感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第151話(シーズン7 第2話)「終わりなき戦火」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン7(150~171話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン7」あらすじ・感想まとめ

 

第151話 終わりなき戦火 Two Thousand (シーズン7 第2話)

 

あらすじ

盗んだ核物質の隠し場所を吐きそうもない核物理学者。それが売り渡される前に取り戻そうとIMFが立てた計画は、彼に第三次世界大戦が起きて核による大惨事が起きることを知らせ、次に彼が目を覚ました時、28年もの歳月が経っていたというもの。しかし核物質を狙う別の組織もまた彼をマークしていた。

※DVD版のタイトルは「第三次世界大戦勃発」。
 
 
【今回の指令】
 核物理学者ジョセフ・コリンズ(Joseph Collins)は、過去に勤務していた研究所から50Kgのプラトニウム(plutonium)を盗み出した。これはヒロシマ級核爆弾を12個製造可能な量である。コリンズは、このプラトニウムを某国のヘイグ(Haig)と名乗る男に売り渡し、ヘイグが明後日正午に受け取る予定である。IMFはプラトニウムが国外に持ち出される前に、隠し場所を見つけ回収しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:兵士役、刑事役など多数


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 冒頭。コリンズが電話でヘイグとプラトニウムの受け渡しについて話す。それを政府の人間が盗聴して録音している。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 IMFはコリンズの自宅のラジオに細工し、戦争が起こりそうだという偽ニュースを聞かせる。直後、コリンズに謎の男バンダーが電話してきて、自分たちにプラトニウムを売らないと命は無いと脅す。そのあとウイリーが刑事に扮し、コリンズを殺人の容疑者として逮捕し、警察所に連行する。そして偽のラジオニュースでミサイルが飛来したことを聞かせた後、ミサイルが着弾した偽映像を見せてから麻酔で眠らせる。

 IMFはコリンズを地震で被害を受けた建物に移し、老人のメーキャップを施してから目覚めさせる。コリンズは状況が解らず、さらに自分が老人になっているのに気が付いて騒いで監房に放り込まれ、先に中にいたバーニーは、今は戦争開始から28年も経った西暦2000年だと教える。さらにバーニーは、コリンズがもう65歳なので2日後の9月4日には毒ガスで処分されると予告する。

 一方バンダー一味は、IMFが芝居でコリンズを騙して何かを企んでいると知り、盗聴マイクでIMFの動きを監視し始める。

 IMFは空襲で建物が被害を受けたというふりをして監房のドアを開き、コリンズはバーニーを案内人にして脱走する。やがてコリンズは指令室という設定の部屋にたどり着くが、そこでフェルプスたち軍の司令官役たちが、国内の状況が悪化しており、また核兵器を使い果たしてしまったので、もう戦争継続は困難で降伏も止む無し、という会話を聞かせる。

 それを聞いたコリンズは、フェルプスたちに、自分が隠してあるプラトニウムで核爆弾を作れば戦争に勝てると言い、また自分は核物理学者なので核兵器の製造もできるので殺さないでくれと訴える。そしてロスアンゼルス郊外の核物質の隠し場所を教える。

 それを盗聴したバンダー一味は隠し場所に向かうが、丁度ヘイグの一味がプラトニウムを掘り出している最中で、返り討ちに会って全滅してしまう。そこに今度はIMFが駆け付け、ヘイグ一味を取り押さえ、プラトニウムを回収する。

 最後。部屋に閉じ込められていたコリンズは、様子がおかしいので建物の外に出るが無人であることにいぶかしむ。やがて顔のメーキャップがはがれてきて、コリンズは騙されたことに気が付いて大笑いしているところにパトカーがやってくるシーンで〆。


監督: レスリー・H・マーティンソン
脚本: ハロルド・リビングストン


感想

 評価は○。

 ターゲットしか知らない秘密を聞き出すため、IMFが何十年も第三次世界大戦が続いているという大芝居で相手を騙す痛快なエピソードだった。

 今回のIMFの手口は、ターゲットを失神させて老けメイクを施しておいてから、気が付くと28年経った西暦2000年になっていた、と誤解させるもの。IMFは、過去にも、相手のしか知らない秘密を探り出すため、意識を失わせておいてから長い時間の後に目覚めたように誤解させる手を何回か使っていて、シーズン1・第3話(通算第3話)「大量殺戮者」、シーズン3・第5話(通算第58話)「死刑執行1時間前」、といったエピソードで披露されている。

 また大芝居の設定に世界大戦を使う話も、シーズン4・第2話(通算第80話)「第三次世界大戦」、シーズン6・第9話(通算第136話)「敗戦国アメリカ」、等が有り、さらには相手の体にメイクを施したり薬剤を使って体調を調整したりして時間経過を錯覚させる手は、シーズン6・第2話(通算第129話)「タイムスリップ」以来である。このように今回の作戦は、IMFが過去に蓄積しただましのノウハウが存分に生かされたものと言えよう。

 コリンズが失神から覚めたあと、状況が解らなくて半狂乱になっているところに、バーニーが小ばかにするように現状(と言うかIMFが設定したシチュエーション)を説明し、視聴者はコリンズと一緒に世界観を知っていくことになるのだが、その状況が悪夢めいていてなかなか印象的だった。

 西暦1972年に戦争が始まり(※ちなみに、このエピソードの放送は1972年9月)、その後現在西暦2000年になっても戦争はまだ終わっていない。老人たちは缶詰め作りの強制労働をさせられており、首には首輪が嵌められていて、例えば「9400」といった数字が刻まれている。これは「2000年9月4日」を示しており、首輪の着用者の65歳の誕生日のことで、この時代には65歳になるとガス室に入れられて毒ガスで殺されてしまうのである。フェルプスたちの会話から、民間人への食糧供給が困難であることが説明されており、口減らしのためだと思われる。とまあ、絵にかいたようなディストピアである。

 終盤までは、視聴者には何故IMFがコリンズを、このような大仕掛けを使って騙していくのかが解らず、首をひねらされる。それだけに、終盤になってフェルプスたちがコリンズに「核兵器を使い果たしてしまって、もう戦えない」云々という話を聞かせ始めたところで、ようやくIMFの狙いが見えて膝を打ちそうになってしまった。

 過去には何回も核物質の奪回ネタも世界大戦ネタも使われてきたが、今回ほど「盗まれた物」と「世界大戦という設定」がうまくかみ合った話は無かった。本作の設定のかなりは過去の流用だが、話の運び自体は実にスマートで、そういう意味ではかなり満足度が高い作品だった。

 本エピソードでIMFが回収を指示される核物質は、「プルトニウム」ではなく、架空の物質っぽい名前の「プ≪ラ≫トニウム」である。ところが海外サイトでつづりを調べてみると「plutonium」、つまりおなじみのプルトニウムそのものである事が判明した。日本語スタッフが間違えたとは思えないので、やはり故意に変更したと考えるのが妥当だろう。やはり1970年頃の日本人にとって「プルトニウムで核爆弾を製造」云々という話題はデリケートすぎて、架空の物質にした方が無難、と判断したのかもしれない。

 今回の作戦のターゲットである核物理学者ジョセフ・コリンズを演じたのは、なんとビック・モロー、つまり「コンバット」のサンダース軍曹である。ただし、最初から髭を生やしたむさくるしいメイクのため、言われなければ本人とは気が付けない。さらには、大半のシーンではIMFが施した(という設定の)老人メイクのため、ほとんど素顔が見えない。こんな役ならわざわざビック・モローを起用する必要は無かったような気がする。

 今回の劇中では、IMFはコリンズを騙すため、先日の地震で被害を受けた「ブリッジトン」という場所の建物を使用した、という設定である。そして、実際にも撮影に使われた建物はめちゃめちゃに壊れているので、工事で解体途中の建物でも使用していると思っていたのだが、海外のサイトを見ると予想外の事実が判明した。

 建物はロスアンゼルスにあった「オリーブビュー医療センター」(the Olive View Medical Center)で、本エピソードは1972年9月に放送されたのだが、一年半前の1971年2月9日の「サンフェルナンド地震」で大被害を受けて放置されたままだったのを撮影に使用したとのことである。つまり劇中での「地震の被害」云々という説明は本当だったわけで、真相を知ってから見直すとなんとも味わい深いものが有る。しかし、本気で壊れている建物で撮影をしていたわけで、それを考えると、役者たちも結構命がけだったのではなかろうか。

 今回のサブタイトルの原題「Two Thousand」とは「西暦2000年」の事。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが車でギリシャローマ風の建物の側に乗り付け、モデルを撮影しているカメラマンに合言葉を言って、銀色のアタッシュケースを受け取る。そして離れた場所でケースを開き、中から大きめの封筒を取り出すと同時に、箱の中のオープンリール式テープレコーダーのスイッチを入れる。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。有能な核物理学者ジョセフ・コリンズが、元勤めていた研究所から50Kgのプラトニウムを盗み出した。ヒロシマ規模の核爆弾を12個製造しうる量だ。コリンズは既にそれを某国に売り渡し、ヘイグと名乗る男が明後日正午に受け取ることになっている。

 そこで君の使命だが、そのプラトニウムが国外に運び出される前に奪還することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン7(150~171話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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