感想:小説「サイモン・アークの事件簿II」(エドワード・D・ホック)


 小説「サイモン・アークの事件簿II」(エドワード・D・ホック)の感想です。

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■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/4488201105/
サイモン・アークの事件簿II (創元推理文庫) [文庫]
エドワード・D・ホック (著), 木村 二郎 (翻訳)
出版社: 東京創元社 (2010/12/18)
ISBN-10: 4488201105
ISBN-13: 978-4488201104
発売日: 2010/12/18

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■データ(個人的補足)

・「サム・ホーソーン」「怪盗ニック」「レオポルド警部」等の名探偵で知られるホックが創造した『オカルト探偵』サイモン・アークの作品をまとめた日本独自の第二作品集。
・前作「サイモン・アークの事件簿I」(2008年12月発売)から2年ぶり。<収録作品>
1 過去のない男(The Man from Nowhere)(1956)
2 真鍮の街(City Of Brass)(1959)
3 宇宙からの復讐者(The Avenger from Outer Space)(1979)
4 マラバールの禿鷲(The Vultures of Malabar)(1980)
5 百羽の鳥を飼う家(The House of a Hundred Birds)(1981)
6 吸血鬼に向かない血(No Blood for a Vampire)(1995)
7 墓場荒らしの悪鬼(The Graveyard Ghoul)(1996)
8 死を招く喇叭(ラッパ)(The Gravesend Trumpet)(2005)

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■あらすじ

 主人公サイモン・アークは、外見は70歳前後の老人で、宗教や超自然現象について豊富な知識を持つ神秘的な人物。さらに、作中では数十年が経過しても全く老いることがなく、本人は明確には語りませんが、おそらく不老不死で、年齢は1500歳とも2000歳とも言われています。このアークと、友人で物語の語り手「わたし」が、一見超自然的な様々な事件の謎を解き明かしていくという、中・短編集です。


1 過去のない男(The Man from Nowhere)(1956)

 19世紀の謎の人物「カスパー・ハウザー」に酷似する人生を生きる男がいた。わたしはアークに誘われその男に会いに行くが、男は奇怪な状況で死亡し・・・


2 真鍮の街(City Of Brass)(1959)

 わたしは友人からサイモン・アークにある不審人物を調べてほしいと依頼される。わたしはその話をまともに受け取らなかったが、後日友人の予測通り殺人事件が発生する。その街は同族経営の大企業が牛耳り、大学では怪しげな研究が進められているらしい・・・、本邦初紹介の中篇。


3 宇宙からの復讐者(The Avenger from Outer Space)(1979)

 ロシアとアメリカの宇宙飛行士が立て続けに感電死した。ある怪人物は「宇宙の復讐者」が地球を離れた人間を雷で罰しているのだと主張し・・・


4 マラバールの禿鷲(The Vultures of Malabar)(1980)

 アークは友人の誘いでわたしと共にインドを訪れる。アークの友人によれば、鳥葬のための塔で何者かが遺体を荒らしていたというのだが・・・


5 百羽の鳥を飼う家(The House of a Hundred Birds)(1982)

 アークとわたしはある殺人事件の調査のためロンドンに招かれる。その事件には何か超自然的な物が関わっているらしい・・・


6 吸血鬼に向かない血(No Blood for a Vampire)(1995)

 アークとわたしは、マダガスカルで「吸血鬼」が殺人を犯しているという話を聞き、現地に向かうが・・・


7 墓場荒らしの悪鬼(The Graveyard Ghoul)(1996)

 アークとわたしはある富豪の邸宅に招かれる。富豪によれば、誰かが敷地内の一族の墓を掘り返しており、犯人の目星もついているというのだが・・・


8 死を招く喇叭(ラッパ)(The Gravesend Trumpet)(2005)

 イギリスのとある博物館に保管された古代エジプトの喇叭は、伝説によれば吹いた人間を呪いで老衰死させるという。そして、わたしとアークの目の前で、伝説の通り喇叭を吹いた人間が一瞬で老化して死に・・・


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■感想

 正統派推理物の名手として知られたエドワード・D・ホックの作品集。今までに発売された「サム・ホーソーンの事件簿」シリーズや「怪盗ニック」シリーズなどと同様の、王道推理小説です。

 帯のコピーではアークは「オカルト探偵」として紹介されていますが、収録されている作品はこの言葉から想像するような怪奇ストーリーではなく、しごくまっとうな推理物ばかりです。どのストーリーも「宇宙の謎の力が宇宙飛行士を殺した?」「古代エジプトの呪いで人が死んだ?」という一見信じがたい事件が発生しますが、最後にはサイモン・アークが論理的に謎を解き明かし事件を解決します。雰囲気としては「オカルト物」というよりは「不可能犯罪物」と表現する方が近いと思います。

 どのストーリーも超自然現象絡みの超常ミステリー話と見せかけて、実は真相を論理的に推理できる手がかりがさりげなく散りばめられており、「知的パズル」としての出来栄えは一級品です。「わたし」が超自然要素に幻惑されて最後まで真相がわからないまま立ち往生しているところに、アークがあっと驚く真相を、筋道立てて説明してくれる、という一連の流れが実に楽しいです。

 という事で、前作ファン、ホックの他作品のファン、王道推理物を愛する人、のいずれかに該当する方には文句無しでお勧めです。

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■評価

(5段階評価の)5点。

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サイモン・アークの事件簿? (創元推理文庫)

サイモン・アークの事件簿? (創元推理文庫)

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