X-ファイル 2016|FOX|FOX ネットワークス http://tv.foxjapan.com/fox/program/index/prgm_id/20683
放送 FOXチャンネル。全6話。
【※以下ネタバレ】
※X-ファイル 2016(ニーゼロイチロク)の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら
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第3話 トカゲ男の憂鬱 MULDER & SCULLY MEET THE WERE-MONSTER
あらすじ
中年の危機を迎え、怪物を追いかける人生に迷いを感じ始めたモルダー。そんな時にちょうど、動物管理局職員が森で怪物に襲われる事件が発生する。現場には他にも複数の遺体があった。目撃者によると怪物はトカゲのような姿をしていたという。捜査を進めるモルダーは、ガイ・マンという男と出会う。
お題は「怪物(トカゲ男)」。
モルダーは、中年になったことを自覚し、正体不明のモンスターを追いかけ続けるようなそんな人生で良いのか? と自問し始めていた。そんな時、皮肉にも「トカゲ男」による殺人事件が発生し、モルダーとスカリーは捜査に出かける。事件は森の中で動物管理局の職員がトカゲ男に殺されそうになり、また周囲には喉を食いちぎられた複数の死体が転がっていた、という物だった。モルダーは、どうせ野生動物の仕業だと醒めた態度だったが、とりあえず捜査を始める。
やがて近くの町中でトカゲ男が目撃され、さらにモルダーたちの泊まっていたモーテルの客が、人からトカゲ男に変身した事が分かる。モルダーは遺留品を手掛かりに、変身した男が「ガイ・マン」という名前だと突き止め、足取りを追った。そしてモルダーはガイを発見すると、ガイは自分を殺してくれと懇願してきたので、とりあえずモルダーは話を聞く。
ガイによれば、彼は元々森の中で暮らすトカゲ男で、ある夜突然人間に首に噛みつかれ、慌てて逃げ出すものの、翌朝目覚めると人間の姿になってしまっていた。そして、トカゲ男は、突然人間らしく生きなければという衝動に突き動かされ、近くに転がっていた死体から服を奪って着込み、町に出かけると、ガイ・マンという名前を名乗って仕事を見つけ、モーテルで暮らし始めた、という。ガイは夜になると一時的にはトカゲ男に戻れるが、朝になればまた人間の姿に変化してしまい、全く先が見えないため、この異常な状態に絶望して死にたがっていた。ガイは連続猟奇殺人のことは何も知らない様だった。
モルダーは、ガイのあまりに奇天烈な告白をとても信じられず、それを見てガイは怒って姿を消してしまう。一方、スカリーは事件の発見者である動物管理局の職員が犯人だと突き止め、さっさと逮捕していた。犯人は精神を病んだ猟奇殺人者で、人間を絞め殺しては喉を食い破っていたのだった。モルダーはガイの言っていた事が本当だと解り、慌てて森に向かう。出会ったガイはこれから冬眠すると言い、起きた時にはトカゲの姿に戻っていることを期待するという。モルダーがガイが次に目覚めるのが一万年後だと知り絶句する。そしてガイは、モルダーのような人間に会えてよかったと言って握手するが、次の瞬間トカゲ男の姿に戻り、そのまま走って森の中に消えた。
感想
評価は〇。
普段のX-ファイルとは全くノリの違うコミカル系ストーリー、というより「バカ話」の回で、実に愉快なエピソードだった。「X-ファイル 2016」は、せっかくオリジナルキャスト&スタッフ勢ぞろいで復活したのに、1・2話とも切れ味の悪い話で正直失望甚だしかったのだが、今回は(変化球系の話ではあったが)なかなかの当たりで結構満足できた。
監督/脚本を担当したダリン・モーガンは、シーズン2の第20話「サーカス」や、シーズン3の第12話「害虫」、同第20話「執筆」、といった『ヘンな話』専門のシナリオライターとして、初期作品をにぎわせてくれた人で、20数年ぶりのX-ファイル参加にもかかわらず、かつての愉快な持ち味をそのまま復活させてくれていて、実にうれしかった。
今回の怪異はUMAで、ベタにも程がある「トカゲ男」。ツノトカゲと人間の中間的な姿だが、話がバカっぽいので、当然もったいぶって姿を隠したりせず、もう堂々と目の前に現れる(しかもブリーフをはいて)。間違いなく、X-ファイルの歴史の中で一番はっきり登場した未知生物である。内またでちょこちょこと走ったり、通りすがりの娼婦(元男)にハンドバックで殴り倒されり、と、徹底的にこの手のUMAの神秘性とか怪奇さとかと縁遠いのが笑えてしまった。
トカゲ男の人間状態「ガイ・マン」を演じたリス・ダービーはコメディアンとして有名な人物だそうで、今回の演技を見ていると納得である。携帯電話店の店長をしていたガイが、突然仕事に嫌気がさして、「やってられるか!」と叫びながら机をひっくり返すシーンは爆笑物だった。
さて、今回はガイだけでなくモルダーもバカ演技に参加しており、
・トカゲ男の写真を撮るためにスマホを取り出すものの、写真アプリの使い方がわからなくてまごついた挙句、結果的に自分の顔しか映してなかった
・街中でトカゲ男と鉢合わせしてひっくり返ってしまう
・モーテルでスカリーと話し合う際、スカリーが何か言おうとするたびにそれを遮って「解ってるさスカリー君はこう言いたいんだろ? (スカリーの口真似をして)『モルダー、まるで頭のいかれた人間の妄言そのものよ』」とか言って一人で延々と話し続ける。
・ガイの話が信じられず、おもむろに懐から酒瓶を取り出してラッパ飲みする
等々、いちいち笑いを誘ってくれた。
今回びっくりしたのは、スカリーの濡れ場(?)があったこと。ガイがモルダーに身の上を説明する際に、スカリーが携帯電話店に入ってきていきなり誘ってきたので物陰で色々した、と告白し、モルダーが即座に「ちょっと待て、それは君の妄想だ」と突っ込むシーンがあるのだが、そこでガイと絡む演技をしているのがスカリー/ジリアン・アンダーソンなのである。スカリーのお色気演技なんて、パイロット版(シーズン1・第1話「序章」)以来だと思われ、意表を突かれて仰天してしまった。
この回は「イースターエッグ」と称される、ちょっとしたお遊びが満載で
・冒頭にモルダーが「私は信じたい」ポスターに鉛筆を投げつけているのは、昔のシリーズでモルダーが暇つぶしにX-ファイル課の天井に鉛筆を突き刺していたシーンに対応している
・ガイの恰好(白い服と帽子)は、X-ファイルの元ネタ的番組「事件記者コルチャック」の主人公コルチャックの服装を真似している
・モルダーとガイが話をした墓場で、墓石に「キム・マナーズ」と書いてあるが、キム・マナーズは以前のシリーズのプロデューサー/シナリオライターで故人。
・墓場でモルダーのスマホの呼び出し音がX-ファイルのテーマ曲。
等々。ディープなファンならニヤリとする隠し要素が満載だった。
第1・2話は内容がいまいちすぎて、「こんな内容ならわざわざ復活するまでもなかった」という感じだったが、今回は文句なしに満足できる好エピソードだった。