【映画】感想:映画「猛獣大脱走」(1983年:イタリア)

映画チラシ 「猛獣大脱走」監督 フランコ・プロスベリ 出演 ジョン・アルドリッチ、ロレーヌ・ド・セル

映画「猛獣大脱走https://www.twellv.co.jp/program/drama/mojudaidassou/
放送 BS12。2023年4月26日(水)

【※以下ネタバレ】
 

狂暴化した1,000頭の猛獣が動物園から脱走、大都会で殺戮と破壊の限りを尽くす!1983年にイタリアで制作された悪夢のアニマルパニック。


全編に登場するトラやライオンをはじめとした猛獣はすべて本物の動物を使い、命がけの撮影が敢行された。監督は『世界残酷物語』などモンド映画の鬼才フランコ・プロスペリ。
(英語・日本語字幕)


北ヨーロッパのとある都市の世界屈指の巨大動物園でコンピュータトラブルが発生。1,000 頭もの猛獣たちが檻を破って街になだれ込み、次々と市民が犠牲となる。空港では巨象の群れが滑走路に立ちふさがり、離陸寸前のジャンボジェットは高圧送電線に激突し大爆発。メインストリートは荒れ狂った水牛が破壊の行進、ハイウェイではチーターが猛スピードで白熱のカーチェイスを繰り広げる。街中のいたるところでシロクマやライオン、興奮した猛獣が暴れまわり、吼え声が大都会に轟く。獣医は動物たちが異様に気を昂らせている原因が飲料水に混入された薬物にあることを突き止めるが、パニックは恐怖の連鎖反応を引き起こし、殺戮と破壊は続き…。

 

あらすじ

 冒頭。用水路を流れる泡だった汚水が動物園に流れ込んでいく。何も知らない動物たちがその水を飲む。


 動物園に勤務する獣医リップは、シングルマザーの記者ローラと恋人関係。ローラは仕事が忙しく、反抗期の一人娘スージーにろくに顔を合わせることもできず、親子の関係は冷え切っていた。

 深夜、路肩に止めた車の中でいちゃついていた男女が、下水溝から這い出て来たネズミの大群に襲われ食い殺される。現場に駆け付けた警察はネズミの大群に手を焼き、対処のためリップを呼び出した。リップは火炎放射器でネズミの群れを駆除させたあと、ネズミたちの暴走の原因を調べるため死体のサンプルを持ち帰る。

 同じころ、動物園でも動物たちが騒ぎ始め、暴走した象が建物を破壊し、その影響で電線が切断されてしまう。その結果、電気式の檻の鍵が解除され、ライオン・トラ・チーター・象などの獣が解放されてしまい、動物たちは園の人間を殺してから街中に消え去った。動物園に来たリップは事態を知ってすぐさま警察に連絡し、警察は動物を捕らえるために緊急出動した。

 街中では人間が猛獣に襲われ被害が出る一方、獣から逃れようとした車が暴走して事故が起きるなど、パニックが拡大していった。さらに象の群れが空港の滑走路に侵入し、着陸しようとした飛行機が操縦を誤って変電所に突っ込み、街は大停電となってしまう。

 スージーはバレエのレッスン中に大停電に巻き込まれ、さらに教室のある建物にシロクマが侵入してきため慌てて逃げ出す。そして生徒の子供たちは護身用に台所からナイフを持ち出し、大人と共に鍵をかけた部屋に立てこもった。

 リップは動物たちを調べ、血液中から「PCP」という麻薬が検出されたことを知る。おそらく昼間のうちに動物たちは水道水に混入していたPCPを飲んでしまい、その結果全ての動物たちが異常を来たし、人を襲う様になったと思われた。しかしPCPの効果は長続きせず、動物たちは次第に大人しくなっていった。また停電も回復し、徐々にパニックは収束に向かった。

 ローラは騒ぎが沈静化したため、リップと共にスージーを迎えに行くが、部屋の中で女性が刺されて死んでいるのを見つける。さらにバレエ教室の子供たちが笑いながらローラにナイフを向けてきて、正気なのはスージーだけだった。子供たちもまたPCPが混入していた水を飲んでいたのだった。

 ローラはスージーと共に部屋の外に飛び出し、子供たちを中に閉じ込める。そしてローラやリップたちが、部屋の中からドアにナイフが次々と突き刺されるのを怯えた目で見る。

 最後。麻薬に侵された子供たちは快方に向かったこと、厚生省は危険を否定したこと、リップとローラは記者会見で危険を訴えたこと、が文章で示されて終わる。


感想

 評価は○(意外に面白かった)

 動物園から逃げ出した猛獣たちが人を襲うパニック映画。B級映画ではありましたが、予想よりはるかに面白かったので好感度高し。


 まあ、映画ポスターから受けるイメージと違い、『狂った動物たちが無差別に人間に襲い掛かって殺戮しまくる阿鼻叫喚映画……』、ではなく、どちらかというとサスペンス映画に近い内容でしたが、テンポよく話が進み退屈する暇もなかったので、個人的には結構楽しめました。


 冒頭から汚水が動物園に流れ込んでいき、盲導犬がその水をペロペロ舐めているあたりからしてもう不穏さがたまりませんが、その後テンポよく、ネズミのアベック襲撃、動物園からの猛獣の逃走、さらには大停電、などのイベントが続くのでなかなかでした。

 残酷殺戮路線ではないので(画面に映った)犠牲者の数は多分10人に届いていませんが、ネズミに食い殺された犠牲者の死体が白骨に肉が多少ついているだけのショッキンググロ状態だったり、象の鼻に首を絞められて口から血を吐きながら死ぬとか、足に踏みつぶされて圧死とか、それなりにエグイ描写もあるので、ちょっとポイントは高かったです。


 そしてこの映画の最大の凄さは「動物が全て本物」という事。リアルなCG技術というものが存在しない時代の映画のため、登場する動物は、トラ、ライオン、チーター、象、シロクマ、ネズミ、その他全て生きている本物です。

 当然、象たちが空港の滑走路を走り回るのも、チーターが道路を疾走するのも、虎が地下鉄の線路をうろうろするのも、ハイエナが牛にくらいついているのも、全部本物。凄い。現在の感覚からすると、よくこんな映画撮れたなぁと感嘆するしかありません。

 特にリップ役の俳優は、トラやシロクマに近づいて「よーしよし良い子だ」とか言いながら体を撫でまくっているので、全く襲われる雰囲気のシーンではないにもかかわらず、見ている方が緊張しまくって変な気分になりそうでした。この俳優、凄い度胸としか言いようがない。よくこんな危ない役を承諾したものです。


 また終盤、動物パニックが収まったと油断させておいてから、子供たちが麻薬でおかしくなってナイフを持ってニヤニヤ笑いながら襲い掛かって来る、という展開は意表を付かれました。しかし、この展開はちゃんと伏線が張られており、子供たちが争って水を飲むシーン(スージーだけは断ってコーラを飲んだ)が有ったり、護身用に台所からナイフを持ってきて配るシーンがあり、勘が良ければ予想できたはずなんですよね。それだけに、あの結末はやられたという気持ちになりました。


 まあ、あくまで「B級としては」的な断り書きが付きますが、予想外に面白かった一作でした。でもこの作品のDVDは廃盤になっているそうで、今回視聴出来たのは貴重な体験だったということかもしれません。


おまけ

 ちなみに、アメリカのテレビムービーで「猛獣大脱走/全市民緊急避難せよ」(1978年)という、本作と混同しそうな紛らわしいタイトルの作品があります。アメリカ版も「街に動物が逃げ出す」というテーマなのですが、方向性はまるで違い、関係者が逃げた動物を捕獲していく様を描いたファミリー向け作品で、人死にを含めて残酷要素は一切ありません。タイトルで期待して視聴したら、内容がほのぼの路線だったのでメチャクチャ失望したものでした(笑)
 
 

BS12
https://www.twellv.co.jp/program/drama/mojudaidassou/
映画「猛獣大脱走
4月26日(水)夕方 6:00~



【キャスト】
役名:キャスト
リップ:ジョン・アルドリッチ
ローラ・シュワルツ:ロレーヌ・ド・セル
スージー・シュワルツ:ルイーザ・ロイド


【スタッフ】
監督:フランコ・プロスペリ
音楽:ダニエル・パトゥッキ

 

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