【ミステリードラマ】感想:NHK番組「満島ひかり×江戸川乱歩」

毒草/お勢登場/指 現世の夢シリーズ

満島ひかり×江戸川乱歩 NHK http://www4.nhk.or.jp/P3860/
放送 NHK BSプレミアム。2018年12月30日(日) 23:30~1:00。

【※以下ネタバレ】
 

江戸川乱歩の3つの傑作短編を映像化。悪女が成功させる完全犯罪「お勢登場」。算盤を使った暗号「算盤が恋を語る話」。夫の浮気相手の正体は・・?「人でなしの恋」。

 

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内容

12月30日日曜 NHKBSプレミアム 午後11時30分~ 午前1時00分


エロスと幻想が交錯する独特の作風で“日本ミステリーの父”とよばれる江戸川乱歩。初期の傑作短編から「お勢登場」「算盤が恋を語る話」「人でなしの恋」を、気鋭のクリエイターがほぼ原作に忠実に映像化。ヒロインを満島ひかりが演じる。完全犯罪を成功させる妖艶な悪女。内気な男から算盤の暗号で恋を告白される事務員。夫の浮気に悩み相手の正体を突き止めようとする若妻…。「由々しき恋心」と、その衝撃的な結末とは?


【出演】満島ひかり,宮藤官九郎,猫田直,岩井勇気,嶋田久作,高良健吾,【語り】久保田祐佳

 
●第一幕 お勢登場

 格太郎の妻・お勢(おせい)は、公然と若い男と浮気をしていたが、格太郎は病弱のため、それが引け目となり妻と離縁できずにいた。ある日、格太郎は息子やその友達に付き合って家の中でかくれんぼを始めるが、長持に隠れたところ、鍵が自然にかかってしまい、そのまま閉じ込められてしまう。

 格太郎は助けを呼びながらもがいていると、丁度帰宅したお勢がそれを聞きつけ、長持の蓋を開けるが、中身を確かめた瞬間もう一度締めてしまう。そして女中が格太郎を見つけた時には、既に格太郎は窒息死していた。

 警察は事故死と断定し、お勢は表向き愛人と別れ、夫の家からそれなりの財産をもらった後は、息子と共にどこかに消えた。

お勢:満島ひかり、格太郎:宮藤官九郎



●第二幕 算盤が恋を語る話

 造船所の会計課で働くTは、同じ部署で働く女性のSに恋をしていたが、正面から告白する勇気が無かった。そのためTは算盤(そろばん)にとある数字を示して出社前の彼女の机の上に置いておくということを始める。その数字は「12億4532万2222円72銭」で、数字二つで五十音を示す簡単な暗号となっており、つまり「イトシキキミ=愛しき君」という意味だった。

 Sは最初は算盤を片付けて終わりにしていたが、Tが同じことを何度も繰り返すうちに意味に気が付いたらしかった。そこでTは続いて「62万5571円81銭」という暗号を繰り返すようになった。それは「ヒノヤマ」という意味で、会社の近くの山の上にある公園の事だった。

 それをまた何日か繰り返すうち、Sが退社した際机の上に算盤を置いていったが、そこには「83227133」という数が残されていた。それは解読すれば「ゆきます」という意味だった。Tは大喜びで公園に向かい、じっとSが来るのを待っていたが、何時間経っても彼女は現れない。

 やがてTはあることに思い当たり、会社に取って返し、資料を調べる。そしてSが単に仕事で「83万2271円33銭」という数字を算盤に残していっただけだと悟る。そもそもSはTの暗号に気が付いてもいなかったに違いなかった。

S:満島ひかり、T:岩井勇気(ハライチ)



●第三幕 人でなしの恋

 主人公京子が10年以上前に死別した夫・門野(かどの)の事を回想する。

 京子は19歳で名家の息子の門野に嫁入りした。最初は幸せな日々だったが、結婚後半年ほどたち、門野が浮気しているのではないかと疑いを抱き始める。そして夫が読書のためにこもっているという倉の外で聞き耳を立てていると、夫と女の話し声が聞こえて来た。その後、夫は倉の外に出てきたものの浮気相手の女はいくら待っても出てこない。しかしも蔵の中を調べても女が隠れてもいなければ抜け穴も無かった。

 そして夫と女の浮気が続き、その様子を盗み聞きしていた京子は、ある日何かのふたを閉めるような音を聞く。そして夫がいない間に蔵に置いてある箱を調べると、中には精巧な少女の人形が隠されていた。夫の浮気相手とはこの人形だった。女の声というのも、夫が声色で出していたに過ぎなかった。

 京子は人形を叩き壊してしまうが、また次の夜に夫が倉に行ったまま帰ってこない。不審に思って確かめに行くと、夫は日本刀で自殺していた。

妻(京子):満島ひかり、夫(門野):高良健吾

感想

 評価は○。

 2016年の1月と12月に3話づつ放送されたドラマシリーズ「江戸川乱歩短編集」の続編的作品。以前のシリーズで明智小五郎を演じた満島ひかりが、今度の3作品すべてでも重要キャラを演じています。

 前のシリーズは明智が出てくる「謎解き」物でしたが、今回の三作品はいずれもそういう要素はなく、まあ「ヒッチコック劇場」ノリと言うかで、不穏な空気の中で「オチはどうなるのか……?」とドキドキしながら視聴するタイプでした。


 ちなみにどの話も冒頭に「ほぼ原作に忠実に映像化」というテロップが出ますが、これ、別に原作を一部改変したとかそういうアレではなく、どの話にも「どう見ても乱歩は原作でこんな描写してないだろ!」という妙にシュールな演出が有るからです(笑)

 「お勢登場」では、お勢がおしゃれしたまま突然部屋で四つん這いになってはい回るシーンが有るし、「算盤が恋を語る話」では、主人公Tが怪しげな人形相手に抱きついて悶々とするシーンが有るし、「人でなしの恋」では、語り手(妻)が「竜宮城の乙姫みたい」云々と語るシーンで、突然海辺で妻が乙姫風の格好になって海に飛び込むシーンが有るし、と、確かにこれは「ほぼ」と断っておかないと「乱歩ってこんな小説を書いていたの?」と名誉棄損してしまうレベル(笑)


 個々の話の感想としては

「お勢登場」=オチでどんでん返しがあるのかと思いきや、全く無かったのでビックリした……、そういう驚かせ方は必要ないです……


「算盤が恋を語る話」=最初から主人公の空回りだろうなぁと推測が付いていましたが、オチをどうするのかにドキドキ。最後の「Sからの返事だと思っていたのは、単に仕事の片づけ忘れ」と突きつけられるオチがキツイ。


「人でなしの恋」=浮気の相手が人形という謎解きがなかなか意表をつきました。「夫は、偽装結婚までしたものの、結局好きな人形にしか欲情できないアレな男だった」という設定は現在でも十分通用しますよね。100年前のこのテーマで一本書いた乱歩の先進性は凄いよね。


 まあ明智小五郎が出てきた過去の一連の作品に比べるとイマイチ満足感が有りませんでしたが、まあヒッチコック劇場的な物を目指していたと思えば、それなりだったかもしれません。
 

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算盤が恋を語る話 (創元推理文庫)
人でなしの恋 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)