感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン6」第1話「ビギニング」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン6 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】

映画「X-ファイル ザ・ムービー」につづくシリーズ。FBIの科学捜査能力をもってしても真相究明できない未解決事件のレポート“X-ファイル”。FBI捜査官モルダーとスカリーが、UFOや異星人などが絡む怪現象や闇の政府に立ち向かう。オフィス焼失以来、活動を停止していたXファイル課が再活動することになるが・・・。政府とエイリアンとの関係やモルダーの妹サマンサの謎など、次々と明らかに。しかし新たな謎も。

キャスト

【フォックス・モルダー捜査官】デイビッド・ドゥカブニー/小杉十郎太
【ダナ・スカリー捜査官】ジリアン・アンダーソン/相沢恵子


※シーズン6の他のエピソードはこちら→「X-ファイル シーズン6」あらすじ・感想まとめ

第1話 ビギニング THE BEGINNING

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
EP1 ビギニング
オフィス火災後、モルダーは書類の修復を始める。だがモルダーとスカリーはXファイル担当から外されてしまう。見かねたスキナーは、ある事件のファイルをモルダーに渡す。

 お題は「エイリアンの地球侵略、政府の陰謀」。


 シーズン5最終回(第20話)「ジ・エンド」、および映画「X-ファイル ザ・ムービー」(1998年)の続編。


 モルダーは焼き捨てられたX-ファイル関連の書類の復元を行い、大部分を復活させる事に成功していた。モルダーはそれをもってFBIの幹部たちにX-ファイル課の復活を訴えるが、「宇宙人の地球侵略」などといった話は一笑に付され、要求は却下される。それを見かねたスキナー副長官は、モルダーにアリゾナ州で起きたある事件を調べるようにヒントを出す。それは2人の人間が惨殺され、内一人は内臓を抜き取られて殺されたという凄惨なものだった。直後モルダーは、ジェフリー・スペンダーとダイアナ・ファウリーがコンビでX-ファイル担当捜査官になった事を知る。

 一方、秘密組織のメンバーは、偶然ウイルスに感染した人間から「ある物」が誕生し、付近を徘徊しているらしい事を知って、慌ててスモーキング・マンに事態の収拾を命じる。スモーキング・マンは人の心が読めるギブソン少年を連れ出してアリゾナに向かった。

 やがて付近の原子力発電所で所員が殺され、モルダーたちが駆けつけるが、スペンダーとダイアナに追い返される。直後、モルダーたちはスモーキング・マンたちから逃げてきたギブソンを見つけ、病院に担ぎ込んだ。そのあとダイアナがやってきて、モルダーに、スペンダーと組んだのは裏切りでは無く、敵の内部からモルダーたちを支援するためだと説明し、モルダーを原発に連れて行く。一方スモーキング・マンの部下はギブソンを再度誘拐し、やはり原発に乗り込む。スモーキング・マンの部下はモルダーの目の前で謎の生物に殺され、ギブソンはそのまま行方不明になる。

 事件後、モルダーは今回の勝手な行動についてFBI幹部から再度吊るし上げられ、モルダーとスカリーはカーシュ副長官の監督下に置かれる事になった。ダイアナが提出した報告書は事実を捻じ曲げた物で、モルダーはそれはダイアナが自分たちの事を思ってのこととかばうが、スカリーはダイアナも敵の一味ではないかと言い、自分とダイアナのどっちを信じるのかと詰め寄る。

 さらにスカリーは今回殺人事件の現場で採取した謎の生物の爪は、モルダーが宇宙人のウイルスと信じる物とDNAが完全に一致した事を教える。さらにギブソンのDNAにも同じものが有り、彼は一部地球外生命体といえることが判明していた。ギブソンは常人が「不活性遺伝子」である部分が活性化しており、そのDNA自体は普通の人間にもある。つまり地球人には全て宇宙ウイルスのDNAが含まれているということだった。

 スペンダーの前にスモーキング・マンが現われ、モルダーをうまく落としいれたと息子を褒めていた。

 最後。原発の中でギブソンがうろついている。また原子炉の冷却水の中にいた謎の生物は、だんだんと皮がむけ、最後にグレイの姿になる。


監督 キム・マナーズ
脚本 クリス・カーター


感想

 評価は○。

 シーズン5の最終回(第20話)「ジ・エンド」の続き。「ジ・エンド」は秘密組織の暗躍をテーマとした物だったが、このエピソードは一転してエイリアンが堂々と出てくる、かなり趣の違う話になっている。

 今までのシリーズとは違い、この話は「ジ・エンド」の直接の続編では無く、シーズン5の放送後に公開された映画「X-ファイル ザ・ムービー」をはさむ形となっているため、テレビシリーズしか見ていない視聴者にとっては、かなり分かりづらいものとなってしまっている。正直に言ってかなり迷惑な話である。


 今回のテーマは直球で「エイリアン」。エイリアンおよび秘密組織の進めている陰謀は、「宇宙ウイルスが感染しているコーンを栽培し、ハチを使ってコーンの花粉経由でウイルスを人間に感染させ、感染した人間の体内でウイルスが宇宙生物として成長し、最後に腹の中から飛び出してくるので、それで地球を征服する」というもの。はっきり言って荒唐無稽であり、付き合うのがばかばかしくなってくるレベルの設定である。過去のエピソードで、謎の地球外植物の栽培や殺人ハチによる実験などが思わせぶりに描写されてきたが、その真相がこれというのはかなり失望させられた。今回の展開を見ると、何も考えずに雰囲気だけで引っ張ってきたツケを払わされた、という感が有る。

 問題のエイリアンは、一応二足歩行だが、人間の腹を食い破って現われ。さらに人間を見ると見境無く襲いかかってくるというケダモノレベルの生き物。終盤に原発内でモルダーと対峙するが、顔がバッチリ描写されている。ここまであからさまにUMAや宇宙人の姿を描写したのは、シーズン2の第2話「宿主」のウズムシ人間以来だと思われる。もっともあまりにもあからさまに見せすぎて、いささか興ざめではあった。この手の生物は見えるか見えないかくらいに留めておくほうが、想像力を刺激されるというものであろう。


 FBI内の人事に目を向けると、モルダーを目の敵にするジェフリー・スペンダーとモルダーの元カノのダイアナ・ファウリーがしれっとX-ファイル担当に就任したほかに、スキナーがあからさまに左遷されていて、とどめでモルダー&スカリーがカーシュ副長官の部下となり、と、実に面倒くさそうな展開を予想させるものとなった。モルダーの、長年の相棒のスカリーはあからさまに信用しないくせに、元カノのダイアナの事は無邪気に信用するという姿勢が、何度だまされたら気が済むのかという感じでは有る。


 最後は「結局モルダーたちはエイリアンについて何も証拠をつかめないまま終わる」といういつもの結末ではあったが、人間の腹から飛び出す宇宙人だの、地球人のDNAには宇宙ウイルスと同種のものが含まれているだの、そろそろ設定が派手になり過ぎて、視聴者が真面目についていけないレベルになりつつある、と痛感させられるエピソードだった。

 ただし、最後の最後に「エイリアンが原子炉の冷却水の中で一皮剥けると、その中からはグレイが現われた」というオチは、意味はつかめないが、とにかく衝撃的過ぎて笑えた。あのシーンだけは評価したい。