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感想:海外ドラマ「X-ファイル 2016」第1話「闘争 Part1」

ドラマ

X-ファイル 2016 ブルーレイBOX [Blu-ray]

X-ファイル 2016|FOX|FOX ネットワークス http://tv.foxjapan.com/fox/program/index/prgm_id/20683
放送 FOXチャンネル。全6話。

【※以下ネタバレ】
 

伝説の超常現象サスペンス、復活!


FBIに存在する、UFOやエイリアン、超常現象など科学で証明出来ない特殊なケースの未解決事件ファイル: Xファイル。これらの事件に挑む2人のFBI捜査官モルダーとスカリーの活躍を描いたエミー賞ゴールデン・グローブ賞受賞の爆発的ヒット作!!


あれから長い時を経て、別々の生活を送っていたモルダーとスカリー。捜査からは一線を置いていたモルダーだったが、ある事件をきっかけに、再び彼に白羽の矢が立つことに。そして、スカリーとの再会が果たされるが、名コンビ復活の行方は如何に…!?

 

キャスト

フォックス・モルダー デイビッド・ドゥカブニー/小杉十郎太
ダナ・スカリー ジリアン・アンダーソン相沢恵子
ウォルター・スキナー ミッチ・ピレッジ/島香裕
 
 
X-ファイル 2016(ニーゼロイチロク)の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら
perry-r.hatenablog.com
 

第1話  闘争 Part1 MY STRUGGLE

 

あらすじ

動画ニュースサイトを運営し自らキャスターを務める保守派の陰謀論者、タッド・オマリーがFBIを通してモルダーとスカリーに協力を求めてきた。2人は彼の案内で、異星人に誘拐された経験を持つという女性、スヴェタを訪ねる。彼女の話を聴いたモルダーは、これまで思いもしなかったある真実に気づかされることになる。

 お題は「アブダクション/政府の陰謀」。

 モルダーとスカリーがFBIを辞めてから十余年が過ぎ去った。スカリーは医者として病院で働いていたが、モルダーは自宅に引きこもって世捨て人のような暮らしをしていた。そんなある日、スキナー経由で二人に、動画ニュースサイトの運営者タッド・オマリーが接触してきた。オマリーは陰謀論者であり、同時にUFOビリーバーで、近々政府の陰謀を暴く予定なので、元X-ファイル担当の二人に情報をチェックしてほしいと依頼してくる。

 オマリーは二人をまず、過去20年間に何度もUFOに誘拐され人体実験されたという女性スヴェタのもとに連れていった。スヴェタは何度も誘拐され、胎児を奪われただけでなく、エイリアンのDNAを移植され、超能力が身についたと主張するが、スカリーは相変わらず懐疑的だった。とりあえずスカリーはスヴェタのDNAを検査することにした。

 一方、モルダーはオマリーに、エイリアン技術を使った宇宙船「ARV」を研究している技術者たちに引き合わされ、現物を見せられる。またスヴェタからは、自分を誘拐したのはエイリアンではなく人間だったが、誰も信用できないので口にできなかったと告白される。

 モルダーはオマリーたちを集め「真実」を教える。1947年にエイリアンの宇宙船がロズウェルに墜落し、権力者たちはエイリアン技術とエイリアンの死体を手に入れた。その後、権力者は全てを隠し、自分たちが作ったニセUFOで国民を誘拐しては人体実験を行っている、と主張する。オマリーの考えでは、政府は様々な陰謀でひそかに国民を支配しようとしており、最終的な目的はアメリカ乗っ取りだった。スカリーは二人のあまりにも荒唐無稽な主張に呆れかえり、またスヴェタのDNAには何の異常もなかったため、二人の話に付き合いきれない。しかし、モルダーとオマリーはこの話を公表しようと意気込む。

 だが、その後、スヴェタはマスコミに対してUFOに誘拐されたという話を否定し、またオマリーのサイトは突然閉鎖される。さらにモルダーたちは知らなかったが、ARVの製造工場は突入してきた兵士により破壊されていた。とどめでスヴェタはUFOからの攻撃で殺される。

 モルダーは全ては政府が真実を隠蔽するため手を回したのだと確信する。またスカリーはスヴェタのDNAの調査結果を調べなおし、突然考えを変えてモルダーに同調する。直後、スキナーからモルダーに連絡が入る。最後、スモーキング・マンが「X-ファイル課が再開された」と口にするシーンで〆。


監督 クリス・カーター
脚本 クリス・カーター


感想

 評価は△。

 2002年5月のシーズン9最終回から13年半ぶりに、オリジナルスタッフ・キャストで復活したTVドラマ版X-ファイルの記念すべき第一話だったが、正直に言って微妙な出来のエピソードだった。


 復活第一弾のテーマは、X-ファイルの王道ともいえる「アブダクション/政府の陰謀」物で、「宇宙人は本当に存在する。ロズウェル事件は現実に起きた。しかしその後のUFOアブダクション事件は人間の仕業である」といった、宇宙人&秘密組織の絡む外しようもない題材だったのだが、過去のエピソードのようなワクワクするようなノリが完全に失われてしまっていて失望に値した。

 テーマそのものは鉄板だったが、「愛国者法」といった「アメリカの今」を盛り込もうとしたために、妙に生臭くなりすぎて、以前のシリーズのような古き良き「荒唐無稽さ」が失われてしまっていたのその原因だと言えよう。同じ『宇宙人云々は全て政府のでっち上げだった』という展開の、シーズン4・第24話「ゲッセマネ」では、宇宙人解剖フイルムネタなどを盛り込んで面白く仕上げていたのに、今回のエピソードではそういうオカルトテイストが失われ、ひたすらリアル世界のことを描いていたために、どうにもノリきれなかった。

 これが名も無いシナリオライターが書いたシナリオたったならまだ良かったのだが、制作者のクリス・カーターが自ら手掛けたもの、というだけに失望がなお深かった。クリス・カーターは、放送前特番では「新しい時代に対応した内容にした」云々と語っていたが、これがその結果だとすれば失敗だという気がする。今回の話は、単にクリス・カーターの現在のアメリカの政治に対する不満をX-ファイルという形で開陳しただけ、という感じがして、昔のように純粋には楽しめなかった。

 また、そういう生臭さを抜きにしても、今回のエピソードは展開にやや無理があった。モルダーが、スヴェタから話を聞き、さらにARVの開発者とあっただけで、いきなり何かに目覚めて、オマリーとスヴェタに「全ては1947年から始まった政府の陰謀である」と自信たっぷりに語ったが、あの内容はいったいどこからひねり出したのだろうか? 特に何か証拠を得てその結論に達したのではなく、モルダーがただ妄想を二人に語っただけのように見えて、今まで以上にモルダーが危ない人間に見えて仕方なかった。オマリーもモルダーの話を受けて、政府がこんな陰謀を企んでいると熱弁し、二人でがっちりと意気投合するあたりは正直言ってついていけなかった。いくらなんでも、もう少しましな展開には出来なかったのだろうか。

 ラストも、力強くX-ファイル課が復活するのではなく、スキナーから電話がかかってきて、なんとなく復活したらしい、程度で〆てしまうのて、拍子抜けにも程があった。ということで、第一話目は不満だらけの展開ではあった。今後、盛り返してくれるのかどうか、かなり心配である。


 さて、「2016」では(2008年の映画版を含めても)久々となるモルダー&スカリーコンビの復活が嬉しいところだったが、モルダー/デビッド・ドゥカブニー(撮影当時55歳)・スカリー/ジリアン・アンダーソン(同47歳)ということで、さすがに二人とも老けこみが凄かった。2008年映画の映像と比較すると相当な変わりぶりで、40歳を超えた後の劣化の速さには驚かされた。ドゥカブニーは、まあ、全体にふっくらしておじさんになった、という程度でそれなりに納得できたが、ジリアン・アンダーソンは顔つきまで変わっていてかつての面影を見出すのも難しいレベルで、これはきつかった。ちなみにスキナー副長官/ミッチ・ピレッジと、スモーキング・マン/ウィリアム・B・デイビスは、まあこんなもんだろうという感じではあった。

 吹き替え版では、過去シリーズ同様、モルダー:小杉十郎太、スカリー:相沢恵子、のコンビが吹き替えを担当しているが、小杉十郎太氏の声の変わりぶりがかなり大きい様である。モルダーは見た目より声のせいで「老け込んだ」という印象が強かった。


 モルダーが秘密工場に連れていかれて「ARV」という名前の人間が作ったUFOを見せられるシーンがあるが、このあと吹き替え版ではARVという言葉に何の説明もないので困惑させられた。字幕版で再確認するとここは「ARV エイリアン複製船」と表示されていた。調べてみると、「ARV」は「Alien Reproduction Vehicle」の略語で、要するに「エイリアン技術を用いて地球人が作った宇宙船」の意味。「軍は墜落したUFOの技術を使って、自分たちでもUFOを作っている!」的な時に使うオカルト用語の様である。

 序盤にモルダーがオマリーの番組を「『ザ・オライリー・ファクター』の二番煎じだろう?」と皮肉る場面がある。この「ザ・オライリー・ファクター(The O'Reilly Factor)」とは、アメリカのFOXチャンネルで放送しているニュース番組のこと。ということで、いかにも原語版にありそうなセリフだが、実はこのくだりは日本語版のオリジナルの台詞である。日本語翻訳スタッフはどういうつもりでこういうセリフを入れたのか、考えが今一つわからない。

 スキナーはシーズン9から十数年たっているのに、未だに副長官のまま出世していない、というのにはちょっと驚いた。モルダーたちの行動をかばっていたりしたので、経歴に傷がついて、懲罰的に出世できないまま(初登場から数えて)20数年もずっと副長官のままなのかもしれない。

 X-ファイルというと、内容を知らない人からは、殆どいつも「モルダー、あなた疲れているのよ」という台詞と一緒に語られるが、実のところ本編でこんな台詞を聞いたことが無い。というか無かった。しかし今回は終盤スカリーが間違いなく「モルダー、あなた疲れ切っているのよ」と語りかけるシーンがあり、ちょっと笑ってしまった。

X-ファイル 2016(ニーゼロイチロク)の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

perry-r.hatenablog.com