
【音響監督】明田川仁
【音楽】甲田雅人



あらすじ
凄腕プログラマーにして重度のロボットヲタク、倉田翼。
異世界でエルネスティ(エル)として転生した彼は、運命を揺るがす事態に遭遇する。
「ロ、ロボットだぁ!」目の前に現れたシルエットナイトに心を奪われた彼は、
ナイトランナーを目指して騎操士学園に入学。
持ち前の知識とプログラマーの才能を活かし、学園中にその名を響かせていく。
平和な学園生活を送るエルだったが、恐るべき魔獣の脅威が静かに迫りつつあった。



音楽
【OP】fh'anaHello!My World!!
【ED】大橋彩香「ユー&アイ」


キャスト
エルネスティ・エチェバルリア:高橋李依
アデルトルート・オルター:大橋彩香
アーキッド・オルター:菅原慎介
エドガー・C・ブランシュ:内匠靖明
ディートリヒ・クーニッツ:興津和幸
ヘルヴィ・オーバーリ:伊藤静

 
 
ナイツ&マジック 1
ナイツ&マジック 2