感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第76話(シーズン3 第23話)「出入り簡単な金庫室」

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【※以下ネタバレ】
 
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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ
 

第76話 出入り簡単な金庫室 The Vault (シーズン3 第23話)

 

あらすじ

ラテン・アメリカ某国の大蔵大臣が、大統領金庫から国家開発資金4,000万ドルを盗み出した。彼は大統領に横領の罪を着せ、国の乗っ取りを画策していた。IMFチームは金庫に会計監査が入る前に、大統領に大臣の悪事を分からせなければならない。

※DVD版のタイトルは「金庫へ追い込め!」。


【今回の指令】
 ラテン・アメリカの国家コスタ・マテオ(Costa Mateo)では、大統領ミゲール・デ・バロが国家工業化計画を発表している。その計画の費用4000万ドルは、大統領専用金庫に収められていることになっているが、実は大蔵大臣フィリッペ・ペレダが全額を金庫から盗み出しスイスの銀行に預金してしまっている。さらにペレダはデ・バロ大統領に公金横領の罪を着せて失脚させ、自分が後釜に座るつもりである。IMFはペレダの陰謀を阻止しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、シナモン、バーニー、ウィリー
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 ラテン・アメリカの国家コスタ・マテオ


【作戦】
 大統領専用金庫は、ダイヤルで三つの音の組み合わせを選択すると開くようになっている。正しい組み合わせは音感の鋭い大統領しかわからないはずだったが、ペレダは音の組み合わせを録音しており、いつでも金庫を開くことが出来た。

 フェルプスとシナモンは、某国の「人民通商委員」を名乗って大統領と面会し、コスタ・マテオに資金と技術を提供するので、代わりに希望の土地を譲って欲しいと提案する。大統領は軍地基地など作らせないと一蹴して二人を追い返すが、すぐにペレダが二人に接触する。

 ペレダフェルプスたちに、明日の朝、自分が大統領に公金横領の罪を着せて失脚させるので、次の大統領は自分だと打ち明ける。フェルプスたちはペレダと密約を結び、軍事基地を作らせてくれたら、年間一億ドルをペレダ個人に支払うと確約する。

 一方、バーニーは金庫室に潜入し、大統領専用金庫の隣にある普通の金庫を破った後、わざと警報を鳴らす。慌ててペレダたちが飛んでくるが、この騒ぎを知り、大統領が金庫室を調べに来れば、大統領専用金庫から金を着服した事がばれてしまう、とうろたえる。フェルプスたちは、普通の金庫から大統領専用金庫へ4000万ドルを移しておけばばれないだろう、と親切にアドバイスする。

 早速ペレダは普通の金庫から大統領専用金庫に4000万ドルを移動させる。やがてローランが変装した大統領が現れ、専用金庫をチェックし、問題ないと言って引き上げる。

 そのあとIMFは本物の大統領に対して、金庫室で異常が起きたので来てほしい、と連絡し、慌てて大統領が駆けつけてくる。一方、ペレダたちは、改めて大統領専用金庫から金を取り出していたが、IMFの仕掛けで金庫のドアが閉まり、ペレダは金庫内に閉じ込められてしまう。ペレダの部下は金庫を開ける組み合わせが解らないので助けようがなくうろたえる。

 そこに本物の大統領がやって来たので、部下は口から出まかせの説明をしてごまかそうとするが、すぐにウソがばれてしまう。怒った大統領が専用金庫を開いてみると、中にはペレダが閉じ込められていた。ペレダはしどろもどろで言い訳をするものの、大統領は聞く耳を持たず、ペレダと部下を兵士に逮捕させる。それをしり目に、IMFメンバーが車で立ち去るシーンで〆。


監督: リチャード・ベネディクト
脚本: ジュディ・バーンズ(原案: ジュディ・バーンズ&ジョン・キングスブリッジ)


感想

 評価は○。

 IMFチームが強欲な大臣を上手くだまして痛い目に会わせる痛快系のエピソード。傑作というほどではなかったが、手堅い作りでまずまず楽しめた。


 今回、フェルプスとシナモンは、某国の代表としてデ・バロ大統領に面会し、コスマ・マテオへの援助と引き換えに暗に軍事基地を作らせるように要求する。二人が代表する国の名前は語られなかったものの、二人の偽名が「ニコライ・バリデン」と「イレナ・ゴルスカ」で、あまつさえ肩書は「人民通商委員」なので、どう考えてもソビエト人という設定なのは明白である。

 21世紀の感覚からすると、発展途上国に援助する代わりに軍事基地建設を要求するとか、もう一つピンとこないが、冷戦時代を知っていると、さもありなんという感じの展開ではある。このエピソードの放送は1969年だが、あの有名なキューバ危機はたった7年前の1962年の話なのである。ソ連キューバの様に、アメリカに近い国に軍事基地を作らせようとする云々という設定は、21世紀とは比べ物にならないくらい現実感が有ったに違いない。

 今回のメインアイテムとなるのが、金庫室に収められている大統領専用金庫である。この金庫は、ダイヤル三つの組み合わせで開くが、その際に鍵となるのが「音」というのが、なんとも奇抜な設定である。具体的には、金庫のスイッチを入れるとピーという音が発せられ、ダイヤルをひねるとその音が微妙に変化するので、正しい音の組み合わせを探り当てないと開かない、という仕組みである。大統領は音感に優れており、正しい組み合わせを確定できるのは彼だけ、という事になっている。

 劇中では、ペレダやローランは、金庫が開く組み合わせの音をテープに録音してそれを聞きながらダイヤルをひねることで金庫を開けることが出来たが、そんなに上手くいくものかと疑問に思わずにはいられない。よほど耳に自信が無いと、テープの音と金庫の音が一緒だとか確定できないと思う。あと、この金庫はどう考えてもデ・バロ個人用で、大統領が別の人間になったら使えなくなると思うのだが、よくそんなものに予算が下りたものである。


 フェルプス&シナモンが人民通商委員、ローランが会計検査員、の役柄で、連携してペレダを騙して、うまい事金庫に閉じ込める、という展開は、ややもどかしい感じはしたが、そこそこには面白かった。ラスト、金庫に閉じ込められていたペレダが大統領が金庫を開けたことで解放されるものの、しどろもどろになりながら弁解しようとしても全く聞いてもらえず引っ立てられていく、というオチは、それなりには面白かった。「痛快」という言うほどではなかったが、このレベルのシナリオであれば、まず満足である。


 今回のサブタイトルの原題「The Vault」とは「金庫室」のこと。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが駐車場の無人の管理人室に入り、棚から大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なおこのテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。(※第41話(シーズン2の第13話)「雲上のマイクロフィルム」のシーンの使いまわし)


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。その人物は名前をミゲール・デ・バロといって、コスタ・マテオの大統領である。最近彼は、総額4000万ドルにのぼる国家工業化計画を発表、その資金源は大統領金庫からの支出によってまかなわれる予定であるが、この男、大蔵大臣フィリッペ・ペレダが秘かにその資金を持ち出しスイスの銀行に預金してしまったのだ。大蔵大臣ペレダは、大統領金庫は大統領デ・バロしか開けることができぬという世間一般の考えを利用し、大統領に4000万ドル公金横領の罪を着せ、自分がその後釜に座って国を牛耳ろうという腹である。

 そこで君の使命だが、大蔵大臣ペレダのこの動きを封じることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ