【SF小説】感想「憎悪のインパルス」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 586巻)(2019年2月6日発売)

憎悪のインパルス (宇宙英雄ローダン・シリーズ586)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150122164
憎悪のインパルス (宇宙英雄ローダン・シリーズ586) (日本語) 文庫 2019/2/6
クラーク・ダールトン (著), アルント・エルマー (著), 畔上 司 (翻訳)
文庫: 271ページ
出版社: 早川書房 (2019/2/6)
発売日: 2019/2/6

【※以下ネタバレ】
 

超越知性体"それ"の半球惑星エデン2で、パトロール中の旧ミュータント、タコ・カクタは、奇妙な十二体の生物と出会うが……!?


超越知性体“それ"および無数の意識存在が居住する半球惑星エデンIIでは、平和な時間が流れていた。そんなある日、超越知性体の指示で惑星をパトロールしていた旧ミュータントのタコ・カクタは山間の谷底で奇妙な十二体の生物と出会った。チンパンジーとクマを合わせたような風貌で、童話や伝説に出てくる小人に似ている。ところが、無邪気に見えた小人たちにタコ・カクタが近づいたとたん、おそろしいことが起こった!

 

あらすじ

◇1171話 憎悪のインパルス(クラーク・ダールトン)(訳者:畔上 司(初))

 惑星エデンIIに獣の様な十二体の小人が現れ、調査に向かったミュータントたちは精神を吸収されてしまう。小人たちは、セト=アポフィスが自分の消滅の際に発動するように準備していた、“それ”を滅ぼすための最終兵器だった。小人たちはミュータントの超能力でエデンIIの施設を破壊し、さらに“それ”の意識集合体の中にまで侵入してきたため、“それ”は消滅の危機に陥る。しかし“それ”はエデンIIに待機させていた特殊ミュータントの力を借り、小人たちを消滅させることに成功した。(時期:不明。NGZ427年3月頃)

※初出キーワード=クロンタ人



◇1172話 ヴィシュナの勝利(アルント・エルマー)(訳者:畔上 司)

 グレイの回廊内。エラートとチュトンは月のネーサンの元に退避していたが、もう人類を救う手立てはなく、さらにチュトンは力を失って消滅しかけていた。ヴィシュナは再度チュトンに刺客を差し向ける一方、テラニアを自分の思うがままに作り替え始める。ヴィシュナの刺客の攻撃でネーサンは大破し、エラートとチュトンはテラニアに脱出するが、そこでチュトンは探し求めていた「メンタル炎」と遭遇する。しかし炎はヴィシュナに消滅させられ、エラートとチュトンはヴィシュナに捕えられてしまった。(時期:不明。NGZ427年4月頃)

※初出キーワード=ヴィーロトロン結合、スーン種族、メタ工作員、時間塔、メンタル炎


あとがきにかえて

・シリーズ初参加の畔上司氏のあいさつ。
・ヨーロッパの鉄道旅の話


感想

 前半エピソード … “それ”に対するセト=アポフィスの最後の攻撃の話。話の大筋は「宿敵が自分の命と引き換えに呪いを放ってきて、それによって死の直前まで追い込まれる」的なホラー物そのままの展開です。オカルト物に理屈は不要ということなのか、そもそもセト=アポフィスは死んだわけでもないのに「死のインパルス」を放ち、それが所在地不明のエデンIIに自動的に到着して“それ”を攻撃するという、もうまともな説明もつかない展開となっています。

 まあ、話自体は面白いので不満はないのですが、今回大活躍したクロンタ人ミュータント「パートレクス」は、エデンIIの地下に深層睡眠状態で待機させられていたという設定はちょっと……、出番が来るまで“それ”によってずーっと眠らされているって設定は酷くないかなぁ……、使わないロボットを待機させているのとはわけが違う訳ですし……


 後半エピソード … 舞台はグレイの回廊内に戻ってきてのエピソード。人類は全員ミクロ化されてミニ地球に吸い込まれてしまったうえに、ヴィシュナの「メタ工作員」によってテラニアが大改造されかつての面影がすっかりなくなってしまう、という破滅系SFみたいな厳しい展開が辛い。

 終盤でついにチュトンの探していたのが(もうあからさまにばれていましたが)タウレクであると明かされるものの、タウレクっぽい炎はヴィシュナに消滅させられてしまい、エラートとチュトンも捕まり、ネーサンは活動を停止し、と、「この先一体どうなるのか?!」と物凄い引きでした。ここまで次のエピソードへの訴求力が強い話は、ローダンシリーズでは初めて読んだかもしれません。
 
 
 

550巻~600巻(「無限アルマダ」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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