感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第133話(シーズン6 第6話)「奇跡の心臓移植」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン6」あらすじ・感想まとめ

 

第133話 奇跡の心臓移植 The Miracle (シーズン6 第6話)

 

あらすじ

麻薬業者の殺し屋が受けたニセの心臓移植手術。ドナーが神父だったと信じ込み、やがて性格や行動に変化が表れ始める…。殺し屋からヘロインの荷揚げ場所を聞き出すことはできるのか。


麻薬業者の殺し屋が受けたニセの心臓移植手術。ドナーが神父だったと信じ込まされ、やがてその影響で性格や行動に変化が表れ始める…。果たして殺し屋からヘロインの荷揚げ場所を聞き出すことはできるのか。

【今回の指令】
 麻薬業者ティナー(Alvin Taynor)は、11月10日に800万ドル相当のヘロインをある海岸から荷揚げする予定だが、その地点は未だ判明していない。警察のスパイのミルト・アンダーソン(Milt Anderson)がその地点を突き止めようと潜入していたが、ミルトは殺されてしまった。荷揚げ地点を知っているのはティナーとその部下の殺し屋フランク・カーニー(Frank Kearney)だけである。IMFはこのヘロインを押収し、ティナーとフランクを警察の手に引き渡さなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:スティーブ、メーニー


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 冒頭。殺し屋フランクがミルトを警察のスパイだと見抜き殺してしまう。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 ケイシーはフランクの行きつけのレストランの店員としてフランクに接触する。フェルプスは、ティナーと対立している組織のメンバーのふりをして、ティナーに自分たちの組織の傘下に加われと脅しをかけてから立ち去る。ウィリーはレストランに入ってきて、フランクに銃弾(実は麻酔弾)を撃ち込むとそのまま逃走する。

 IMFはフランクを病院に担ぎ込み、心臓移植手術をしたふりをする。バーニーは執刀医のふりをしてフランクに催眠術をかけ、よく見舞いに来るケイシーと結婚すべきといった暗示をかける。そしてヘロイン荷揚げ前日の11月9日になると、IMFはフランクを退院させる。

 フランクは(催眠術のせいで)自分の食事や酒の好みが以前と全く違っていたり、何故か聖書の言葉が勝手に口から出てきたり、ケイシーを無意識に妻だと言ってしまったり、と異変が起きていることにイライラする。さらにフランクはフェルプスを呼び出して殺そうとするが、IMFが銃に細工していたため引き金が引けず、フェルプスからはお前に撃つ度胸が無かっただけだと嘲られて追い払われる。

 フランクは自分に移植されたのが神父の心臓だったと知らされ、心臓移植のせいでもう銃が撃てず殺し屋が出来なくなったと自暴自棄になる。そしてケイシーに一緒に南米に逃げようと頼むが、ケイシーは冷たく、南米でどうやって生活していくのかと突き放す。

 フランクは良い考えが有ると言って、翌日陸揚げされたヘロインを盗もうとするが、そこに現れたティナーに銃を突きつけられる。フランクが殺されそうになった瞬間、警察が駆け付け、ヘロインを押収し、ティナーやフランクを逮捕する。


監督: レナード・ホーン
脚本: ダン・ウルマン


感想

 評価は(ぎりぎり)○。

 今回のエピソードは、心臓移植という、1970年代初頭時点での最先端のテーマを扱った意欲的な作品だったが、アイデアをうまく生かし切れておらず、質はもう一つというところだった。


 今回のIMFのミッションの中心となるアイデアは『心臓移植』で、ターゲットに「神父の心臓を移植したため、性格などが影響を受けて変わってしまった」と信じ込ませるという物である。アメリカでのこの回の放送は1971年10月だが、実は最初の心臓移植手術は1967年に行われており、放送からわずか4年前の話だった。つまりこの回は当時の最先端の医療技術をテーマにしていたわけで、シナリオライターはなかなかの着眼点と言えるのではないだろうか。

 今回IMFは、ターゲットに、心臓の提供者の飲食の好みや精神的な物が移植された人間に移動する、という途方もないまやかしを信じさせ、精神的に追い込んでいく。ところが、面白いことに、「臓器と一緒に記憶や好みなどが移動する」というのは、実は現実世界でも起こっていると言われているのである。もちろん明確に科学的な立証がされているわけでなく、半ば都市伝説レベルの話ではあるが、そういう話が存在するのは間違いない。

 このドラマの放送当時(1971年)は、まだ移植手術黎明期であり、そのような噂話が現在の様に広く語られていたとは思えないので、このエピソードは偶然とはいえ現実(都市伝説)を先取りしていたことになり、2018年時点の視聴者からするとかなり興味深い。

 今回バーニーはターゲットのフランクに催眠術で、ケイシーと結婚すべきだとか色々と暗示をかける。バーニーは、過去のシーズンの様に秘密の小道具を操作したりするシーンが無くなり、代わりにフェルプス並みに表舞台に立つようになったので、色々と芸達者になったようである。またフランクに催眠術をかけるシーンをティナーの部下の一人に見られ、その男が電話をかけようとしていると、後ろから近付いて電話のフックを押して切ってしまうシーンなどは、なかかなにすごみが有って、バーニーの意外な一面を見せてもらった感があった。

 今回はIMFはレギュラー四人の他に、スティーブとメーニーという二人の助っ人を呼んできて作戦を展開した。スティーブは神父役としてフランクに接触し「亡くなった自分の同僚神父の心臓がフランクに移植された」という嘘八百を吹き込む役目でそれなりに活躍した。

 ところが、もう一人のスリのメーニーの出番がほぼ無かったのは拍子抜けだった。メーニーの出番と言えば、フェルプスを殺しに行くフランクにぶつかって、フランク愛用の銃を故障した物にすり替えるというだけだった。まあ他にスリ技能を持ったキャラがいないので仕方ないともいえるが、わざわざ呼んできたゲストの仕事がこれだけというのには呆気にとられてしまった。

 さて、今回麻薬業者の若手チンピラとして黒人のベントンという男が登場するのだが、そのベントンを演じていたのが、なんとビリー・ディー・ウィリアムスだった。この人は、スターウォーズファンならおなじみの、ランド・カルリジアン役を演じた俳優である。スターウォーズでメジャーになる前にはこんなところにも出ていたのかと、ちょっと驚かされてしまった。

 今回のサブタイトルの原題「The Miracle」とは、もちろん奇跡のこと。今回のIMFが仕掛けた「心臓移植による記憶転移」作戦を表している。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが、網が垂れ下がり、タコ・ヒトデなどのぬいぐるみが置いてある部屋(土産物屋?)に立っていて、机の上に置いてあるオープンリール式テープレコーダーのスイッチを入れる。フェルプスはテープの指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。来たる11月10日、800万ドル相当のヘロインがある海岸に荷揚げされることになっているが、その地点は明らかでない。内偵員ミルト・アンダーソンがその荷揚げ地点を突き止めるべく潜入していたが、殺されてしまった。北西部きっての麻薬業者であるティナーと、その部下・殺し屋のフランク・カーニーだけが荷揚げ地点を知っている。

 そこで君の使命だが、このヘロインを押収し、ティナーとフランクを警察の手に引き渡すことにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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