【SF小説】感想「ヴィシュナ熱」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 582巻)(2018年12月5日発売)

ヴィシュナ熱 (宇宙英雄ローダン・シリーズ582)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150122083
ヴィシュナ熱 (宇宙英雄ローダン・シリーズ582) (日本語) 文庫 2018/12/5
トーマス・ツィーグラー (著), アルント・エルマー (著), 嶋田 洋一 (翻訳)
文庫: 271ページ
出版社: 早川書房 (2018/12/5)
発売日: 2018/12/5

【※以下ネタバレ】
 

四次元性の影チュトンがヴィシュナ第五の災い"愛"がくると告げる。困惑するブルらの前に、宇宙から無数の異生命体が降下した!


ヴィシュナ第四の災いによってテラの植物相は完全な変態を遂げ、人類を攻撃・殺害する危険な植物クセノフローラが蔓延することになった。それが感情エンジニアのガルブレイス・デイトンと環境デザイナーのライ・ヌルゴワの活躍でようやく終息し、安堵したのもつかの間、四次元性の影チュトンがレジナルド・ブルに第五の災いについて予告する。これまでの四つよりさらに恐ろしい第五の災いの正体は"愛"だというのだが!?

 

あらすじ

◇1163話 妖精女王の侵略(トーマス・ツィーグラー)(訳者:嶋田 洋一)

 地球にヴィシュナ第五の災いとして、伝説上の妖精を思わせる「妖精女王」が無数に飛来した。妖精女王にとりつかれた人間は幸福しか感じなくなり、食事も睡眠も忘れて無気力状態のまま衰弱し、最後には精神を異世界に運び去られてしまう。しかし精神疾患研究用に開発されていたアンドロイドの憂鬱症の精神放射が妖精女王を追い払うと判明し、その放射を地球と月に展開することで、妖精女王は撃退された。(時期:NGZ427年3月17日~22日)

※初出キーワード=妖精女王



◇1164話 ヴィシュナ熱(アルント・エルマー)(訳者:嶋田 洋一)

 ヴィシュナは、人類が過去の五つの災いに耐え抜いたのはチュトンの助力のせいだと知り、地球に刺客を送り込むとともに、自ら地球攻撃に乗り出した。やがて地球にヴィールスの雲が襲来し、感染した人間は「ヴィシュナ熱」という高熱を発した後、すぐ回復するものの、次は「技術狂」という状態となり、無意識のまま正体不明の巨大マシンを組み立ててしまう。チュトンは刺客を撃退した後、ブルたちにマシンを破壊するように指示するが、マシンはバリアを張り巡らしてしまった。(時期:NGZ427年3月~4月10日)

※初出キーワード=ヴィシュナ熱、技術狂


あとがきにかえて

 前半エピソードに出てきたアンドロイドの名前「ヒルニ(Hirni)」はドイツ語の「脳(Hirn)」のもじりだろう、という話。


感想

 前半エピソード … 第五の災い「妖精女王」の襲来のエピソード。第三の災い「死の支配者」に続き、なんとなくSFというよりファンタジー寄りの雰囲気でした。

 この話でビックリするのは、この時代(西暦4014年)には地球には犯罪という概念が無くなり、もう刑務所も無ければ、盗みという行為も存在しない、という設定です。未来の地球は凄い理想郷の模様。あと精神疾患という物も既に存在しないそうです。なんというか、未来に夢を持ちすぎでは……?

 あとロボットが精神放射を発するというのは無理が無いかな。変なロボットを開発することで有名(?)なホイスラー社製だそうですので、ありなのか?


 後半エピソード … 第六の災いの襲来。この話では、ヴィシュナが災いを地球に送り込んだ後は自分で介入できず、流れに任せて見守っているだけだった、という、結構のんきな事実が明らかになります。まあそれでも人類には脅威だったわけですけどね。

 あと、シリーズ作品で「ウイルス」と「ヴィールス」の日本語訳の使い分けが上手く出来ていないのが明らかになりました。病気の場合は馴染みの深い「ウイルス」で統一していますが、超コンピューターを「≪ヴィールス≫・インペリウム」と翻訳してしまったため、六番目の災いを表現するのに、わざわざ「ウイルス、すなわちヴィールスの集合体」という妙な言い換えをさせてしまっています。……、まあ「ウイルス・インペリウム」と翻訳したら、病気の塊にしか読めないから致し方なかったとは思いますけどね。
 
 

550巻~600巻(「無限アルマダ」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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