感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第2話「リターン・トゥ・ウォーター Part2」

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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html
放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】
 
※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
  

第2話 リターン・トゥ・ウォーター Part2 NOTHING IMPORTANT HAPPENED TODAY II

 

あらすじ

 お題は「政府の陰謀」。


 第1話「リターン・トゥ・ウォーター Part1」の続編。

 ドゲットは謎の女に殺されかけるが、目覚めると自宅でその女に介抱されていた。女は、自分の事をシャノン・マクマホンという元軍人で、軍によって作られたバイオ戦士だと説明する。シャノンはノエル・ローラーと同時に作られた最初期の試作品で、不死身で睡眠を必要とせず水中でも呼吸できるのだと言う。シャノンはドゲットをフォーマーたちから逃がすために水中に引きずり込んだのだと弁解し、陰謀を阻止するための協力を依頼してくる。

 シャノンの説明では、政府は水道に消毒剤クロラミンに偽装した別の薬剤を混入して国民に飲ませる計画を進めており、その薬は女性を妊娠しやすくし、同時に胎児に突然変異を引きおこす効果が有った。政府はこの薬で無敵兵士を大量生産するつもりであり、環境庁や水道局が陰謀に加担している。シャノンが環境庁の役人ウォーマスや水道局の人間を殺したのは陰謀の阻止のためだった。

 シャノンは自分がバイオ戦士である証拠として、スカリーたちに首の後ろの付け根のこぶを見せるが、スカリーはシャノンはただの人間に過ぎず、陰謀話も全く信用できないと切り捨てる。

 ドゲットは、ついにFBIから停職処分を受ける。スキナーは、レイエスにドゲットから距離を置くように忠告するが、レイエスは拒否する。やがてレイエスの調査で、シャノンは軍人ではなく司法省の役人で、彼女に殺された二人は、司法省に何かの情報を通報した結果殺されてしまったと判明する。

 同じころ、ボルチモアに、船内で秘密研究を行っている船が到着した。その船の艦長が殺された役人ウォーマスを経由してFBIに連絡したがっていたことが解り、ドゲットたちは艦長に会うため港に向かう。ところが港でノエル・ローラーに襲撃され、さらにそこに現れたシャノンはノエルと戦い、二人は相打ちになって海中に消えた。船は無人だったが、船内では操作した卵子を受胎させる研究の形跡があった。しかし詳しい事を調査する前に船は爆破されてしまう。

 後日。ドゲットはカーシュに面会し、結局事件でなにもつかめかったことを報告する。カーシュはドゲットに、X-ファイル課にウォーマーの死亡記事を届けたこと、自分は何者かに脅されていること、モルダーもその相手に狙われていたため逃げるように忠告したこと、などを語る。ドゲットは半信半疑だったが、何故か停職は免れる。


監督 トニー・ワームビー
脚本 クリス・カーター & フランク・スポトニッツ


感想

 評価は◎。

 シーズン8の終盤から続いてきた、スカリーの息子に関する連作エピソードの一旦の締めくくり話。恐ろしく力が入っており、見どころ満載の充実した回だった。


 今回のエピソードで面食らってしまうのは、宇宙人「代替人間」について全く触れられないことで、その代わりとして、アメリカ軍が50年の研究の末に完成させたという「バイオ戦士/無敵兵士」に関連する陰謀が展開された。この無敵兵士については、シーズン8の最終回「誕生 Part2」において、ノエル・ローラーがドゲットにとうとうと説明していたが、その際は宇宙人の侵略という事実を隠ぺいするため、ノエルが作った出まかせだとばかり思っており、真剣に聞いていなかった。

 ところが、今回には自分も無敵兵士だと名乗るシャノンが現れたり、船内の研究施設で人間の卵子を操作する研究が行われていたり、と、無敵兵士の実在を裏付けるような展開となり、頭が混乱してきた。もしかすると、シーズン9では、宇宙人「代替人間」の話は無かったことにして、『彼らは本当に政府が人工的に開発した無敵兵士たちだった』という真相にしてくるのではないかと思えてきた。

 そういった要素も含めて、今回の展開は謎だらけで、「シャノンは結局何者なのか」「無敵兵士計画は存在するのか、それとも出まかせか」「何故シャノンとノエルは無敵兵士同士で戦ったのか」「船の研究は何だったのか」「カーシュは敵なのか、それとも実は味方なのか」等々が答えのないまま残されてしまった。ここまで謎を振りまかれると、もうこのシーズンでX-ファイルは(一旦)終了することを知っている身としては、最終回までに謎に答えが出るのかと不安で不安で仕方がない。

 それにしても、X-ファイルではお馴染みの「国民を実験材料にした政府の陰謀」というテーマにも関わらず、もうモルダーも、敵役のスモーキングマンも出てこない、という事実に、「X-ファイルという番組は昔とすっかり変わってしまったのだなぁ」と感慨深かった。確かにスカリーもスキナーもいることはいるし、ドゲットもレイエスも頑張ってはいるが、やはりキーパーソンのモルダーやスモーキングマンが欠けたX-ファイルには「画竜点睛を欠く」という言葉が頭にちらついて仕方なかった。

 X-ファイルという番組は、あまりグロ要素は見たことがなかったが、今回は趣向を変えたのか、首を切り落とされた艦長の胴体側の切り口をもろに見せたり、シャノンが背後からノエルにどてっばらを突き破られるシーンを見せたり、と、流血要素が多かった。こんなにナチュラルに血を見せて、テレビの放送コードには引っかからないのかとちょっと不思議だった。

 クライマックスで船が爆破されるシーンは、どう見ても本物の船に本当に火をつけている。さすがに本当に爆沈はさせてはいないものの、確実に船体に本物の火が付いており、アメリカのドラマは予算があるなぁと妙に感心させられた。


 今回ちょっと笑ってしまったのが、キャラクター設定の変更で、ガチガチの現実主義者だったドゲットが今ではすっかり政府の陰謀だの無敵兵士だのを信じる陰謀論/オカルトビリーバーになり果て、逆にシーズン8であれほどドゲットに熱くX-ファイル的事件について語っていたスカリーやスキナーが、すっきり醒めて元通りの性格に戻ってしまっているのに苦笑させられた。

 ドゲットからすれば、一シーズンかけて周囲からX-ファイル事件を信じるように洗脳されたと思ったら、このシーズンは当事者のモルダーやスカリーやスキナーが全員自分から距離を置こうとしてきて、騙されたという気持ちではなかろうか。レイエスには、FBI局内ですっかり浮いてしまったドゲットに親身に付きあってあげてほしいと願わずにはいられない。

一言メモ

 前回と今回のサブタイトルの原題「NOTHING IMPORTANT HAPPENED TODAY」とは、劇中でカーシュが語ったジョージ3世の言葉「本日は何事もなし」のこと。また、番組のオープニングでも、いつもは「THE TRUTH IS OUT THERE」(真実はそこにある)と表示されるところが、今回は「NOTHING~」に置き換えられている。

シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ