■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン8 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/
放送 Dlife。全21話。
【※以下ネタバレ】
※シーズン8の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン8」あらすじ・感想まとめ
第17話 秘密 EMPEDOCLES
あらすじ
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/episode.html
EP17 秘密
ニューオリンズでジェブが会社を解雇された直後、車の衝突事故があった。炎上する車の中から火だるまになって現れた男は、怒りの炎が燃え移るように、ジェブと一体化した。
お題は「悪意の伝染」。
ジェブという男が上司に解雇を宣告され、呆然と道を歩いていると、目の前で交通事故が起きる。燃える車の中から炎に包まれた人型の何かが現われジェブに取り付くと、ジェブは会社に戻り上司とその秘書を撃ち殺した。事件の捜査に呼ばれたモニカ・レイエスは、秘書の死体が一瞬灰に見える。
同じ頃、身重のスカリーは痛みを訴えて病院に搬送されていた。モルダーはレイエスから、以前にも死体が灰に見えたことがあり、超常現象なので捜査に協力して欲しいといわれる。かつてレイエスは、ドゲットの息子ルークが誘拐され死体で見つかった事件の捜査に関わっていたが、ルークの死体も灰に見えたという。しかしモルダーはドゲットが嫌いな上、スカリーのことが心配なので、真面目に話を聞こうとしない。またドゲットも、レイエスやモルダーに過去の事件を掘り返すなと警告する。
ルーク誘拐・殺害の有力容疑者はボブ・ハービーという男だったが、事件に関係ないとして捜査リストから外されていた。そしてジェブの目の前で事故で死んだのはそのハービーだったと判明する。結局ジェブは、ドゲットとレイエスに見つかり、レイエスに撃たれて病院に搬送される。モルダーはドゲットに、人間の悪意というものは病気の様に伝染するもので、悲しみなどで心の「免疫力」が落ちた人間がいると、その悪意に感染し、その人間も悪魔に変わってしまうのではと語る。
その後ジェブは死亡するが、今度は最期を看取ったジェブの妹に悪意が取り付き、いきなりレイエスを殴り倒すが、ドゲットに取り押さえられる。一方、スカリーは無事退院し、モルダーと楽しそうにすごしているシーンで〆。
監督 バリー・K・トーマス
脚本 グレッグ・ウォーカー
感想
評価は△。
新旧主人公のモルダー、スカリー、ドゲット、レイエスの四人が勢ぞろいするゴージャスなエピソード。正確には第14話「デッドアライブ Part1」で既に実現した顔合わせだが、この時はモルダーが死体で台詞も無いままただ転がっていただけなので、本格的に四人が絡むのは今回が初となる。しかし、見た目の派手さに反して、ストーリーの方はひたすらお粗末なエピソードだった。
今回のテーマは「悪意の伝染」で、人から人へ憎しみがバトンの様に伝染する、というアイデアはなかなか面白い。日本のホラー映画でも、悪霊の呪いで殺された人間が悪霊になって別の人間を呪い、その呪いで死んだ人間がまた悪霊化し、という物があったが、どことなくその呪いの連鎖を髣髴とさせるエピソードだった。
しかし、今回はドゲットの悲しい過去を描くのに力を注いだせいか、超常現象についての掘り下げはまったくダメで、せっかくの面白そうな素材をまるで生かしていなかった。そもそも悪意伝染者に殺された人間が灰に見える、という設定が意味不明だし、さらに何故ドゲットとレイエスだけに灰に見えるのか、という点に何の説明も無いのも、話が雑すぎて呆れてしまう。
また冒頭にその悪意が炎を纏った人間の様な姿になってジェブに近づいてきて、その後ジェブも体が燃え盛るような描写があるので、何か精神生命体の様なものが寄生して肉体を変化させていく話なのかと思いきや、その正体は「悪意」でした、という説明は、画面の派手な描写と正体の落差が凄すぎて脱力した。せめてもっと地味な感じで、いかにも伝染病ぽい雰囲気にしていれば、モルダーの解説もそれなりに説得力があっただろうに、変に特殊効果に頼りすぎて話が上手く成立していなかった。X-ファイルにありがちな、最初と最後で設定が上手く繋がっていない話の典型というところである。
序盤に、ジェブの机の中からマリリン・マンソンのCDを見つけた刑事が、それをレイエスに見せてジェブは悪魔崇拝者だ、とか説明するシーンがある。ここは、刑事の誤解を笑うべきなのか、それとも本気でアメリカ人はマリリン・マンソンを聞く人間を悪魔崇拝者扱いしているのか、どうもよく解らなくて困る。日本なら単なる笑い話だが、キリスト教圏では本気でそういう事を言っていそうな気がするので、判断をつけかねる。
ところで、序盤の殺人現場でレイエスが秘書の死体を見ると一瞬と灰と見まがう、というシーンの前に、レイエスが禁煙しているという説明があったので、レイエスがニコチン中毒が高じて死体までタバコの灰に見えてしまって大変、というギャグかと思った。さすがにX-ファイルではそんなギャグは飛ばさなかったが……
さて、序盤にスカリーが部屋を訪ねてきたモルダーに「『マッド・アバウト・ユー』みたいな会話ね」云々と言う台詞が有る。「マッド・アバウト・ユー(Mad About You)」とは、ヘレン・ハント主演のアメリカのコメディドラマで、新婚夫婦が主役のドタバタコメディ。1992年〜1999年の全7シーズン作品。日本では「あなたにムチュー」というタイトルで放送された。
一言メモ
サブタイトルの原題「EMPEDOCLES」とは、紀元前五世紀の古代ギリシャの哲学者「エンペドクレス」のことで、四元素説(しげんそせつ)を唱えた人物。四元素説とは、万物の根源は「火」「空気」「水」「土」の四元素で、それらが「愛」「憎」で結合したり分離したりすることで変化する、という考え方のこと。エンペドクレスは「火」を一番上においていたという。しかし、この人物の名前が今回のエピソードと何の関係が有るのか全くわかりません。まあ、日本語タイトルの「秘密」も、殆ど内容を反映していませんが……