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【コミック】「漫画アシスタントの日常」(大塚志郎)は漫画業界のリアルすぎる現実を描く


漫画アシスタントの日常 (バンブーコミックス)

磨けよ技術!高めよ画力!
受賞以上、連載未満の駆け出し漫画家・五百住志歩がアシスタントとして入った
漫画制作現場で遭遇する修羅場の数々!!
アシスタントに要求される作画テクニックや心構え、処世術まで役立つうんちく満載!!!!!!!

【以下ネタバレ】

 「漫画アシスタントの日常」(大塚志郎)は、今月まで竹書房の「月刊キスカ」に連載されていた作品(〜2016年5月号)。作者は「射〜Sya〜」や「マリンハンター」といった可愛い感じの女の子を描く人ですが、この作品も同じような感じの、「女性漫画家物語」みたいなゆるふわな話だと思っていたら、落差に愕然とすること請け合いです。

過酷過ぎるエピソードの数々

 主人公「五百住志歩」(よずみ・しほ)はアシスタントとして腕を磨きながら、連載を目指す漫画家の卵。そして毎回語られるのは彼女が体験する、あるいは語る、リアルすぎる現実。今までの漫画家物語では描かれなかったダークな側面のオンパレード。

 チーフアシスタントとなったときの話。作画能力だけでは無く漫画家の作業を的確に他のアシに振り分けるマネジメント力も要求され、さらに使えない経験不足の新人アシでも「将来の戦力」と我慢して指導しなければならない苛立ち。

 作画が遅れまくった修羅場に呼ばれ、漫画家がついに自分がやるべきキャラへのペン入れすらアシスタントに任せようとするエピソード(志歩は断るが)。

 有名漫画家のところのチーフアシスタントが、実力もないのに偉そうな顔をしている。なぜかというと先生の弟で、もういい年で他の仕事をすることも出来ないので、先生が(力がないのを承知で)アシとして雇っている……

 夢を持って都会に出てきた漫画家志望者が、まず食べるためにバイトをするものの、バイトが忙しいといって作品を描かず、たちまち「元漫画家志望だったフリーター」に成り果てる……

 半年間連載ための準備を続けたものの、結局編集者のOKが出ずにボツになり、今までつぎ込んだ労力が全て無駄に……

 自分が漫画家となってアシを使う立場になったときの苦労。自分の原稿に他人の手を入れさせるのだから、質の低さは全部自分の評価となって帰ってくる。アシ時代には解らなかった焦り……


最終回は

 といったダークな話がこれでもかと披露された末に、志歩は月刊誌での短期連載が評価され、ついに週刊連載を掴みます。嬉しさににやける志歩に、先輩のショーコは「編集長の異動などで話がなくなるかもしれない」「新人漫画家の連載は大半が打ち切りで終わる」といった事を言って気を引き締めるように注意します。

 志歩は「打ち切られたらまたアシに戻れば良い」と返しますが、ショーコはそれを冷たく否定。第一に、一度連載した漫画家はプライドが有るので他の漫画家が使いづらいし、他のアシから失敗者呼ばわりされることもある。第二に人物のペン入れに集中していたので背景を描く力が落ちている。そして第三に何よりアシに戻っている場合ではない。一度漫画家になったら、打ち切られたらすぐに新しい企画を持って編集部を回り、新連載を取るように努力しなければならない。連載からの期間があけばあくほど次の連載を取るのは難しくなる。

 そして連載が成功する秘訣を聞かれて「そんなものはない」と即答。しかし連載を持ったらなおのこと積極的に休むことを憶えろとアドバイス。休み無しに体力任せに連載できるのは半年程度で、それを過ぎれば肉体は疲れ果て、アイデアも尽きて、搾りかすになるという。連載を続けている漫画家たちは、適度に休んで体力を維持しアイデアを仕入れて、永久機関的にまわせる様にしていると言います。

 そして志歩の戦いはこれからだ、的にエンド。


コメント

 見た目とは全く違う、漫画家業界のリアルすぎる話を詰め込んだ漫画ですが、それだけにインパクトが物凄い。地方から出てきたら、東京のこのあたりに住んで、バイトは控えめにしてとにかく漫画の仕事で収入を得ろ、とか、そんなことを語る漫画なんて初めて読みましたよ。ビターな、というかリアルな業界話を知りたい人にはオススメの漫画です。