感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第140話(シーズン6 第13話)「サラブレッドの決め足」

スパイ大作戦 シーズン6<トク選BOX> [DVD]

スパイ大作戦BSジャパン http://www.bs-j.co.jp/missionimpossible/
スパイ大作戦 パラマウント http://paramount.nbcuni.co.jp/spy-daisakusen/
放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 
シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン6」あらすじ・感想まとめ

 

第140話 サラブレッドの決め足 Run for the Money (シーズン6 第13話)

 

あらすじ

各地の非合法ギャンブルを支配するトラスクとメイソン。IMFは2人を競走馬で争わせ、その関係にヒビが入るようしむける。そして賭け金計算に導入されたコンピュータに細工しておき、その同盟関係を破綻させようとする。

※DVD版のタイトルは「400万ドルの差し足」。


【今回の指令】
 シンジケートのメンバーのフランク・メイソン(Frank Mason)は、最近シンジケートの非合法賭博組織の支配権を与えられ、コンピューターの導入や全国各地の賭博場との直通電話の導入など、組織の近代化を成し遂げた。そしてエドワード・トラスク(Edward Trask)は、組織の競争相手を消し去る役目を担当している。IMFは両者の関係を破たんさせ、シンジケートの資金源を断たなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:ニック(騎手)


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 冒頭。トラスクが非合法の競馬の馬券売り場に爆弾を仕掛け、爆破する。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 IMFはトラスクが強い馬のオーナーになりたがっていることに目をつけ、海外の名馬「ラッキーレディ」を「レッドサンド」と改名して作戦に使用することにする。

 フェルプスはレッドサンドのオーナーに扮し、トラスクの前でレッドサンドが、メイソンの持ち馬「キングフレンド」より早い、と信じ込ませる。また、ケイシーは何者かの代理人として、レッドサンドを買いたがっているという様に振るまう。バーニーはメイソンの競馬関係のコンピューターにこっそり細工する。

 フェルプスは、トラスクたちに、自分が海外で名馬ラッキーレディを盗んだ後、レッドサンドと改名してレースに出走させようとしている、と信じさせる。またケイシーも、自分のバックについているのはメイソンだとトラスクに思い込ませる。トラスクはフェルプスに全ての事情は知っていると脅して、強引に5万ドルでレッドサンドを買い取る。

 IMFはレッドサンドの馬券合計10万ドル分を購入した後、フェルプスはメイソンに会い、トラスクを騙してレッドサンドを売りつけてやったと自慢して見せる。そのあと、フェルプスは競馬コンピューターの仕掛けがわざと見つかるようにして、メイソンに、レッドサンドが勝った時の払い戻しが40倍になるように細工されていたことを見せつける。またメイソンは、レッドサンドの勝ちに合計10万ドルがかけられていることも知る。

 メイソンは、トラスクが自分やシンジケートを裏切って、10万ドルの40倍=400万ドルを儲けようとしていると信じ込み激怒する。しかしフェルプスは、どうせレッドサンドは一緒に出走するキングフレンドに勝てないので、そのままにしておいてトラスクが損するのを楽しもうと提案する。

 ところがレースでレッドサンドはキングフレンドを抑えて優勝してしまい、メイソンは慌てて部下に払い戻しを中止させようとするもの、フェルプスが部下を銃で脅して中止させないようにしてからさっさと立ち去る。そして最後、IMFは400万ドルを手にしたあと、メイソンたちがトラスクをどこかに連れていくのを確認してから、車で立ち去るシーンで〆。


監督: マーヴィン・チョムスキー
脚本: エドワード・J・ラクソ


感想

 評価は○。

 スパイ大作戦のエピソードは、ターゲットを騙して何かを盗み取ったりするような話が多く、詐欺師話「コンゲーム」の色彩が強いが、今回は競馬をテーマに、関係者を騙して大金を手に入れるという話で、まさにコンゲームそのものだった。

 今回のIMFの作戦は、ターゲット二人のうち、馬を欲しがっているトラスクには実際の名馬を入手させ、もう一方のメイソンはトラスクが裏切ったように信じ込ませ、内輪もめを起こさせて内部崩壊に追い込む、といういつもの手である。そのため大筋は問題は無いのだが、オチがどうも釈然としなかった。

 確かにIMFの作戦は見事に成功し、メイソンとトラスクの関係は崩壊し、多分トラスクは直後にメイソンによって始末されるだろうことは容易に想像できる。またIMFはレースで合法的に400万ドルを稼ぎ、シンジケートに財政的打撃を与えたことも確実ではある。

 しかし例えトラスクが消されようと、違法賭博組織のボスのメイソンは未だぴんぴんしている訳だし、またシンジケートが400万ドル損をしたと言っても、それで崩壊したというような描写は無い。つまり今回のIMFのミッションは、シンジケートにそれなりに痛手は与えたであろうが、違法賭博組織を壊滅させたわけではないので、今後もシンジケートは賭博により延々収入を得続けることが予想される。つまり今回の作戦はあまりやった意味が有るとは思えないのである。

 ふつうこの手のミッションでは、最後に警察に踏み込んでもらって首謀者を逮捕させ、二度と同様な犯罪が起こせないようにする、というのが定番だが、今回はそういう決定打が放たれていないため、なんともモヤモヤする結末といえる。またフェルプスたちが逃走するのは良いとして、多分関係者に無理を言って借り受けている名馬レッドサンドことラッキーレディや、仲間の騎手ニックを競馬場に置き去りにしたまま、というのも無責任極まりないと言えよう。このように、色々と気になることが多い結末であった。

 おそらく今回のエピソードは、下敷きとして「競馬をテーマにした詐欺師物」のプロットがまずあり、それをベースにスパイ大作戦の世界に置き換えて完成させたのではないかと推測される。詐欺師物であれば、チームが大金を稼げは大成功であって、組織がその後どうなろうと関係無い訳だが、今回IMFが受けた指令は「巨額の富がシンジケートの金庫に注ぎ込まれるのを防ぐ」なので、指令を達成できていないわけで、これはまずいという気がする。

 ついでに言うと、バーニーがコンピューターを細工するシーンで、ドアに鍵もかけずに作業しているので、誰かに見つかったらどうしようと見ていてハラハラしてしまった。実際メイソンの部下がいきなり部屋に入ってきて、バーニーは命からがら逃げだすが、作業前に見つかるとか、逃亡時に捕まってしまったりしたら、作戦はその時点で大失敗なわけで、この辺りはもう少し説得力のある展開にしてほしかったところである。

 あと、終盤メイソンは部下に、持ち馬キングフレンドが負けそうになったらレッドサンドを狙撃するように命じていて、バーニーがギリギリで阻止したのだが、このあたりも一歩間違えば作戦が破綻していたので、今回のIMFの作戦はやたら粗が多いと言えよう。もっとも、バーニーが間に合わずレッドサンドが射殺された場合、大問題になって、とてもメイソンがもみ消せるとも思えないが……


 今回のサブタイトルの原題「Run for the Money」は「長期に渡る成功、相手に全力の奮闘を強いること」という意味らしいが、イマイチ今回の話の内容と関係が有るとは思えない。「金のために走る=競馬(暗喩)」のようなスラングでも有るのかもしれない。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが公園に行き、風車を模したオブジェの南京錠を外して蓋を開け、中から大きめの封筒を取り出す。そして内部に置いてあるオープンリール式テープレコーダーのスイッチを入れてテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。写真はエドワード・トラスクとフランク・メイソンである。メイソンは最近シンジケートの非合法賭博組織の支配権を与えられ、賭け金の計算にコンピューターを導入するとともに、全国各地の賭博場を直通電話で結ぶことによって、組織の近代化を成し遂げた。一方トラスクは、組織の競争相手を消し去る任務を与えられ、生命・財産を考慮に入れずに、忠実にこの任務を遂行している。

 そこで君の使命だが、彼らのこの血で結ばれた同盟組織を崩壊させ、巨額の富がシンジケートの金庫に注ぎ込まれるのを防ぐことにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com