【映画】感想:映画「シェーン デジタルリマスター版」(1953年:アメリカ)

シェーン [DVD]

NHK BSシネマ http://www.nhk.or.jp/bscinema/
放送 NHK BSプレミアム 2018年4月9日(月)

【※以下ネタバレ】
 

雄大な自然が広がるワイオミングを舞台に、悪徳牧場主と対決する流れ者のガンマン、シェーンと、彼を慕う少年ジョーイ、家族との交流を描く名作西部劇。A・ラッドの早撃ち、ジョーイを演じるB・D・ワイルドの名演技、J・パランスの悪役、V・ヤングの音楽、ラストシーンなど、印象的な名場面の数々で、今も多くのファンから愛される、G・スティーブンス監督の不朽の名作。映像と音声を修復したデジタルリマスター版での放送。

 

あらすじ

 西部開拓時代。一人の流れ者が、開拓者の一人ジョースターレットの家の近くを通りかかり、ジョーの好意で彼の家に一晩世話になることになった。男はシェーンと名乗り、ジョーとシェーンはたちまち意気投合し、シェーンはジョーに雇われて仕事を手伝う事になる。ジョーの一人息子ジョーイはすぐにシェーンになつく。

 最近ジョーは牧畜業者のライカー兄弟の一味から執拗に嫌がらせを受けていた。ライカー一味は牛の放牧のため広大な土地を必要としており、ジョーを始めとする開拓民たちを邪魔者と見なし、追い出そうとしていた。しかしジョーは同じ開拓民たちのリーダー格として、ライカーたちの圧力をはねのけていた。

 シェーンは買い物のため一人で店に出かけ、そこでライカーの手下に挑発されるが、手を出すことは無く、侮辱の言葉を浴びせられるがそのまま静かに立ち去る。

 別の日。今度はジョーたち開拓民はライカー一味に対抗するため、家族も連れて総出で店に向かう。そこでまたシェーンはライカー一味に執拗な挑発を受け、今度は拳で一味に返礼する。しかし多勢に無勢で劣勢に陥るものの、そこにジョーが加勢し、二人はライカーたちを叩きのめすのだった。

 ライカーはついに最終手段として有名なガンマンのウィルソンを雇い入れる。ウィルソンの挑発に乗った開拓民の一人は射殺され、開拓民たちは動揺し、ついに土地を捨てて去ろうとするものもあらわれるが、ジョーは団結を呼びかけ、それを押しとどめる。

 やがてジョーにライカーから呼び出しがかかる。ジョーは決着をつけるため銃を持ち出して向かおうとするが、シェーンはジョーを押しとどめると、自分が代わりにライカーやウィルソンたちの待つ店に向かう。そして電光石火の早撃ちでライカーたちを倒すが、その戦いを見ていたジョーイに、「人を殺すともう元には戻れない」と言い残し、またどこかへと旅立っていった。

感想

 評価は○。

 ちょっとした映画好きなら、映画を見たことが無くてもラストシーンだけは必ず知っている、という伝説級の作品。

 1953年の作品という事で、ある意味「素朴」な作品ですが、にもかかわらず古臭いという印象はなく、60年以上経った2018年でも十分に楽しめました。


 内容を全く知らずに視聴したのですが、イメージと全然違う作品でした。『ぶらりと現れた早撃ちヒーローが大活躍するガンアクション映画』、では無く、シェーンは終盤まで銃を封印して、悪党の挑発にも耐えに耐える物静かな役柄。またライカー一味の圧力に対し、開拓民たちを元気づけるのはジョーの仕事で、この映画の主役はシェーンではなくジョーにすら見えます。

 シェーンは、自分のことは何も語らず(そもそも苗字は遂に不明のまま)、銃は使わず、悪党に挑発されても最初は耐えまくります。それでいてライカーの手下に二度目に絡まれた時には腕っぷしの強さを見せますし、またジョーイに頼まれて銃を教えるときには、すさまじい早撃ちであることが描写されます。どう見ても荒事を生業に生きてきた男であり、開拓の手伝いをしているようなキャラには見えません。この辺りの、シェーンの「何か事情を抱えた男」感が実に上手い。

 またシェーンを雇うことになるジョースターレットも、シェーンに助けられる弱い男ではなく、主役級の存在感を放っています。ライカーたちの嫌がらせに苦しめられる仲間の開拓者たちを、時にはきつい言葉も使って勇気づけて励ます頼れる男ですが、それでいて妻のマリアンにはベタボレの良い夫でもあります。シェーンは物静かに目立たないようにふるまうので、余計にジョーの魅力が光ります。シェーンと並ぶダブル主演と言っても良いでしょう。

 実際、序盤にはジョーとシェーンが二人で力を合わせ巨大な切り株を取り除くシーンがありますし、中盤の酒屋の殴り合いではジョーがシェーンに加勢して、ライカーたちを叩きのめし、意気揚々と引き上げます。こういったシーンを見ると、この映画は「二人ともが主役」という事なのでしょう。


 開拓民対ライカー一味という派手な要素は物語の一面に過ぎず、開拓民たちの苦闘の物語でもあり、マリアンがシェーンにちょっとよろめいてしまうお話でもあり、また子供のジョーイの視点からのヒーローの物語でもあり、単純ガンアクション映画でないところが魅力です。アクション要素はぎりぎりまで抑えられていますが、それでいて退屈という事も無い。脚本が練られているのでしょう。

 クライマックスはシェーンが自分の腕に自信満々のウィルソンを、それを上回る超早撃ちで吹っ飛ばし、さらにライカーたちもあっという間に一掃します。そこまで派手さを押さえていただけに、このシーンの迫力は凄い物がありました。

 そしてそこから伝説のラスト「シェーン、カムバーック」まで流れるように展開。この構成なら、そりゃラストシーンが語り継がれますよねぇ。

 「名作」というのは、「その当時の評価はともかく、21世紀の視点ではもう……」という事が往々にしてありますが、この「シェーン」は偉大な例外でした。今見ても面白い。名作の評価に偽りなしでしたね。


おまけ

 クライマックス。シェーンが馬でライカー一味の待つ酒場に向かうのですが、その後をジョーイが犬連れで追いかけて、余裕で撃ち合いのシーンに間に合っている(笑) シェーンの馬が遅いのか、ジョーイが馬並みに足が速いのか……
 
 

シェーン【デジタルリマスター版】
BSプレミアム4月9日(月)午後1時00分~2時59分


【製作・監督】
ジョージ・スティーブンス
【原作】
ジャック・シェーファー
【脚本】
A・B・ガスリー・ジュニア
【撮影】
ロイヤル・グリッグス
【音楽】
ビクター・ヤング
【出演】
アラン・ラッド、ブランドン・デ・ワイルド、ヴァン・ヘフリンジーン・アーサージャック・パランス ほか


製作国:
アメリ
製作年:
1953
原題:
SHANE
備考:
英語/字幕スーパー/カラー/スタンダード・サイズ

 
 

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