感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第63話(シーズン3 第10話)「美食家が覗いた未来」

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【※以下ネタバレ】
 
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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ
 

第63話 美食家が覗いた未来 The Bargain (シーズン3 第10話)

 

あらすじ

スラナイカ国からアメリカへ亡命した元独裁者が、犯罪シンジケートと手を組み、彼らから入手した活動資金で祖国での復権を目指そうとしていた。彼らの関係を崩すためにIMFチームがとった作戦とは…。


スラナイカ国からアメリカへ亡命した元独裁者が、アメリカ犯罪組織と手を組み、権力の座に返り咲いた暁には彼らにカジノ独占権を与えることを条件に、彼らからクーデター資金を調達しようと目論んでいた。彼らの関係を崩すためにIMFチームがとった作戦は、まず美食家の元独裁者の屋敷に超一流のブイヤベースを作れるバーニー(グレッグ・モリス)がコックとして潜入する…。

※DVD版のタイトルは「幻の契約書」。


【今回の指令】

 ネイロン将軍(General Ernesto Neyron)は、かつてスラナイカ国(Suranaica)の独裁者だったが、現在は国を追放され、アメリカに亡命してきてマイアミで暮らしている。しかしネイロンはクーデターによって独裁者に返り咲くことを目論んでおり、そのために必要な資金をシンジケートの幹部、フランク・レイトン(Frank Layton)から調達しようと交渉中である。ネイロンは、クーデター成功の暁には、シンジケートにスラナイカの賭博場の経営を許可するつもりである。IMFはネイロンの計画を粉砕し、シンジケートの進出を阻止しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、シナモン、バーニー、ウィリー
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 アメリカ・マイアミ


【作戦】
 IMFはネイロン将軍が美食家であることを利用し、バーニーが腕利きシェフ、シナモンとウィリーがバーニーが連れてきた使用人、という設定で屋敷に採用される。一方、フェルプスとローランは、レイトンが支配しているホテルに乗り込み、ローランが謎の大富豪、フェルプスがその腹心、の様にふるまう。

 やがてネイロンの屋敷にレイトンが資金を持ってくるが、現金ではなく有価証券だったためネイロンは怒り、明日現金を持ってこいと言って有価証券を預かる。

 バーニーたちはネイロンに薬を盛って軽い体調不良にした後、バーニーと二人きりのタイミングを見計らって、テープの声を聞かせたり電話のベルを鳴らしたりするが、バーニーは聞こえないふりをする。また特殊なトランプとライトの組み合わせで裏から数字が読めるようにしたりするが、バーニーはそれも見えないととぼける。ネイロンは自分が幻聴などを発症したのかと不安になる。

 同じころ、フェルプスはレイトンにホテルの権利を売れと高飛車に要求し、レイトンたちはローランが実は有名な大富豪で、マイアミ再開発のため買収を目論んでいるのではないかと推測する。そしてローランたちの部屋に盗聴器を仕掛けるが、それを知ったうえでフェルプスたちは、自分たちの目的は実はホテル買収ではなくネイロン将軍との取引だ、と匂わせる。

 そしてフェルプスはネイロンの屋敷に出向くが、ネイロンには医者だと名乗り、今の症状は「バンデルベルク症状」という未来の事が見えたり聞こえたりするようになる病気だが、二週間くらいで自然治癒する、とまことしやかに吹き込む。

 フェルプスは屋敷から出た途端、見張っていたレイトンの部下に捕まってしまう。レイトンはフェルプスが持っていたニセ契約書を見て、ネイロン将軍が自分を裏切りフェルプスたちと取引したと信じ込む。そこに(素顔に戻った)ローランが刑事として現れ、フェルプスたちの一味を逮捕するといってフェルプスを連れていく。レイトンはネイロンに渡した有価証券を取り戻そうと、ネイロンの屋敷に向かう。

 一方、ネイロンの屋敷では、バーニーたちが映写機でネイロンに向けて「レイトンが金庫を開けてからこちらに向かって発砲する」という立体映像を映写し、ネイロンはそれが自分の未来予知だと思い込む。直後本物のレイトンが現れ、金庫を開けようとしたため、ネイロンは焦ってレイトンに向けて発砲する。そこにIMFが呼んでいた警察が駆け付けてくる。それを眺めながらIMFが車で撤収するシーンで〆。


監督: リチャード・ベネディクト
脚本: ロバート・E・トンプソン


感想

 評価は◎。

 IMFが様々な秘密小道具を駆使してミッションを遂行する大傑作回で、大いに堪能させられた。シナリオを書いたのは、第54話(シーズン3 第1話)「プリンセスの帰還」を書いたロバート・E・トンプソンで、「プリンセス~」に続いてまたも大傑作をものにしている。しかしこの人は、スパイ大作戦にはこの二作品を書いただけで終わっており、こんな凄い才能が二本だけしか書いてくれなかったことは残念で仕方がない。

 今回の話の面白さは、その奇想天外な作戦で、ネイロン将軍に「自分が病気で未来を予知する超能力を得た」と信じ込ませるという計略は、もう笑ってしまくらい面白かった。シナモンがネイロンの部屋に電話をかけて、ベルが鳴っているのにバーニーは知らない顔をして幻聴だと思わせるとか、仕掛けのあるトランプと特殊なライトを組み合わせてネイロンがカードの裏を透視できたように思わせるとか、もう端から見ているとコントに近いものがあったが、これが悪人たちを懲らしめる作戦の一場面だと思うと、相乗効果で物凄く楽しくなった。

 また、ストーリー運びが実に巧みで、フェルプスがまずシンジケートのレイトンたちには「富豪スミスの使いで将軍に会いに行く」と思わせ、いざ将軍の屋敷につくと一転病気の診察をしに来た医者のふりをする。これで屋敷にはすんなり入り込めるし、それでいて外から見張っているシンジケートの一味からは、フェルプスが将軍と約束して訪問してきたように見える、と、実に上手い具合に話が進んでいく。


 そのうえ、今回は多数投入される秘密小道具の使い方が絶妙で

・空中に映し出されるレイトン(実はローランの変装)の映像
・テーブルの上で書かれた文字を写し取れるスプレーと転写用紙
・リモコンで開くようにした金庫
・スイッチ一つで「アタッシュケース/医者用ぽいカバン」の二つに変形するバッグ
・裏が透けて見えるトランプ

等の使用シーンが実に面白い。どれもまず最初にIMFのメンバーがあらかじめ「こういうものだ」と視聴者向けに説明するものの、それがどう使用されるのかは、その時には当然まるで分らない。やがて話が進んでいくと要所要所でこれらの道具が効果的に使用され、視聴者が「こういう目的で用意された物だったのか!」と膝を叩く、という展開になっており、本当に楽しかった。

 ラストもIMFの計略に見事に引っかかったネイロン将軍がレイトンを撃ってしまい、そこにいつものようにIMFが連絡していた警察が駆け付けて来る、という結末で、もうあまりの見事さに笑いが込み上げてしまった。これはもう、まごうことない大傑作回だった。


 ちなみに、サブタイトルの原題「The Bargain」とは「売買契約、取引、協定、約束、契約」の意味。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが、ローラースケート場に赴き、ガラス窓の向こうの関係者用の部屋に入る。部屋の中には大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーが置いてあり、フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なおこのテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。

参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。その人物はネイロン将軍といって、現在ではアメリカに亡命、厳重な警護のもとマイアミに蟄居するスラナイカ国の元独裁者である。彼は今、クーデターによる巻き返しを図っており、そのためこの男、シンジケートの幹部の一人フランク・レイトンからその資金を引き出そうとしている。そして数百万ドルと引き替えに、クーデター成功の暁には、シンジケートにスラナイカにおける賭博場の経営を許可するというのだ。

 そこで君の使命だが、将軍の意図を粉砕し、シンジケートの進出をくい止めるにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

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