感想:NHK番組「宇宙白熱教室」第4回(最終回)「そしてダークエネルギーの発見 〜私たちのみじめな最後〜」(2014年7月11日(金)放送)


 「宇宙白熱教室」(全4回)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

NHK 宇宙白熱教室
http://www.nhk.or.jp/hakunetsu/cosmology/index.html

 NHK Eテレでの視聴です(放送:毎週金曜 23:00〜23:54)(6月20日〜7月11日)


■概要

>「宇宙白熱教室」は、ローレンス・クラウス教授が、宇宙に興味のある一般市民を対象に行った集中講義(全4回)を取り上げる。
宇宙研究はここ20年ほどの間に、過去1000年間の進歩よりも大きな発展をとげている。講義ではそうした最先端の宇宙論を紹介していくが、専門的な知識を持たない人でもその内容をきちんと“実感”しながら理解できるよう、前半の2回は「入門編」として、宇宙論の基礎をとりあげる。そして後半の2回は、宇宙の始まりから終わりまでの壮大な物語を、ダークマターダークエネルギー、宇宙の加速膨張など、最新の研究結果をまじえながら紹介していく。

第4回(最終回) 『そしてダークエネルギーの発見 〜私たちのみじめな最後〜』


■内容

>最終回は一気に宇宙論の最先端へとたどり着く! ダークマターの存在に気づいた物理学者たちだが、さらなる矛盾にぶつかることになる。通常の見える物質に加え、その量をはるかにしのぐダークマターが宇宙を満たしていることは分かってきた。だが、別の観測事実から、宇宙にはもっとはるかにたくさんの物質(またはエネルギー)が存在しなければつじつまが合わないという大問題が浮上したのだ。なんと、通常の物質とダークマターを足し合わせても、宇宙に存在するべきエネルギーの総量のわずか30%にしかならないというのである。つまり70%のエネルギーが“ダークエネルギー”として宇宙空間に充満していなければつじつまが合わない。そして20世紀の終わり、そのダークエネルギーの存在を実証する観測結果が出る。宇宙の膨張は加速しているというのである! これはダークエネルギーの存在を仮定してはじめて説明がつくものだった。では、未来永劫、加速しながら膨張を続ける宇宙は一体どうなるのか? 知的生命にとっては非常なみじめな未来が待っているのである。そのみじめな未来とは!?

 銀河の恒星とかは中心から離れるほど公転速度が遅くなるはずだが、そうではなく一定だった。これは銀河の中心から離れるほど質量が増えていけばつじつまがあう。つまり、宇宙には恒星などの他に目に見えない物質がある事になる。これを「ダークマター」と呼ぶ。


 重力で遠くの星の光が曲がる現象を重力レンズと呼ぶ。とある銀河団重力レンズで光を曲げる曲がり方から、銀河団の質量が判明した。エネルギーの公式は「エネルギー=運動エネルギー−位置エネルギー」。質量は運動エネルギーの30パーセントしか無い為、位置エネルギーは運動エネルギーの30パーセントしかなく、エネルギーの値はプラス。つまり銀河団は銀河を引き止められない。これを宇宙全体に拡大すると、「宇宙は膨張し続ける」という事になる。


 一方、相対性理論から宇宙のエネルギーは「宇宙の曲率」という数値で求められる。ここ10年ばかりで「宇宙マイクロ波背景放射」を調べ曲率を求められるようになった。その結果「宇宙の曲率=ゼロ」とわかった。これは宇宙のエネルギー(運動エネルギー−位置エネルギー)はプラマイゼロということ。


 先に位置エネルギーのための質量(通常物質+ダークマター)は運動エネルギーを打ち消すために必要な量の30パーセントしか無いと計算した。宇宙の曲率がゼロになるためには、さらに見つかっていない70パーセントの質量が必要である。それには空っぽの空間にある「ダークエネルギー」を想定するしかない。


 宇宙の膨張を調べると減速しているどころが加速している事かわかった。ところで相対性理論では重力は引き合うが、空間をエネルギーで満たすと斥力が発生して反発する。宇宙の膨張を説明するためには、先の謎のダークエネルギーが空間に満ちていると考えるとつじつまが合う。宇宙のエネルギーの内訳は「70パーセントがダークエネルギー、25パーセントがダークマター、残りが通常物質」となる。


 ダークエネルギーの密度が一定なら、宇宙は指数関数的に加速膨張する。空間は物質を載せて『光より早く』遠ざかる。物質は光の速度を超えられないが、空間はそうではない。われわれから180億光年以上遠い物体は光より早く遠ざかるので見えなくなる。二兆年後には、他の銀河は全て消え去り、自分たちの銀河しか見るものが無い。そうなれば観測するものが無いので宇宙の膨張に気が付かないだろう。われわれは幸運な特別な時代に生きている。さらに未来には宇宙の星々は燃え尽きて消えてしまうだろう。


■感想

 物質とエネルギーが同等に扱われて(相対性理論上はそうなんでしょうけど)ダークマターがエネルギーだ、ダークエネルギーが質量だ、と言うのでちょっと混乱。

 今回は特に難しくて3回見直しました。「宇宙の大半は観測できないダークXXで占められているんだ」とかいう結論に「なんか上手い事騙されてないか……」という気もしましたが、それでも知的興奮というものをたっぷり味わえました。良い番組でした。